信頼の絆は「オーシャンズ」シリーズから。ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツの華やかな共演歴とは
「オーシャンズ」シリーズでも訳ありのカップル役に!
さて、本人同士も認める“相性の良さ”を、過去作品をさかのぼって実証していこう。2人が初共演したのは、ソダーバーグ監督がジョージ主演でリメイクした『オーシャンズ11』(01)。主人公ダニーをジョージ、その元妻テスをジュリアが演じている。この作品で、ジュリアにオファーを出したのは、なんとジョージ。当時、面識がなかったにも関わらず、ジュリアの1本あたりの出演料が約2000万ドルだと聞いたジョージが、「1作品20ドルだって聞いたんだけど」と20ドルを挟んで脚本を送ったという。それに対し、ジュリアが快諾。結局、真のギャラがいかほどかは知らないが、シャレがきく間柄は、この時から始まったようだ。なんとも粋!物語は、詐欺師で泥棒のダニーが、仲間たちとカジノの現金強奪計画を立てる。彼らが狙うカジノの経営者ベネディクトの恋人が、なんとダニーの元妻テスだった、という衝撃の筋書き。果たしてダニーたちは強奪に成功するのか。テスは今カレと元夫、どっちに味方するのか。微妙に『チケット・トゥ・パラダイス』に遠からずの設定に思わずニンマリ!
次にジョージの監督作『コンフェッション』(02)にジュリアが出演して交友が続き、『オーシャンズ12』(05)で再び共演。同作ではなんとテスとダニーが再婚し、幸せな結婚生活を送っているという設定。ヨーロッパで宝物の強奪計画を立てるダニー一味は、作戦の一端としてテスを“妊娠中のジュリア・ロバーツに変装”させる計画を思いつく――。実際に本作の撮影中、ジュリアが双子を妊娠中だったことを脚本に反映させた、少々悪ふざけをまぶした“仲良し映画”。しかし、これだけの豪華キャストがワイワイ楽しんでいる空気にあふれた映画は、観ていて気分がアガる!
さらに『オーシャンズ12』から11年ぶり、再びガッツリ組んだ映画『マネーモンスター』(16)では、“同志”的な絆にグッとくる。他の作品がコメディ要素も強いのに対し、本作はどちらかと言えば硬派な社会派。人気経済番組で司会をするゲイツが、生放送中に拳銃を持って侵入してきた男に人質に取られてしまう。やがて男の目的、ウォール街の闇が次第に明らかになり――。ジョージはゲイツを、ジュリアは彼と無線で連絡を取りながら助けようとする番組ディレクターに扮している。2人を結ぶ無線がゲイツの生命線となるサスペンスで、緊迫した2人のやり取りがキーになるが、いつもはいがみ合っているかに見えた2人の、実は信頼し合っていた関係が胸を熱くする。実はジョージとジュリアは最初の顔合わせの後、多忙ゆえにあまり一緒に撮影をすることはなかったというが、それが可能だったのも「親しい間柄で演技の相性も抜群の2人でラッキーだった」と監督のジョディ・フォスターが語るとおりだろう。ちなみに映画終盤に登場するTVレポーターが、自分の名を「シェリー・ベネディクト」と告げるが、『オーシャンズ11&12』でアンディ・ガルシア扮する宿敵(ジュリア扮するテスの元カレ)の名は、「テリー・ベネディクト」。さりげない目配せ、オマージュがなされていたのである。
こうしたジョージとジュリアコンビの遍歴をふまえながら『チケット・トゥ・パラダイス』を観るのも一興。華やかなトップスター同士のハッピーなケミストリーを楽しんでほしい。
文/折田千鶴子