深津絵里、『すずめの戸締まり』で声優初挑戦「どん底まで落ち込んだ」原菜乃華&松村北斗はお互いの印象を告白!
『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)に続く新海誠監督3年ぶりとなる最新作『すずめの戸締まり』の初日舞台挨拶が11月11日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、花瀬琴音、新海誠監督が登壇した。
本作は日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女、鈴芽の解放と成長を描く現代の冒険物語。1700人を超えるオーディションから選ばれた原がヒロインの鈴芽、扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年、草太役を松村が演じた。
上映後の会場から温かな拍手で迎えられた新海監督は、RADWIMPSによる主題歌「カナタハルカ」の歌詞にある「僕にはないものでできてる」という一節を口にし、「あの歌詞がこの映画そのもの」としみじみ。「この映画は、僕の力でつくったものではないような気がする。『次はこういう映画を観たい』『こういう映画をつくってほしいんだ』という声がどこかから聞こえたような気がする。演者の皆さんもそうですし、たくさんのスタッフの力という、僕にないものでできあがった映画だと思います。皆さんの声によってできあがった映画であるような気がしています。ここまで導いていただいて、皆さんありがとうございました」と心からの感謝を伝えた。
原は「昨日はあまり眠れなかったくらい、今日をずっと楽しみにしていました」と緊張しきり。草太が物語の途中で“椅子”に姿を変えられてしまうことから、松村は「どうも椅子です」と茶目っ気たっぷりに挨拶。「今日の最速上映を観てから、この場に挑んでいます。“すずめの戸締まり熱”が、グラグラと煮えたぎっている状態」と熱っぽく語り、会場を盛り上げた。新海監督は、草太役について「非現実的なくらい美しい男性として描きたいと思っていた」というが、松村は「予告段階だと人間時代の草太が人気だったと思いますが、本編を観た人は、椅子時代の草太のほうが好きなのかなと思う」と楽しそうに微笑んでいた。
原は「“実写版草太さん”だと思う」と松村の印象を吐露。さらに「お声もそうですし、上品な雰囲気や仕草。私にもすごく丁寧な言葉で接してくださるところも、草太さんのまま。私が(インタビューなどで)思っていることをうまく言語化できない時に、その想いを汲み取ってくださって、言葉にしてフォローしてくださる。その聡明なところも、草太さんとまったく同じだなと思います」とキャラクターとぴったりの人柄だと話すと、松村は「言葉がうまい19歳ですね。まいっちゃいますね」と照れ笑いを見せる。
一方、ヒロインを演じた原に対して、松村は「かっこいいセリフの言い回しにキュンときた。(鈴芽の)『私は、草太さんのいない世界が怖いです』というセリフなど、悲しいけれどかっこよさがある。そういう力を持っている方」と称えていた。
鈴芽の叔母である岩戸環役を演じた深津は、本作の舞台挨拶に初登壇。「初めて声優に挑戦しました。とても怖かったです」と初挑戦の心境を明かし、「新海監督が温かく粘り強く導いてくださったおかげで、なんとか完成することができました。思い通りにできなくて、どん底まで落ち込んで、でも次の収録が待っているからなんとか気分を変えようと、あてもなく街を歩き続けたり、あてもなく新幹線に乗って京都のお寺で心を沈めてみたり」と苦笑い。「この年齢でトライできるチャンスをいただけて、本当に監督に感謝しています」と充実感を語った。
新海監督は、環役について「とても難しい役」と分析。東北にルーツがありながら、九州に移り住んで宮崎弁を身につけていったというキャラクターとなり、深津は「標準語をしゃべるだけでもとても難しいのに、さらに方言を2つマスターしなければいけない。すごく挑戦でした」と素直な胸の内を語る。深津の方言の突き詰め方にも感心しきりの新海監督は、「アニメーションが初めてということが意外だった。どうして本作に出ていただけたんですか?」と質問。すると深津は「逆になぜ私に環を」と尋ね、笑顔を見せ合った2人。
新海監督が「嘘のない叫びを聞かせてもらわないと、成立しにくいキャラクター。そこで深津さんが思い浮かんだ」と答えるなか、深津は「脚本を読んで、『監督が次のところに向かおうとされているのかな』と受け取った。『たった一人、その人だけに届けばいい』というような、そういったピュアな想いを感じた。こんな経験のない私にやってほしいということは、きっとなにかがあるのだろうと思って、下手くそながらぶつかろうと思いました」とオファーを引き受けた理由を明かす。
さらに深津は「私なんかより、何百万倍も原さんは怖かったと思う」と原の気持ちに寄り添い、「背負わなくちゃいけないものも大きかったと思う。でも(原が)作中の鈴芽みたいに、アフレコ現場でも目の前のことに立ち向かって、戦っている姿をそばで見ていた。本当に美しかった。初めての挑戦は恐ろしかったけれど、原さんのようなすばらしい感性の女優さんと一緒にお芝居をできたことが、大きな宝物のようなものになった」と貴重な経験ができたアフレコ期間を回想。原は「泣きそうなくらいうれしい。深津さんのお芝居を隣で見させていただいて、自分でも知らないような鈴芽がたくさん出てきた。感謝しかないです。隣を見ると、いつも笑顔で温かく迎えてくださった」と精一杯の気持ちを伝えた。最後のフォトセッションでも原と深津は終始笑顔で見つめ合うなど、確かな絆を育んだ様子だった。
取材・文/成田おり枝