北米ランキングは『ブラックパンサー』一色に!オープニング成績と作品評価は?
先週末(11月11日から13日)の北米興収ランキングは、事前の予想通り『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(日本公開中)一色で染まった。前作で主演を務めたチャドウィック・ボーズマンの死を乗り越えて作られた、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の30作目であり、“フェーズ4”の最後を飾る作品だ。
4396館で封切られ、初日から3日間の興行成績は1億8133万9761ドル。この週末の全体興収が2億933万ドルだったので、その大部分を占有したことになる。北米歴代6位(公開当時は3位だった)となる興収7億ドルを記録し、アメコミ映画として初めてアカデミー賞作品賞候補となった前作のオープニング興収はおよそ2億ドル。さすがにそれには届かなかったが、北米歴代13位、MCU作品として歴代8位の見事なオープニング興収だ。
ただ気になるのは、MCU作品ではおなじみの前傾型の興行推移である。いち早く観ようと初日に観客が殺到し、土日の興収が右肩下がりになっていくのは大作映画ではよく見られる傾向だ。前作は金曜から日曜にかけて1500万ドルしか下がらない安定感があったが、今作では前作を上回る初日興収を叩き出したのとは裏腹に、日曜にはそれが半減以上も下落。4日目の興収は、オープニング3日間興収で4000万ドル近く差をつけた『ソー:ラブ&サンダー』(22)を下回っており、水曜日には1000万ドルを割り込んでしまった。
また、現時点での作品評価も気になるところ。批評集積サイト「ロッテン・トマト」を参照すれば、前作の好意的評価の割合は、批評家が96%、観客が79%。対して今作は批評家が84%から、観客が95%からと、引き続き非常に高い水準を維持。とはいえ前作ほどの爆発的な熱狂も、歴史的なヒットも見られないとなると、2作連続のアカデミー賞の主要部門で候補にあがるのは少々難しいとの見方も強まっている。技術部門での大健闘はまだ安泰のラインといえよう。
ほかの作品が完全に『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』に押されているなかで唯一存在感を発揮したのは、アカデミー賞の大本命との呼び声も高いスティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『The Fabelmans』だ。4館での限定公開で、興収は16万1579ドル。1館あたりのアベレージで見れば4万394ドルで、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の4万1251ドルに迫る。
有名監督たちによる自伝的作品は近年増加しているが、その流れをスピルバーグが汲んだだけでも注目せずにはいられない。こちらは「ロッテン・トマト」で批評家の94%、観客の88%から好意的評価を獲得。先のトロント国際映画祭でオスカーへの“一番切符”といわれる観客賞を受賞しており、大量ノミネートもほぼ確実視されている。スピルバーグ監督作品としては29年ぶりの作品賞受賞も充分に考えられるだろう。感謝祭の時期にあわせた拡大公開でどこまで弾けるのか注目しておきたい。
文/久保田 和馬