「キャシアン・アンドー」シーズン1を総括…「スター・ウォーズ」サーガの概念が変わる!?「シリーズのなかで圧倒的におもしろい!」
ディズニープラスで好評配信中の「スター・ウォーズ」最新ドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」のシーズン1がついに完結。ドラマの全体像が見えてきたことで、興奮を隠せないファンも多いのではないだろうか。MOVIE WALKER PRESSでは全12話のレビュー企画を行ってきたが、今回はその最終回。「月刊シネコンウォーカー」編集長の佐藤英樹、「DVD&動画配信でーた」編集長の西川亮、「MOVIE WALKER PRESS」編集長の下田桃子が、全話を完走した感慨について語り合った。
ここで、「キャシアン・アンドー」の内容を軽くおさらいしておこう。本作は銀河帝国支配の暗黒時代、惑星フェリックスでくすぶっていた青年キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)が反帝国派のゲリラ活動に身を投じていく物語。最初は金や身の安全のためだったが、波乱の道のりを歩んでいくことで、彼に変化の兆しが現れる。ご存知のとおり、キャシアンはこのあと、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)で反乱軍のスパイとして活躍するのだが、そこに至る経緯がシーズン1で半分ほど明らかになった。残りは、2024年に配信が予定されているシーズン2で語られる。
※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
「『スター・ウォーズ』の世界観の幅を押し広げた作品」(佐藤)
西川亮(以下、西川)「シーズン1を観終わりましたが、個人的にはディズニープラスの『スター・ウォーズ』関連シリーズのなかでは、圧倒的におもしろかったですね。1番好きかもしれません。最終回は物語が進むにつれて静かに盛り上がっていく感じがとても渋かった。映画版を含めて、こんなにもしっかりしたドラマを『スター・ウォーズ』で観たことはなかったかも。以前の座談会でも言いましたが、『スター・ウォーズ』を知らなくても、物語に入りやすいという点も強みですね」
下田桃子(以下、下田)「後半にきて本当に盛り上がりましたね!私も手放しで絶賛派になりました。メッセージ性の強いスピーチも多かったけれど、この物語のなかではうっとうしくならないし、かなりハマりました」
佐藤英樹(以下、佐藤)「個人的には、最終話で派手なドンパチを期待していたので、そこには少し物足りなさもあったんだけど、振り返ってみると、そういう期待というか予測を延々といい意味で裏切られ続けてきて、ここにたどり着いたという達成感はありました。『スター・ウォーズ』のイメージとはまったく違うし、むしろ『スター・ウォーズ』の世界観の幅を押し広げた作品ですね。これまでのファミリー向けのイメージは捨てて作っていいんだ、という域に達した感じ。そういう意味では、『スター・ウォーズ』のクエンティン・タランティーノ版とか、新海誠版とか、出てきてもいいんじゃない?」
西川「僕は『スター・ウォーズ』自体すべての年齢層に向けた作品だと思うんですけれど、『キャシアン・アンドー』は、仮にちびっこが観て、現時点はおもしろくなかったとしても、それでいいという作り手の自信や覚悟がはっきり出た作品ですよね。子どもにはまだ理解できないところも多いかもしれないけど、大人のファンは盛り上がっている。そして、(その子どもたちが)10年後くらいに改めて観直した時に、『傑作じゃん!』と思えるんじゃないかな」
佐藤「言われてみると、小学生の時に観た『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』は、ドンパチの部分は覚えているけれど、ドラマは理解できていなかった気がする。その後、2度3度と観直してドラマのおもしろさに気づいたようなところはありましたね。そういう意味では、『キャシアン・アンドー』にも通じるかもしれない」
下田「群像劇だけれど、みんなが共通のところに向かっているし、複雑に見えるけれど一本筋が通っていますよね。かつて『スター・ウォーズ』に夢中になったいまの大人たちを、かなりの引力で引き戻す、そういうパワーがありましたね」