「silent」で描かれるまっすぐな恋心…無意識のうちに共感してしまう理由とは?

コラム

「silent」で描かれるまっすぐな恋心…無意識のうちに共感してしまう理由とは?

物語を動かしていく、紬の「まっすぐ」な行動

想も湊斗も、紬のことを「まっすぐ」だと言う。思い立ったら動いてしまうタイプで、自分の想いに忠実なのかもしれない。想と再会したいという気持ちが、紬を突き動かした。湊斗という恋人がいても、想が2人で会うことをやめようと言っても、紬は自分の思うままに動いた。どんな形であれ、想と一緒にいたい、という気持ちが結局のところ強かったのだ。

湊斗が好きだと言いながらも、想に会うことをやめられなかった。想の隣にいる女性、奈々(夏帆)に対して、もやっとした気持ちを抱えてしまう。紬の心の底にはやっぱり「想が好き」があって、それがすべてだった。紬の“好き”が物語を動かしている。偶然見かけた、想の姿。もう一度、どうにかして会おうとしなければ、なにも変わらないはずだった。

本来なら、紬の言動はもっとヘイトを集めそうだ。そうならないのは、自分だったらどうするだろう、を考えてしまうから。紬の行動はもしかしたら少し危ういところがあるかもしれない。でも、自分の身に置き換えた時にどうするかと想像したら、選択肢にはきっと挙がってくる行動なのだ。


想と現在の恋人、湊人への想いに紬の心が揺れ動く
想と現在の恋人、湊人への想いに紬の心が揺れ動く[c] フジテレビ

湊斗も、想も、奈々の行動も、その行動原理が「わかる」。人を好きになる気持ちが、こんなにまっすぐ描かれている作品が、最近は少なかったのかもしれない。でも、好きが簡単に言えない。声が出せても、声が聞こえても、なかなか言えない言葉をどのように伝えていくのか。それが伝わった時、また新たな感動を与えてくれるはずだ。

文/ふくだりょうこ

作品情報へ