最終章に突入!話題のドラマ「エルピス」が視聴者を釘付けにする理由とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
最終章に突入!話題のドラマ「エルピス」が視聴者を釘付けにする理由とは?

コラム

最終章に突入!話題のドラマ「エルピス」が視聴者を釘付けにする理由とは?

長澤まさみの4年半ぶりとなるドラマ主演作「エルピス-希望、あるいは災い-」。スキャンダルにより落ち目を迎えた女子アナウンサーが、ひょんなことからある死刑囚の冤罪の可能性を探る様子をスリリングに描いたドラマも佳境にさしかかっている。骨太なテイストで視聴者を引きつける本作の魅力に迫っていきたい。

冤罪を扱う社会派ストーリーを振り返る

まずはストーリーをおさらい。大洋テレビの女子アナウンサーである浅川恵那(長澤)は、報道番組「NEWS 8」のキャスターを務めていたが、報道局の記者である斎藤(鈴木亮平)との路上キス写真を週刊誌に撮られ、エースの座から転落。以降は「フライデーボンボン」という深夜の情報番組でコーナーMCを担当していた。

その「フライデーボンボン」の若手ディレクター、岸本(眞栄田郷敦)は、チェリーことメイクの大山(三浦透子)に出演者の女性に手を出したことを握られ、12年前に起きた10代女性をねらった「八頭尾山連続殺人事件」の冤罪の可能性を調べるように脅されると、報道時代に冤罪を扱っていた恵那に相談を持ちかける。

実はチェリーは事件発生当初、犯人とされる死刑囚の松本良夫(片岡正二郎)の家に身を寄せていた家出少女で、自分に優しく接してくれた松本が犯人とは到底思えなかったのだ。2人はしだいに事件にのめり込み、証言や警察の捜査の不審な点に迫っていくが、番組で事件を特集したことにより、社会に思いがけない大きな影響を及ぼしてしまう…。

現実とリンクした要素がもたらすリアリティ

立て続けに起こる衝撃的な展開もさることながら、本作に見応えをもたらしている理由の一つが、現実を強く彷彿させるということ。実際に「エルピス」のタイトルバックには「このドラマは実在の複数の事件から着想を得たフィクションです」と文字が映しだされ、クレジットには北関東連続幼女誘拐殺人事件、足利事件、東電OL殺人事件、本庄保険金殺人事件といった冤罪絡みの事件の参考文献が羅列される。

また、事件の鍵を握るような人物として登場する副総理大臣の大門(山路和弘)は、ダンディなハット&ダミ声でモロに麻生太郎を思わせる。そんな大門に対して懇意の仲である斎藤が放つ「森友止めてますので」というセリフや、安倍元首相のニュース映像など、さらりと現実の政権ネタをぶっ込むことでグッと現実味を高めてきた。

さらに劇中、恵那と岸本が事件の特集を提案しても、番組や局のお偉方の判断によって却下されるという展開が繰り返し描かれるが、波風を立てそうな企画がどのようにして握り潰されていくのか、テレビ局が舞台の作品だけにリアリティを感じざるを得ない。実際に佐野亜裕美プロデューサーがTBS時代に「エルピス」を作ろうとするもリスクの高さから企画が却下され、のちにドラマ制作部からも異動になるという、本編さながらの出来事が起こっている。

現実とリンクするような要素が散りばめられたことで、冤罪に加担してしまうマスコミの過熱報道の罪や、さらには権力への忖度、事なかれ主義というマスコミの体質といった問題点がメッセージとして視聴者に強く刺さっていくのだ。

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