最終章に突入!話題のドラマ「エルピス」が視聴者を釘付けにする理由とは?

コラム

最終章に突入!話題のドラマ「エルピス」が視聴者を釘付けにする理由とは?

長澤まさみら豪華キャスト陣の演技もピカイチ

【写真を見る】スキャンダルで失墜した女子アナを演じる長澤まさみの熱演も光る「エルピス-希望、あるいは災い-」
【写真を見る】スキャンダルで失墜した女子アナを演じる長澤まさみの熱演も光る「エルピス-希望、あるいは災い-」撮影:成田おり枝

加えて、豪華な役者たちの熱演も見応え抜群だ。例えば恵那を演じた長澤は、物語序盤、嫌なことでもすべて飲み込もうとする影を落とした佇まいが印象的だったが、事件にのめり込むうちに正義に目覚めていく様子を顔つきや声色の変化で巧みに表現。

同時に、事件を掘り返すことによって生じる反発や問題に心を悩ませる複雑な胸中もリアルに体現している。そんな恵那がプロデューサーに対し「セクハラかどうかは言われたほうに決めさせてもらえません?」と正論を突きつける際の毅然とした表情は圧巻で、今後の覚醒を思わせる名シーンだった。

鈴木亮平はいい人なのか悪い人なのか、ミステリアスな男を演じる
鈴木亮平はいい人なのか悪い人なのか、ミステリアスな男を演じる撮影:成田おり枝

また恵那の元カレで報道局きってのエリートである斎藤を演じる鈴木の怪演も光る。事件にのめり込む恵那と岸本に協力していく面倒見のいい男に見えながらも、裏を感じさせるどことない不信感をふとした笑顔などでさりげなく表現している。恵那に対して見せる“男の顔”にもどこかいやらしさが透けているが、それでも抗えない色気がムンムン。これまで好青年か狂犬か両極端な役柄が多かった鈴木だが、本作でのつかみどころのない演技からは目が離せない。

眞栄田郷敦は無精髭姿でダーティな一面をのぞかせている
眞栄田郷敦は無精髭姿でダーティな一面をのぞかせている撮影:成田おり枝

そんな実力者2人に、負けず劣らずの存在感を見せているのが眞栄田だ。演じる岸本はエスカレーター式名門校を出た学歴入社のポンコツだが、そんなことを気にも留めていないようなボンクラ感をニヤついた笑顔で絶妙に表現している。かと思えば、自身の暗い過去と向き合い、過ちに対する救いを求めるように事件に入れ込んでいく危うさを死んだような眼差しひとつで表している。クリーンなイメージの眞栄田だっただけに、髪や髭がボサボサのルックスもまたインパクト抜群。泥臭い演技で新たな一面を開花させている。

映像が変わる!?エンドクレジットまで見逃せない!

サウンドトラックは映画音楽でもおなじみの大友良英が手掛けている
サウンドトラックは映画音楽でもおなじみの大友良英が手掛けている

本編に加えて、エンディングの映像と主題歌も見逃せない。このエンドクレジットは、恵那がスタジオのキッチンに立ち、ケーキを作るというもの。楽しそうに調理していくが、いざオーブンを開けると、そこには黒コゲの塊になったケーキが入っており恵那は顔面蒼白。その様子をチェリーがケーキを食べながらテレビの画面を通して見ているという内容となっている。

このエンディングだが、チェリーの服やフォークか手掴みというケーキの食べ方、一瞬登場するカメラマンの存在など、放送回によって映像が微妙に異なっている。また「製造元:株式会社パンドラ」「賞味期限:2022年10月24日」(ドラマの放送開始日)と記されたケーキの箱のカットが差し込まれていたりとなにかと意味深だ。

トラックメーカーのSTUTSが、プロデュースを手掛けた音楽集団Mirage Collectiveによる主題歌「Mirage」も、第4話まではボーカルの声にはオートチューンが乗せられており、徐々に真実が浮き上がっていく第5話以降に声の主がYONCEと長澤によるものだと明かされるなど本編の動きともリンク。このような仕掛けに「ケーキはテレビ番組のメタファーなのか?」といった考察をする人がネット上に続出している。

社会に切り込むような攻めたテーマに、キャストの演技、そして様々な仕掛けが加わり、いろいろと考えさせる「エルピス-希望、あるいは災い-」。脚本・渡辺あや、演出に大根仁が名を連ねるなど映画ファンも納得の座組みが生みだす骨太な物語は、どのような結末を迎えるのだろうか…?

文/サンクレイオ翼

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