『パプリカ』から『金の国 水の国』まで!創業50年の老舗スタジオ「マッドハウス」の魅力とは?

コラム

『パプリカ』から『金の国 水の国』まで!創業50年の老舗スタジオ「マッドハウス」の魅力とは?

「このマンガがすごい!」2017年オンナ編で第1位を獲得した岩本ナオの同名漫画を、賀来賢人と浜辺美波をキャストに迎えてアニメーション映画化した『金の国 水の国』(2023年1月27日公開)。本作を手掛けたのは、群雄割拠のアニメ業界のなかでも信頼と注目を集めている制作スタジオ「マッドハウス」。今年創業50年を迎えた老舗アニメスタジオのこれまでを振り返りながら、その魅力に迫っていきたい。

『金の国 水の国』は2023年1月27日(金)公開!
『金の国 水の国』は2023年1月27日(金)公開![c]岩本ナオ/小学館 [c]2023「金の国 水の国」製作委員会

原作再現度の高さは業界随一!作家性の高さと迫力の作画で海外からも高評価

丸山正雄や出崎統、杉野昭夫、りんたろう、川尻善昭、おおだ靖夫ら著名なアニメーターによって1972年に創業したマッドハウス。劇場版アニメやOVAなどを中心に話題作を手掛け、1990年代に本格的にテレビアニメに進出すると、「カードキャプターさくら」をはじめとしたヒット作を多数輩出。強い作家性や緻密で迫力満点の作画によって、国内のみならず海外でも高い評価を集め、世代を超えて多くのアニメファンに支持されている。

2006年に公開された今敏監督の『パプリカ』(06)は、そんなマッドハウスの代表作のひとつ。海外でも公開され、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10)にも影響を与えたのではないかと言われるほど。他人の夢をスキャンできる機器を用いて依頼者の夢のなかにダイブするセラピストの女性が、狂気に満ちた夢に立ち向かう。ハイクオリティな作画と芸術性で、夢と現実が交差する複雑なストーリーが描き出されていく。

その後も劇場アニメでは『サマーウォーズ』(09)や『グッバイ、ドン・グリーズ!』(22)、テレビアニメでも「四畳半神話大系」や「ちはやふる」「DEATH NOTE」「若おかみは小学生!」などジャンルやターゲット層を問わず、多種多様な作品を発表してきたマッドハウス。新作の制作が発表されるたびに、国内外から期待の声が寄せられる理由のひとつは、原作世界の再現度の高さだ。

原作漫画に忠実に、かつ丁寧な作画と演出で描かれた登場人物たちの“動く姿”が多くの原作ファンを魅了。それは漫画や小説を問わず共通しており、そうした真摯な原作リスペクトの姿勢がマッドハウスの魅力を一段と高めているといってもいいだろう。ちなみに2023年には「このマンガがすごい!」2022年オトコ編で第2位を獲得した魚豊氏による「チ。地球の運動について」の制作が控えている。今後も原作ファンを魅了するアニメを作り続けること間違いなしだ。


原作ファンの監督が描く、岩本ナオの唯一無二の世界観!

【写真を見る】公開を控える『金の国水の国』ほか、マッドハウス制作の名作アニメを振り返る
【写真を見る】公開を控える『金の国水の国』ほか、マッドハウス制作の名作アニメを振り返る[c]岩本ナオ/小学館 [c]2023「金の国 水の国」製作委員会

そんなマッドハウスの最新作となるのが『金の国 水の国』。商業国家で水以外なんでも手に入る“金の国”と、豊かな水と緑に恵まれるが貧困で滅亡しそうな“水の国”。長きにわたって敵対しているふたつの国を舞台に、“金の国”の王女サーラと、“水の国”の建築士ナランバヤルが両国の思惑に巻き込まれ出会ったことから、壮大な物語が展開していく。

岩本が描く異国情緒満載の世界観や、愛らしくも芯の強い登場人物たち。原作ファンからも映像化を期待する声が多かった本作でメガホンをとるのは、自身も原作の大ファンだという渡邉こと乃監督。彼女を筆頭に、原作に惚れ込んだマッドハウスの先鋭クリエイターたちが、強い原作リスペクトを胸に腕を振るい、壮美で躍動感あふれる映像を作り上げる。

テレビアニメから劇場公開作品まで、大ヒット作がひっきりなしに登場する日本のアニメ界。そのなかでも抜けた存在感とクオリティの高さを誇るマッドハウスの次なる50年に期待しながら、『金の国 水の国』の公開を待ちたい。

文/久保田 和馬

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