【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」 第10回 かわいくありたい

コラム

【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」 第10回 かわいくありたい

うまくいかないことがあると全て顔のせいにするようになった

「かわいい」ともてはやされ、調子に乗りまくっていたというMINAMO
「かわいい」ともてはやされ、調子に乗りまくっていたというMINAMO撮影/SAEKA SHIMADA ヘアメイク/上野知香

努力ってある程度は実る、らしい。私はようやく人から「かわいい」と言われるおなごになれた。そんな1年そこらで“大・変・身!”みたいな漫画のようなこと起こりゃしない。ただ、かわいいって言ってもらえることがだんだん増えていったのだ。今までかわいいなんて親以外に言われてなかった人が急にかわいいなんて言われ出すとどうなるのか、そう、調子に乗って乗って乗りまくったのだ。「ヘェ私かわいいんだぁヘェ」と。承認欲求を満たすことは断じて悪いことではない。だが私には合わなかった。

私の精神状態は日に日に悪くなっていき、うまくいかないことがあると全て顔のせいにするようになった。ニキビができるだけで一歩も外へ出られなくなった。好きな人から連絡が返ってこなかった時も、「かわいくなりたい」なんて叫び、床を叩きながら泣きじゃくっていた。

そんな時タイトルに惹かれた『おんなのこきらい』(14)を見たら、地獄みたいな映画であった。ヒロインのキリコは承認欲求をブンブン振り回しながら歩いてるような女の子で、まあ性格が悪いのなんの。でも私はキリコが好きになった。現実にこんな女の子がいたら、きっと仲良くはなれないけれどキリコの悪口大会が始まった時に「でも少なくともこの中で一番かわいいですよね」とか言っちゃいそうだなあ、言ってやりたいなあ、なんて。ともかく、「かわいい」と言われたくて、「かわいい」が分からなくなって傷ついてしまった日があったら『おんなのこきらい』は荒治療になるかもしれない。

『おんなのこきらい』DVD発売中 発売・販売:TCエンタテインメント
『おんなのこきらい』DVD発売中 発売・販売:TCエンタテインメント[c]2014 GOLD FISH FILMS / MOOSIC LAB

努力をしてある程度可愛くなった私だが、自信が持てずなんだか空っぽであった。どこかで「何のために私は頑張っていたの」と思っていたのだ。そんな私が出会ったのが安野モヨコ先生の「美人画報」。私のバイブルとも言える本だ。叶姉妹のところへインタビューに行き、どれほど美しかったかを痛快な文章とポップなイラストと共に読者へ伝えてくれる。安野モヨコ先生の、美容を楽しみながら綺麗になっていく様に私はどっぷりハマった。そして思い出した。ドキドキしながら百貨店のコスメ売り場へ行った日のこと、初めて10センチのピンヒールを履いて見えた景色のこと。2年越しにやっと履けたバーバリーのミニスカート。それらの思い出は私の空っぽの心を満たしてくれた。


■MINAMO プロフィール
京都府出身。2021年6月にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。
YouTubeにて「MINAMOジャンクション」を配信中。
Twitter:@M_I_N_A_M_O_
Instaglam:minamo_j


人気セクシー女優がエンタメ愛を語るエッセイ連載「MINAMOの話をきいてミナモ?」
作品情報へ