「さすがと言うしかない」“映画館音響のプロ”LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIが大絶賛！「アバター」最新作の考え抜かれた音作り

「こんなに聴きやすいハリウッド映画ってあまりないですね」

水中シーンが多いため台詞が比較的少ない本作。「台詞が少ない代わりに、ストリングス、キャラクターの動き、カメラワークだけで、平気で1、2分過ぎていたりすることが度々ありました」と指摘する。
「オープニングから無音シーンというのがほとんどなくて、印象としてはずっとなにかしらのストリングスが入っているんです。もちろん戦闘シーンが前作より多かったこともありますが、ストーリー展開もじっくり焦らず劇伴で聴かせるところは聴かせる。最近の映画のセカセカした感じが全然なくって、いい映画だなと感じました。だから昔の映画を観ているような感覚も覚えました」。

TOHOシネマズ劇場のプレミアムサウンドを監修し、音響調整にも携わっているNAOKI。それだけに映画から聴こえる些細な音や静寂などが、映画館でどう再現されるかを、音響のプロの視点で語ってくれる。神秘の星パンドラの音はどのように聴こえたのか。
「パンドラの風の音や森林の音に関して言うと、高い周波数までとてもきちんと音を取っていると感じました。これはその周波数帯域が自然界にとって大切な音要素だと、意識的にわかってないとそうはなりません。最近は高音を攻めすぎる作品がアニメなどを中心に増えているのですが、今度は音の高域が派手に聴こえるからといってやりすぎると、逆に“耳に痛い”映画にもなってしまいます。そうやって無理矢理派手にしようとした作品は結局、劇場で全体の音量を下げられてしまうんですけどね(笑)。でも本作には、高い周波数帯域がしっかり入ってるのに、そういうところがまったくありません。さすがと言うしかないです。あのパンドラの風の音の成分には11kHzより少し上ぐらいかな…。20kHzぐらいになると、もう超音波なのですが、それより少し下の帯域、森林浴のようななんとも言えない、気持ちいい感じってあるじゃないですか。あのヒヤーっていう感じですね。森林浴でしか感じられないような音を、パンドラの森のシーンですごく感じました」。

3時間超えの長編にも関わらず、決してダレたり退屈することがない。できることならずっとパンドラの世界にいたいと思うほど快適な空間だ。それにはサウンド面の配慮や貢献も大きいという。
「こんなに聴きやすいハリウッド映画って最近あまりないですね。すごく優しい音なんです。それは高音だけではなく、中域にも人間の耳にどうしても痛く聴こえる音があったりするのですが、1度もそういうことがありません。これってわかってなくては、できないことだと思います。映画館というのは1度座ったら、3時間なら3時間は動けないですよね。ライブハウスで鑑賞するのとは違うと思います。監督自ら、その点をわかっているから、意図的にそうしているのだと感じました。ここ3年ぐらい観たなかでは、一番耳に心地よい音の映画ではないかと思いました。長時間でも全然苦にならない。疲れないんです」。