「さすがと言うしかない」“映画館音響のプロ”LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIが大絶賛!「アバター」最新作の考え抜かれた音作り

インタビュー

「さすがと言うしかない」“映画館音響のプロ”LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIが大絶賛!「アバター」最新作の考え抜かれた音作り

「ビックリするぐらい作品に寄った、ソングライティングが素敵だなと思います」

サウンドトラックに至るまで、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の楽曲を担当したサイモン・フラングレン
サウンドトラックに至るまで、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の楽曲を担当したサイモン・フラングレン[c]SPLASH/AFLO

前作『アバター』で音楽を担当したジェームズ・ホーナーは、残念ながら2015年に飛行機事故で他界。本作では、『アバター』にも関わっていたサイモン・フラングレンが、ホーナーの遺志を継ぐ形で音楽を手掛けている。フラングレンは、2017年にオープンしたフロリダのウォルト・ディズニーワールド内のアトラクション「パンドラ:ザ・ワールド・オブ・アバター」の音楽を担当していたり、2024年に公開予定とされる『アバター』の3作目にも取り組んでいる。

「つまり前作含めて『アバター』にずっと携わっている方が担当したということですよね。愛情をすごく感じます。単にこの映画に劇伴をはめてと頼まれて作ったのではなく、この作品に対する想いや、主人公の人生に想いを馳せながらペンを執っている。全然違うと思うんです。映画って本当にいろんな芸術の集まった総合エンタテインメントだと思うので、どっちが正しい、どっちじゃなきゃ、というのはありませんが、ただ、本作の場合は、彼のような『アバター』の世界にすごく愛情を注いでくれる人に任せられたからここまでの作品ができたのでしょうね。劇中、楽曲を聴いて僕が思うに、たぶんエゴのない人だと思うんです。時にはシーンに溶け込んでしまうくらい、メロディに主張が強くなりすぎない、エゴのないアレンジのストリングスがずっと鳴っているんですよ。ビックリするぐらい作品、ストーリーに寄った、ソングライティングが素敵だなと思います」と絶賛する。



フラングレンは、1990年代からマイケル・ジャクソンやマドンナのスタジオセッションのキーボード奏者として活躍。デヴィッド・フォスターの右腕として参加した『ボディガード』(92)のサントラをはじめ、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』(95)、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(96)など多数の映画音楽にも関わってきた。キャメロン監督とは、1997年の『タイタニック』に故ホーナーと共に参加。セリーヌ・ディオンが歌った主題歌「My Heart Will Go On」の共同プロデューサーも務めている。本作では、フラングレンは作曲とプロデュースを全面的に担当。またサウンドトラックアルバムは、通常版と「空間オーディオ」と呼ばれるドルビーアトモス版で配信されており、その点も想定したうえで、フラングレン自らがプロデュースを手掛けているという。

なかでもNAOKIが特に印象的だったのが、ジョーイの妻ネイリティ役のゾーイ・サルダナが歌った「The Songcord」という曲だ。
「劇中で彼女がアカペラで歌った曲なんですが、最後にまたエンディングで今度は楽器の入ったレコーディング作品として流れるんですよね。ナヴィ語で歌っているんです。その瞬間になんて言うんだろう…もうパンドラの星やナヴィの世界が、ここに存在しているとしか思えない。『あれ、どこまでが現実なんだっけ?』っていうような気持ちでした」(笑)」。



ナヴィ語で歌われるナンバー「The Songcord」には、この映画の根幹となる重要なテーマがしたためられている。
「あのナヴィの風貌や彼らの文化には、少しネイティブ・アメリカンを思わせるような部分がありますよね。たぶん少し意図的だと思うんです。オープニングシーンからけっこう人間がドカドカ入ってきて森林を破壊したりというのも、あれってアメリカの開拓時代に実際に起こっていた出来事じゃないですか。ジョン・ウェインの時代の映画ではそれが当たり前のように描かれていた作品もあったけれど、その罪意識というか、21世紀に入ってキャメロン監督は、もう一度映画人として、ちゃんとみんなにエンタテインメントを通して届けておかなければと思っているのではないかと。そんなキャメロン監督の想いも伝わってきましたね。ひょっとしてパンドラという星が地球の近くにあったとしても、きっとナヴィみたいじゃない可能性のほうが高いじゃないですか。それを僕ら、人間が理解しやすい方法で、共感しやすくて、学びやすい形で描いてくれている。ナヴィやアバターというものを使って、ひとつここで、みんなで考えてみようっていう監督の意図を感じました。いまこうして僕らがこの話をしているのもそうですよね。そういう機会をこの21世紀に与えてくれた映画だと思います」。

「人間の世界からパンドラに寄せる讃歌のような気がしました」

テーマソング「Nothing Is Lost (You Give Me Strength)」を担当したThe Weeknd
テーマソング「Nothing Is Lost (You Give Me Strength)」を担当したThe Weeknd[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画本編は「The Songcord」のあとに、The Weekndによるテーマソング「Nothing Is Lost (You Give Me Strength)」が続けて流れることで、終着を迎える。この曲にもフラングレンや、EDM系アーティストのスウェディッシュ・ハウス・マフィアが共同プロデューサーとして関与。ここで初めて現実の世界に引き戻される。

「最後にね、急に地球の楽器というか、ドラムなどが聴こえてきて、『あ、地球から観てたんだ』と気づかされました。初めて客観的になったというか、あの曲だけは人間の世界から歌っている曲のような感じがして、人間の世界からパンドラに寄せる讃歌のような気がしました。とても深い意味のあるエンドロールだったと思います」。

劇中のスコアを収録した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター オリジナル・スコア』
劇中のスコアを収録した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター オリジナル・スコア』[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

The Weekndのテーマソングが収録された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター オリジナル・サウンドトラック』
The Weekndのテーマソングが収録された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター オリジナル・サウンドトラック』[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


とりわけ、その進化した映像美が注目を集める『アバター:ザ・ウェイ・オブ・ウォーター』。本インタビューを読み、いま一度“音楽”に耳を傾けながら鑑賞してみてはいかがだろうか。

取材・文/村上ひさし

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■『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター オリジナル・サウンドトラック』
視聴リンク:https://20thcenturystudios.lnk.to/AvatarTheWayOfWater
レーベル:Hollywood Records
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■NAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)
1997年、青山学院の音楽サークルにてボーカルのKUMIと共にLOVE PSYCHEDELICOを結成。2000年4月、シングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」でデビュー後、2001年1月に発表された1stアルバム『THE GREATEST HITS』、2002年1月に発表された「LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA」と2作連続ミリオンセールスを記録し、トップアーティストとしての地位を確立。2020年にはデビュー20周年を迎え、2022年10月から5年ぶり8枚目のオリジナルアルバムを引っ提げ、全国ホールツアーを成功させるなど、精力的な音楽活動を続けるかたわら、映画館の音響監修を務めるなど多岐にわたり活躍。
・公式サイト:https://lovepsychedelico.net/
・「A revolution」Music Video:https://www.youtube.com/watch?v=yozj8alG_e0

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