「今際の国のアリス」シーズン2を徹底解剖!東京の街を“植物化”させた美術&VFXチームの職人技に迫る
美術チーム&VFXチームが一丸に!緻密でリアルな“植物化した東京”
佐藤信介監督が求める世界観を実現するために、美術監督の斎藤岩男が目指したのは「シュルレアリスティックなビジュアル」だったという。「巨大なものは巨大に。数が多いものはとにかく多く。あまりファンタジーでやってしまうと引いてしまう人もいるので、やはりリアルさは必要になるのです」。
なかでも特に注目すべきは、シーズン2を象徴する“植物化した東京”の光景だ。街は退廃し、朽ちた建物や道路に植物が繁茂する。それはアリスたちの戦いの出発点となる渋谷から、東京23区の外側に進むにつれて、どんどんと深くなる。斎藤たち美術チームはVFXチームと強固にタッグを組み、場所や時間ごとに植物化の度合いを5段階にレベル分け。それぞれの亀裂の入り方や植物の生え方を設定しながら作り上げていったのだとか。
「観ている観客が時間のなかで巻き込まれていくことが重要なので、細かい設定よりも勢いで持っていくという方向を重視して作りました。なので、美術はあくまでもその土台を作ったに過ぎません」と語る斎藤。現場で本物の植物を植えたり、VFXで足して行ったりと、様々な試行錯誤によって完成した“植物化した東京”。チーム一丸となった作業に斎藤は「このチーム無くしては出来なかったことです」と自信をのぞかせている。
佐藤信介監督が瓦礫セットを大絶賛!「日本映画史に残るくらいすごい」
美術チーム渾身のシーンはほかにも。ヘイヤ(恒松祐里)が訪れたスタジアムで突然始まった「かまゆで」は、スタジアムが壊れるほどの巨大な水柱が何本も立つ。その後もアリスとウサギの重要なシーンに登場するスタジアム崩壊跡地の瓦礫は、半年がかりで作られていったという。
全体像をミニチュアセットとして作り、散らばる瓦礫の一つ一つの設計図を作成。ひとつ2〜3メートルの瓦礫を何百個も作り、形や質感、数まですべてを管理。セットの完成後にそれらを配置していく。「恐ろしいほどの労力を使いました」と振り返る斎藤だが、「彫刻を一つずつ作ったような感覚でした。このセットも造形的で壮大で実験的な世界。いままでの映画ではなかったような作品と言えます」と手応え充分。
佐藤監督もこの瓦礫セットについて「日本映画史に残るぐらいすごい」と大絶賛。あまりの完成度の高さから、劇中でほかのシーンでも使用されているだけでなく、このまま処分されるのはもったいないと別の映画作品に引き取られていったのだとか。
アリスやウサギたちを翻弄しつづける“今際の国”の謎へと迫っていくこのシーズン2。その世界観を司る豊かなディテールに注目しながら、新たな“げぇむ”に参加してほしい。
文/久保田 和馬