アイドルをプロデュースして、先物取引で大儲け…痛快ビジネス時代劇『近江商人、走る!』で笑って学べ!

コラム

アイドルをプロデュースして、先物取引で大儲け…痛快ビジネス時代劇『近江商人、走る!』で笑って学べ!

大坂、伊勢と並ぶ「日本三大商人」の一つに数えられる、“近江商人”の活躍を描くビジネス時代劇『近江商人、走る!』が12月30日(金)から公開となる。本稿では、新年の幕開けに相応しい、痛快で胸が熱くなる本作の見どころや魅力をお届け。現代のビジネスにも役立つアイデアが詰まった“商人ヒーロー”もののおもしろみに迫っていく。

男手一つで自分を育ててくれた父親を幼くして亡くした銀次(上村侑)は、薬売りの喜平(村田秀亮)と出会ったのが縁で、大津の米問屋「大善屋」で丁稚奉公(商人の家に10歳前後の年少者が奉公し、雑用などの仕事を行うこと)をすることになる。すると彼は5年後、類稀なる商才を発揮。店の仕事はもちろん、怪我をして働けなくなった大工の佐助(鳥居功太郎)を助けたり、ライバル店に客を取られた“むさしの茶屋”を再生させるための秘策を次々に編みだしたりして、町人たちのピンチを救う。

銀次の商才はすさまじく、お客の帳簿すべてを暗記している
銀次の商才はすさまじく、お客の帳簿すべてを暗記している[c]2022 KCI LLP

そんなある日、悪辣な大津奉行(堀部圭亮)の罠によって、大善屋が千両の借金を背負うハメに。千両は現在の約1億3000万円に相当する巨額なだけに、簡単に支払えるわけもなく、大善屋の主人、伊左衛門(筧利夫)は店を売ることを決意する。だが、そんな卑劣な罠にも屈しないのがミスター近江商人の銀次。大善屋の先輩丁稚、蔵之介(森永悠希)の父親である平蔵(矢柴俊博)も関わる悪企みから店を守るため、銀次はある秘策を思いつく。

近江商人が掲げる「三方良し」の心得

タイトルにもある“近江商人”とは、江戸時代ごろの近江国(現在の滋賀県)で商いを行う商人のことではなく、近江国を拠点とし、全国へ行商に駆け巡った商人のこと。現在も近江が発祥の企業が存在し、日本の商業の先駆けであったと言われている。

薬売りの喜平との出会いから、銀次は商人の道を進むこととなる
薬売りの喜平との出会いから、銀次は商人の道を進むこととなる[c]2022 KCI LLP

特筆すべきは近江商人たちが掲げる“売り手よし”“買い手よし”“世間よし”の「三方良し」の心得。つまりこれは、“売り手”と“買い手”が満たされるのは当然で、社会に貢献できてこそよい商売と唱え、それを実践する彼らの精神のこと。本作はそんな近江商人の史実がベースになっているから、ほかの時代劇とはひと味違う独自の熱気とおもしろさにあふれている。

逆境を跳ね除ける驚きのアイデアと実行力がアツい!

【写真を見る】江戸時代の新ビジネス!お茶屋×キャバクラの強力なライバル店に虜になる町人たち
【写真を見る】江戸時代の新ビジネス!お茶屋×キャバクラの強力なライバル店に虜になる町人たち[c]2022 KCI LLP

本作の一番の見どころは、あり得ない無理難題や絶体絶命の危機も、銀次が誰も思いつかない驚きのアイデアを駆使して乗り越えていくところだ。ケガをして働けなくなった大工の佐助を助ける際には職人の互助組合を作り、閑古鳥が鳴く“むさしの茶屋”の再生のために看板娘のお仙(田村優花)のアイドル化計画を実践。

客を奪われ嘆くお仙をNo.1看板娘にするため、銀次はアイドルプロデュース作戦を決行する
客を奪われ嘆くお仙をNo.1看板娘にするため、銀次はアイドルプロデュース作戦を決行する[c]2022 KCI LLP

そして、巨万の借金を背負った大善屋の大ピンチを救うクライマックスでは、持てる頭脳をフル回転させて、大津と堂島の間での米の価格差を利用した裁定取引(同じ価値の商品の間で価格差が生じた時に、割高な方を売却、割安な方を購入することで利益を得る取引)を行い、一世一代の大勝負に売って出る。というのも、この時代は電話もネットもないし、銀次たちのいる大津と大阪の堂島は15里(約60km)も離れている。飛脚でも半日はかかるこの長距離では、大津の米価格を知ってから堂島に行っても間に合わないし、米の価格情報を現代のように迅速に伝えるのは不可能だ。

近江商人の権力に屈しない、目先の人を大切にする心得が銀次たちを動かす
近江商人の権力に屈しない、目先の人を大切にする心得が銀次たちを動かす[c]2022 KCI LLP


しかし、ここでも銀次は諦めない。不可能を可能にするある秘策を思いつき、その大胆なアイデアに心を動かされた町民たちを巻き込み、それを実行に移すから、観る者も自然に熱くなる。

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