南沙良、ミニシアターを巡る Vol.28 シネマート新宿(後編)
「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」では、私、南沙良がミニシアターを巡り、その劇場の魅力や特徴をみなさんにお伝えします。第28回は新宿にある「シネマート新宿」さん。マネージャーの宮森覚太さんとの対談の模様をお届けします!
「劇場内の装飾は細部までこだわっています」
南 「ウォン・カーウァイ特集が大盛況ですね」
宮森 「『恋する惑星』の初週は5回回して333席が全部満席でした。こんなことコロナ前でもなかったですね。初週だけならシネマート新宿の歴代No.1の記録です。お客様は僕と同い年くらいの男女中心ですが、沙良さんくらいの若い女性や、場所柄か中国人の方も大変多くいらっしゃいます」
南 「私、いろんな方に観たほうがいいよって言われて『恋する惑星』を観たんですが、28年も前の映画なのにすごくおしゃれで、古臭さを一切感じませんでした」
宮森 「さっきご覧になったロビーのウォン・カーウァイコーナーにLEDで光る『王家衛』パネルがあったじゃないですか。あれ、劇場スタッフの手づくりです。業者さんに発注したものじゃないんですよ」
南 「嘘!すごい…」
宮森 「美大出身のスタッフががんばってくれました。背面はハンダで処理するなど本格的です」
南 「館内のディスプレイはすごく凝ってますよね。チラシがたくさん貼ってあるライブハウス風の壁もかっこよかったです」
宮森 「一昨年の夏にアンダーグラウンドなロック映画の特集をやった時につくりました。スタッフがネットで拾ったチラシを出力し、わざわざコーヒー豆で汚して雰囲気を出してくれたんです」
南 「コ、コーヒー豆!?」
宮森 「あんまりカッコよかったので特集上映が終わっても残し、別の音楽映画をやる時には上から新しいチラシを貼ってます」
南 「皆さんの情熱がすばらしいです。情熱といえば、宮森さんはコスプレをされたとか(笑)」
宮森 「『恋する惑星』でトニー・レオンが演じていた警官を(笑)。初日のロビーにあの警官がいたら話題にしてくれるかなあと思って」
南 「衣装はどうしたんですか?」
宮森 「僕はスタッフと違って手づくりできないので、アマゾンで調達しました(笑)。でも“663”の番号はガムテープで自作しましたよ」
南 「(笑)。反応はいかがでしたか」
宮森 「“663”に気付いて写真撮影を求められたり、SNSで『最初、列を整理する警備員かと思った』って投稿されたり(笑)。同世代の女性からは『しっかりやってますねえ』とほめられました」
南 「上映作品の傾向は?」
宮森 「運営会社であるエスピーオーがアジア系作品に強い映像の会社なので、それらが軸にはなっていますが、音楽ものやB級映画などエンタメ性の強い作品を幅広く上映しています。新宿って、街全体が“エンタメの街”ですから」
南 「私、新宿は好きです。人がいいし、若すぎないから(笑)」
宮森 「うれしいなあ」
南 「宮森さんは2011年からこちらで勤務されているのことですが、この11年で新宿は変化しましたか?」
宮森 「新宿全体の劇場環境としては、2015年にTOHOシネマズ新宿さんができたりして結構変わりましたが、うちの客筋は変わっていません。というより、むしろ映画ファンのお客さんが増えてきた印象です。それこそウォン・カーウァイ作品みたいな旧作や日本未公開のカルト作にヒットが出たり」
南 「そのなかに、私の好きなサメ映画は含まれて…」
宮森 「残念ながら、当館では上映していないです(笑)」
取材・文/稲田豊史
公式サイト https://www.cinemart.co.jp/theater/shinjuku/
住所 東京都新宿区新宿3-13-3新宿文化ビル6、7階
電話 03-5369-2831
最寄駅 新宿三丁目駅ほか
●南沙良 プロフィール
2002年6月11日生まれ、東京都出身。第18回ニコラモデルオーディションのグランプリを受賞、その後同誌専属モデルを務める。
女優としては、映画『幼な子われらに生まれ』(17)に出演し、デビュー作ながらも、報知映画賞、ブルーリボン賞・新人賞にノミネート。2018年公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)では映画初主演ながらも、第43回報知映画賞・新人賞、第61回ブルーリボン賞・新人賞、第33回高崎映画祭・最優秀新人女優賞、第28回日本映画批評家大賞・新人女優賞を受賞し、その演技力が業界関係者から高く評価される。2021年には、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021のニューウェーブアワードを受賞。
最近の主な出演作に『ゾッキ』(21)、『彼女』(21)、『女子高生に殺されたい』(22)、MIRRORLIAR FILMS Season3『沙良ちゃんの休日』(22)、『この子は邪悪』(22)、ドラマ「ドラゴン桜」、「鎌倉殿の13人」、「セイコグラム~転生したら戦時中の女学生だった件」、「女神の教室〜リーガル青春白書〜」など。待機作にNetflixで3月配信予定の「君に届け」などがある。