“政略結婚カップルの戦国ラブコメ”から始まった古沢良太の脚本の旅。「信長というキャラクターを考えていくうちに、スター木村拓哉と重なった」
「濃姫を信長と対等に立ち向かうことのできる存在にするために思いきり力を込めて強く描きました」
――濃姫がすごく強いです。綾瀬はるかさんだからあそこまで強い人になったのでしょうか。
古沢「元から強い濃姫にしようと思っていました。濃姫は戦略の一つとして他国に何度も嫁がされていますが、彼女のような戦国時代の女性は、ともすれば三つ指をついて男性に黙って従うような描かれ方になりがちで、戦が主になるとどうしても城の奥に引っ込まざるを得なくなってしまいます。でもそうはしたくなくて、信長と対等に立ち向かうことのできる存在にするために思いきり力を込めて強く描きました。綾瀬さんがやってくださったおかげで濃姫の強さに説得力も増しました。斎藤道三が作り上げたサイボーグというようなイメージに仕上がったと思います。映画『ニキータ』のイメージかな」
――木村さんも綾瀬さんも本当にアクションもすばらしくて。古沢さんは、完成版をご覧になってどうでしたか?
古沢「久しぶりに、映画らしい映画を観たな!という充実感がありました。僕もそうでしたけれど観客の皆さんも、ひと言では言えない、様々な感情を胸いっぱいに抱えて映画館を出ることができるのではないかと思います」
――それは古沢さんのねらい通りですか?
古沢「ねらい以上だった部分もあります。最初にお話したような僕がやりたかったラブコメだと小規模に公開するような映画にしかなりえなかったと思いますが、大友監督が参加してくださって大きなスケールで描いてくれて、単純な夫婦のラブストーリーでは収まらない、壮大で壮絶な、2人の人間の生き方が収まった映画になりました。歴史を知らなくても楽しめるし、歴史ファンが観ても楽しんでもらえる、いや、むしろ歴史ファンこそおもしろがってもらえるかもしれません」
――すごく壮大でした。ネタバレになるので具体的なことは言葉にできないですが、誰もが知っている信長の生涯に古沢さんらしい意外性もあって楽しめました。
古沢「ラストは書きながらどうしようか悩んで、書いている途中で決めました。ただ、出来上がったものが僕の想像以上に徹底的に画にしてくださっていて、そこが映画を観て驚いたところかな。大友監督が僕の想像の部分をとことんリアリズムで描ききって、しかもたっぷり尺をとっていて、僕がイメージしていたよりも壮絶でかっこよかったですね。ズシンとしたものが残るんじゃないかと思います」
取材・文/木俣 冬