脚本家・古沢良太が『レジェバタ』に込めた想い「歴史に残らず、人知れず消えていく蝶の羽ばたきこそを描きたい」
木村拓哉、綾瀬はるかの共演で、織田信長と濃姫との知られざる物語を描く歴史超大作『レジェンド&バタフライ』(1月27日公開)。本作の公式サイトとMOVIE WALKER PRESSでは、作品をより深く楽しむためのWEBマガジン「レジェバタ公記」を展開中だ。今回は、本作を新たな時代劇に仕上げた立役者・脚本家の古沢良太にインタビューを敢行。聞き手は、『コンフィデンスマンJP』や大河ドラマ「どうする家康」のノベライズも務める木俣冬。企画の立ち上げから語った前編に続き、後編では、劇中のカギを握るアイテム“三脚蛙の香炉”など、古沢良太ならではのくすぐりポイントを語ってもらった。
「ディレクターズカット版を作ったら『地獄の黙示録』みたいな感じだと思いますよ(笑)」
――2時間48分と長いですが、古沢さんとしてはどのくらいの時間規模で書いたのでしょうか?
古沢「僕は2時間切るくらいの気持ちで書いていました(笑)。あれでも相当切っていますからね。台本にあったシーンのみならず、すごく予算をかけて撮ったシーンもだいぶ落としていると思いますよ。ディレクターズカット版を作ったら『地獄の黙示録』みたいな感じだと思いますよ(笑)」
――大友監督は脚本にどのような意見を出されていますか。
古沢「1回飯食って少ししゃべっただけなんですよね」
――プレスシートによると、大友さんが『「第一稿で撮れる!」と思える脚本は、僕のキャリアで初めてのことでしたね』とコメントされています。
古沢「とりあえず書いてみますと言って提出した初稿で結構気に入ってくださいました。僕はもちろん監督の『るろうに剣心』シリーズも観ていたし、大河ドラマ『龍馬伝』や土曜ドラマ『ハゲタカ』も観てファンでもあったから、撮影はお任せしますという感じでした。どんなふうに出来上がっているかは、東映のプロデューサーの須藤泰司さんが定期的にメールで現場の写真を送ってくれました。『現場がすごいことになっている』というメールを読み、写真を見て、確かにえらいことになってるな…と思いながら出来上がるのを心待ちにしていました」
――途中で信長と濃姫の激しいアクションがあります。東映バイオレンスを意識したのでしょうか。
古沢「僕はまったくバイオレンスにするつもりはなくて…。もちろん切り倒していくっていうふうには書きましたけれど、『ローマの休日』みたいに、京都の街にお忍びでデートに出たらチンピラに絡まれて否応なく応援する、みたいなシチュエーションを想像して書いていたものなんです。そうしたらすごく壮絶なシーンになっていました(笑)。でも、多分リアルに当時の荒れ果てた京都の裏側――スラムみたいなことを再現しようとするとああなるっていうことだと思います。2人はああいう死と背中合わせの世界に生きているんだなということがあのシーンですごくわかりますよね」
――木村さんと同世代の古沢さん、木村さんが50歳で古沢さんも23年に50歳。信長が「人間五十年」(「人間五十年、下天(化天)の内をくらふれハ、夢幻の如く也」)と『敦盛』を舞いますが、50歳に何か感じることはありますか。もちろん戦国時代とは違いますが。
古沢「やっぱり欲望とか自我みたいなものって減っていきますよね。それが老いなのかもしれないですけど。自分が何かを成し遂げてやろうとか、自己顕示欲が減っていって、周りのためになにか役に立てればいいなという気持ちも増えてきますよね」