「この役は私のもの」。マーゴット・ロビーが明かす、『バビロン』の扇情的ヒロインを熱望した理由
「ネリーは直感が優れていて、うまくいく時といかない時がわかるスーパーパワーを持っている」
パーティに入り込むことに成功したネリーは、その機会を最大限に活かし、まばゆい人々に混じりながらも目立つことに成功。その結果、初めて業界で大ブレイクを果たすことになる。「このパーティのシーンは、ハリウッドではすごく小さなことでも大きなものにつながるということを表しています。私が最初にLAに来た時もそう感じました。どうすれば実現できるかというロードマップはないけれど、実現するべきだとわかっているから、その瞬間を作り上げるためにできることはなんだってします。ネリーは本能的に、あのパーティに参加するべきだとわかっていました。今夜なにかが起こる、それは大きなものに違いないと感じていたから」。
パーティで披露される扇情的なダンスシーンの振り付けは、アカデミー賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』でチャゼルとライアン・ゴズリング、エマ・ストーンとタッグを組んだマンディ・ムーアが担当。ロビーの振り付けは、チャールストンと同じアフリカの歴史的ルーツを持つものだ。「20年代のダンスといえば、実はアフリカのダンスが基礎になっていて、それが私のパーティシーンの基盤になっています」とロビーは言う。「クレーンやカメラワークのためにブロッキング(カメラ割り)さえ振り付けされていたけれど、ネリーのエネルギーを持つなにかを探求して見つけることができたから、とても楽しかったです」。
ネリーがパーティの人だかりに入っていくと、彼女は音楽に身を任せ、体の動きと目の輝きだけでその場にした全員の視線を集めることに。「ネリーは直感が優れていて、なにかがうまくいく時といかない時がわかるというスーパーパワーを持っていると思います。だから彼女が立ち上がってテーブルの上で踊る時、人々が自分に注目してゾクゾクし、衝撃を受け、興味を掻き立てられることがわかっているんです」。
「いつだってその場で一番クレイジーでいられることは、ネリーの強み」
パーティシーン以外にも、強い日差しに照らされた野原で、助監督が罵声を浴びせ、製作アシスタントが疾走し、大量のカメラが回るという無秩序さをもって描かれる、1920年代の映画撮影の舞台裏も印象深い。不協和音のようにも聞こえるが、実際は創造的なストーリーテリング・マシンの神経中枢となっている場面だ。ネリーが初めて映画製作の現場へ踏み込むシーンでもあるが、ロビーは「劇中でネリーが黙り込んでしまう数少ない場面の1つです。初めて映画セットに足を踏み入れ、サーカスのような雰囲気に圧倒されてしまいます。ネリーはかなり混沌としていますが、いつだってその場で一番クレイジーでいられることは、ネリーの強みでもあります。この時ばかりは『やばい、この人たち、私よりクレイジーだ』と思うのですが」。
欲望と思惑が渦巻くハリウッドに、やがてトーキー映画という革命の波が押し寄せてくるなか、ネリーたちの夢をつかむ覚悟も試されていく。果たしてネリーの運命はいかに?
まぶしいほどエネルギッシュにネリー役を演じきったロビー。おそらく『バビロン』は、彼女にとっての新たな代表作の1本となるに違いない。冒頭からクライマックスに至るまで、映画への愛と情熱を惜しむことなく注ぎ込んだパワフルな快作『バビロン』を、ぜひ大スクリーンで体感してほしい。
構成・文/山崎伸子