温泉はハレ、銭湯はケ…生田斗真と小山薫堂が『湯道』で感じた、人を繋ぐ“お風呂”の話
「お風呂が人を繋いでいくというテーマの映画ですが、まさに撮影現場でそれが起きていました」(生田)
――主役の1人とも言えそうな、「まるきん温泉」のセットがまたすばらしいですね!
小山「シナリオハンティングで日本各地の銭湯や温泉を周り、こういう世界観がいいねと製作陣と共有しました。ここで映画を撮りたい!と思ったくらいの、長崎の廃業したある銭湯があり、まさにそこが“丸金温泉”という名前だったんです。プロデューサー、監督、スタッフみんなと“いいね”と言い合い、セットにも“リアル・丸金温泉”のディテールが結構入っています。湯船が真ん中にあるのも“リアル・丸金温泉”と同じですが、それは西(日本)の特徴なんです。富士山が描かれているのは東に多いので、東西を合体させた感じです。昔ながらの佇まいもあり、このセットは想像を超え、銭湯好きからしたら理想郷のようだと思いました」
生田「僕もなんだか誇らしかったですね(笑)。京都の撮影所の中で一番の、あれだけ大きなオープンセットを建てたので、ほかの映画やドラマのスタッフさんたちが“なんだこれ!? ”と見に来ていました。セットにもスケールの大きさを感じましたし、もう本物の銭湯そのもので。目の前の道路はもちろん、銭湯の向かいにあるコインランドリーやラーメン屋まで作られていて、一つの町みたいになっていてビックリしました。鈴木監督は独特のカメラワークで、シンメトリーの画をよく撮られますが、監督にとっても理想郷だったんじゃないかな。横の壁も外れてどこからでもカメラが入れるので、お風呂を映した映像としても、あまり見ることの出来ないアングルがたくさんあると思います。実際に男湯・女湯に分かれていて、ちゃんとお湯も沸かすことができるんですよ。撮影が長引いてお湯がぬるくなってくると、“温かくしてください~”とお願いすると、ちょうどいい温度にしてくれて。スタッフさんが照明を変えている間など、よく岳くんと2人でお風呂に入ったまま、“昨日どこそこのラーメン屋に行った”みたいな話をしながら待っていました。お風呂が人を繋いでいくというテーマの映画ですが、まさに撮影現場でそれが起きていました。本当に楽しかったです」
「最も伝えたかったのは、日常の中の幸せに気づくこと」(小山)
――本作を観ると、銭湯のよさを改めて実感できますね。
生田「不思議ですが一緒にお風呂に入ると、心がつながった感じがするんですよね。裸の付き合いとはよく言いますが、やっぱり身も心もさらけだして相手の心の奥に触れたような気持ちになるんです。温泉ももちろんすばらしいですが、銭湯のほうがより密な感じがします」
小山「僕が最も伝えたかったのは、日常の中の幸せに気づくこと。人間はみな“ハレ(特別な非日常)”が幸せで、“ケ(普段の生活、日常)”は大変だと思いがちですよね。でも“ケ”のなかにも視点や考えを変えればすてきな幸せがある、というのが全体のテーマなんです。言うなれば、ハレ=温泉、ケ=銭湯。もちろん僕も温泉は大好きですが、行くこと自体が特別になる温泉ではなく、日常的に行く銭湯が最高の幸せ。番台のお母さんとやりとりしたり、親子の会話に耳を傾けてホッコリしたり。銭湯から出たら体がポカポカして、夜空に月が浮かんでいて、いろんな人の言葉で内側まで温まっていて、人生っていいな、と感じる。そんな幸せもあることに、1人でも多くの方に気づいてほしいです」
ジャケット:6万円(税抜)、パンツ:3万4000円(税抜)
semoh(セモー) 問い合わせ先:ビューローウエヤマ 03-6451-0705
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