ミシェル・ヨーが女性や観客、母へ贈る言葉「私を見て、私はここにいる」。主演女優賞受賞スピーチ全文&受賞後インタビュー
ミシェル・ヨー 主演女優賞受賞後インタビュー
――今回の受賞は、エンタテインメント業界におけるアジア人の表現、そしてエヴリンという役柄を通じてスクリーン上のアジア人の表現において、どのような意味を持つのでしょうか。
「これは歴史的な瞬間です。多様性と真の表現力を認め、受け入れてくれたアカデミーに感謝しなければなりません。これは私たちが長い間、懸命に取り組んできたことです。今夜、私たちはガラスの天井を破りました。カンフーで打ち砕いたのです! たくさんの人たちが、存在しないものとして扱われていると感じていたので、突破が必要でした。アジア系コミュニティだけではありません。これはアジア系コミュニティと、マイノリティとして認識されているすべての人のためのものです。私たちは、声を聞いてもらう権利があり、姿を見てもらう権利があり、テーブルにつくことができる平等な機会を得る権利があるのです。それが、私たちが求めているすべてです。私たちに機会を与えてください。私たちにその価値があることを証明させてください」
――有色人種の女性は、どんな空間においても、特にハリウッドでは、ある特定の役やある特定のグループに自分が属していないように感じられることがあります。女優業から一歩引いてみようと思ったことはありますか?また、そのまま女優を続けたことで、立場を得ることを恐れている人たちにどんなアドバイスを送りますか?
「決して恐れてはいけません。 それがあなたの情熱であり、愛であるならば、自分のために、自分が信じていることのために、自分がやりたいことのために、立ち上がる必要があります。そういうことだと思います。私は今日もこの世界にいます。40年経ってやっと、これを手に入れました。それは、私たちが戦いに勝つことを示します。そして、これは私たちが行っていることです。だから、あきらめないでください。決してあきらめてはいけません。あきらめた時点で、完全な損失となってしまいます。だから、そう、誰にもあなたを枠にはめさせないでください。誰にも、『あなたはもう全盛期を過ぎている』などと言われないように。私たちは誇りを持っているのだから。私たちは、自分たちの仕事を信じています。私たちは、自分たちの仕事を愛しています。だから、あなたの魂に火を灯し、道を歩んでください。信じること。夢を見る勇気を。夢を見なければ、それは不可能になります。不可能なことなんてありません。私を見て、私はここにいるのだから」
――『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がサウス・バイ・サウスウエストで初公開されてから、昨日でちょうど1年前です。昨年のあの日に戻って、今日のこの成功をどのようにご覧になりますか?
「かなりのマラソンでしたよね。正直言うと、サウス・バイ・サウスウエストに参加した時、初めて全員が揃いました。なぜ私たちは映画を作るのでしょうか? 映画館では、笑ったり泣いたり、どんなことでも一緒に楽しみ、分かち合う集団体験ができます。それが映画館で映画を見るマジックですよね。サウス・バイ・サウスウエストは、ストリーミングでもバーチャルでもない、初めて実際に開催される映画祭でした。みんなが来てくれて、私たちは本当に嬉しく、圧倒されました。映画には心血を注いでいるわけですが、上映した際に注目される保証があるわけでもありません。神に誓いますが、すべて観客のみなさんのおかげです。あなた方がおもしろい作品だと評判を立ててくれたからです。映画を観る機会がなかった人々に、ワイルドで奇抜で、とてもおもしろい映画だと思わせてくれたのです。みんなが話題にしている、ワイルドで奇抜なあの映画はなんだ?と、映画館に足を運ばせてくれました。話題から取り残されたくなかったからです。そういう意味で、みなさんに感謝しています。私たちの小さな宝石のような映画を後押ししてくれたのは、みなさんです。
そう、私たちはどきどきしていました。それでも、観客のみなさんは私たちを空へと押し上げ、世界は私たちを受け入れてくれました。だから、心の底から感謝します。みなさんが力を貸してくれたのです。この映画は、癒しのプロセスの一助となりました。この映画は、コミュニケーションの助けとなりました。この映画は、夫婦であれ、娘と母親であれ、娘と父親であれ、家族間で心を開かせるのに役立ちました。そして、私たちは決してお互いについてあきらめません。だから、私たちを助けてくれたみなさんに感謝します」
――あなたはスピーチの中で、母親がいかに重要であるかと語り続けています。いま、あなたは、小さな少年少女たちのヒーローとなりました。あなたがお母さんから言われたことで、この旅を通して心に刻んでいたことはなんですか?
「母親は私たち全員にとってとても重要な存在だと思います。なぜなら、母親がいなければ、私たちは誰もこの部屋に座っていなかったからです。一番大切なのは、母が私に自信を与えてくれたことです。愛について教えてくれました。優しさと思いやりについて教えてくれました。私はあまり得意ではないので…。実は最近、母から頼まれたのは、アカデミー賞にパンツで参加してはダメということでした。母親がすることは、常に『もっとよくなりなさい』と気づかせてくれることだと思います。それは、あなたがよりよい人生を送れるように、よりよい人間になるようにと願っているからです。それが母親にとっての最終目標なのです」
文/平井 伊都子