都市ボーイズが徹底解説!シャマラン監督『ノック 終末の訪問者』、呪いにもなる“運命”の重なり
「4人の訪問者の出会いは、“運命”だと思っています」
全国で怪談や不思議な話を収集しているはやせに、本作では実際の話とリンクする部分はあったのかと尋ねた。「ビジョンを見た4人が集まるというくだりは、僕が実際に聞いた話にも通じる部分がありました。ある神社の御神木に2つの家族がやってきたそうです。この御神木近くにかわいいたぬきがいると夢で見たという家族と、たぬきを見てみんなで笑う夢を何度も見たという家族。終末でもなんでもないけれど、いわゆる同じビジョンを見て導かれるように神社にやってきた2つの家族の話です。その神社は都内にあるごく普通の神社で、たぬきが祀られているわけでもなんでもなければ、2つの家族に接点もない。だけど導かれるように同じ場所にやってきたわけです。これは双子しばしば起きるとされる現象によく似ていると思います。小さいころ離れ離れになった双子が、大人になりお互いを探そうと思ったら実は目の前に住んでいたなんて話は、フィクションではなく現実にあるんです。これはもう“奇跡”ですよね」。
訪問者4人が目的のために集まったのも、はやせは“奇跡”と捉えたのだろうか。「導かれ集まった人たちが共になにかを始める…というエピソードは歴史を紐解いていってもたくさんあります。例えば『三国志』だってそうで、劉備、関羽、張飛はたまたま同じ場所に集まってきましたよね。負の奇跡が重なると“呪い”になるのですが、いい奇跡の重なりだと“運命”と呼んだりします。僕はあの4人の訪問者の出会いは、運命だと思っています」。
ちなみにはやせが好きなシャマラン監督作品は『ヴィジット』(15)。「本作同様、家のなかだけで起きる話。ホラー映画はすごく好きで、なかでも家のなかで起きる恐怖を描いたものが好きです。おうち時間を経験した僕らだから、より『ノック』の怖さが分かるようになった気がします。コロナ禍で半分家に閉じ込められたような状況でノックされたら相当恐ろしく感じると思うし、まずドアを開けることはない。いまはいろいろと緩んできているから、ノックを怖いと思ってもドアを開けてしまうと思うんです。それがすごくリアル。ノックから始まる恐怖はコロナ禍を経験する前と後では怖さの意味合いが変わった気がします」。
「一つ、“家”にまつわる心霊的な話をすると、いま世界的に事故物件というワードが盛り上がっていますが、特にタイとイギリスがアツいらしくて。イギリスは日本とは事故物件の捉え方が違っていて、事故物件の方が家賃は高くなります。理由は亡くなった人の分の運ももらえるから。心霊話でそんな違いを見るのもちょっとおもしろいですよ」と、興味深い情報も教えてくれた。
これまでシャマラン監督が表現してきたオカルト的な物語の、一つの集大成といえる本作。ゲオでは『ノック 終末の訪問者』の公開を記念して、過去作を振り返る「春のシャマランまつり」が開催中。対象作を全国のゲオでレンタルすると、もれなくコラボクリアファイルがプレゼントされる。対象タイトルは『ヴィジット』、『スプリット』(16)、『オールド』、『アンブレイカブル』(00)、『ミスター・ガラス』(19)で、キャンペーン期間は4月18日(火)まで。新作の鑑賞と合わせてぜひ、シャマラン監督がこれまで紡いできた様々な物語にも触れていただきたい。
取材・文/タナカシノブ