心躍る軽快な冒険ファンタジー『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』は映画として大いに見る価値あり!

コラム

心躍る軽快な冒険ファンタジー『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』は映画として大いに見る価値あり!

たとえプレイしたことがなくても、多くの人が一度は「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(通称、D&D)の名を聞いたことがあるはずだ。RPGの元祖とも言われるテーブルトークゲームなだけあってその存在は世界中で知られ、様々なカルチャーにも浸透。かつて『E.T.』(82)の序盤で少年たちがリビングでD&Dらしき遊びに興じている姿が映しだされ、近年ではNetflix配信のドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」内の展開でも注目を集めた。そんな有名ゲームを原作に、新たな切り口で映画化したのが『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(公開中)だ。

これがなんとも快活で思い切りのいいアクションファンタジーに仕上がっていて楽しめた。ゲームの知識がなくてもご心配なく。筆者もまったくの未経験ながら、冒頭の監獄シーンからあれよあれよという間にのめり込み、2時間14分があっという間。なによりも映画として「大いに見る価値あり!」と結論づけずにいられない一作なのだ。

クセ者ぞろいのパーティが危険なダンジョンを冒険したり、クリーチャーと戦ったり、世界を脅かす邪悪なヴィランの陰謀にも立ち向かう!
クセ者ぞろいのパーティが危険なダンジョンを冒険したり、クリーチャーと戦ったり、世界を脅かす邪悪なヴィランの陰謀にも立ち向かう![c]2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. [c]2023 HASBRO.

クリス・パインとミシェル・ロドリゲス。それぞれの魅力が詰まったキャラクター

注目ポイントを挙げるなら、それはRPGでよく用いられる言葉である「パーティ」のおもしろさだ。中心になるのはエドガンという“盗賊”なのだが、この男、昔は正義のために身を捧げる勇敢な人間だったものの、いまではどういうわけか金銀財宝をねらうアウトローに成り果てている。

興味深いのは、パーティのリーダー格であるエドガン自らは率先して戦うわけではないところ。手にするアイテムからしてそれは剣ではなく、なぜか楽器だ。勇猛果敢に敵陣へ突っ込むのではなく、まずは作戦を立案してあれこれと指示を出す…それが彼の役目らしい。

彼を演じるクリス・パインといえば、「スター・トレック」シリーズでチームを統率する若きカーク船長を熱演し、『ワンダーウーマン』(17)では圧倒的ヒロインの相手役として精悍さを発揮した。エドガン役はそれらを足して二で割ったような、まさにお得意の役柄と言ったところか。

カリスマ性があり、様々な作戦を立案してはチームを指揮するエドガン
カリスマ性があり、様々な作戦を立案してはチームを指揮するエドガン[c]2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. [c]2023 HASBRO.

一方、パーティいちの腕っぷしの強さを誇るのが“戦士”のホルガ。彼女はとにかく無骨で、いざ自分の見せ場がやってくると、ニヤリと笑みを浮かべるや敵を怒濤のごとくなぎ倒してしまう。その勢いは圧巻だ。けれど強いだけではないのが彼女のいいところで、ひときわ情に厚く、自分が部族から追い出された過去を持つからか、弱き者に優しい。

これを演じるのはミシェル・ロドリゲス。思えば「ワイルド・スピード」シリーズから『アバター』(09)に至るまで、彼女が演じる役柄はいつも信念を曲げず、情熱を失わない分厚い魂が脈打つキャラばかりだった。本作でも「こんなロドリゲスが見たかった!」と素直に思える魅力が十二分に刻印されているのだ。

エドガンが信頼する相棒で、無敵の強さと優しい心を持つホルガ
エドガンが信頼する相棒で、無敵の強さと優しい心を持つホルガ[c]2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. [c]2023 HASBRO.

個性あふれる若手キャストたちにも注目!

通常の大作ならパイン&ロドリゲスという油の乗り切ったタッグがいるだけで貫禄は十分だが、パーティと呼ぶにはもっと多彩なカラーが必要だ。その点、なかなか実力を発揮できずにいる魔法使いのサイモン(ジャスティン・スミス)や、頑張り屋で危険を顧みず突き進む自然の化身、ドリック(ソフィア・リリス)といった20代の若手チームが参戦するとグッとおもしろさの層が増していく。さらに、真面目すぎるのが最大の強みであり弱点でもある騎士ゼンクを、ドラマシリーズ「ブリジャートン家」で名を馳せたレゲ=ジャン・ペイジが好演する。


高いポテンシャルを持つものの、自信がなくて実力を発揮できずにいる魔法使いのサイモン
高いポテンシャルを持つものの、自信がなくて実力を発揮できずにいる魔法使いのサイモン[c]2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. [c]2023 HASBRO.

彼ら5人は仲間と呼ぶにはあまりにチグハグで、足並みもそろわないことばかり。しかし、冒険を重ねるにつれ、お互いのことを理解し合い、まるで家族かなにかのように心を一つにしっかりとまとまっていくところが微笑ましくて頼もしい。

様々な獣や鳥に変身する能力を持つ自然の化身、ドリック
様々な獣や鳥に変身する能力を持つ自然の化身、ドリック[c]2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. [c]2023 HASBRO.

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