ミニチュア写真家、田中達也が表現者になって気づいた「スター・ウォーズ」のスゴさ…「子どもでも絵に描けそうなわかりやすいフォルムがすばらしい」
「惑星ホスの戦いが好きで何回も繰り返し観ました」
そんな田中と「スター・ウォーズ」の出会いは、小学生の時にビデオで観た『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)だった。「冒頭の惑星ホスの戦いが好きで、何回も繰り返し観ました。自分のなかのベストというか、原体験ですね。そこから『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を振り返って、シリーズを観始めました」と当時を思い返す。それ以来、「スター・ウォーズ」は身近にあるのが当たり前の存在だという。「一時期だけハマるんじゃなく、すべての基本にある感じ。例えば、レゴで飛行機を作るんだったらX-ウイングみたいにしようとか、SF的な発想をするベースとしていつも『スター・ウォーズ』がありました」。
現在は仕事柄、たくさんのフィギュアをストックしている田中だが、その原点も「スター・ウォーズ」にあったようだ。「『スター・ウォーズ』のフィギュアや模型はかなり持っていました。大好きなAT-ATなどのウォーカー系や、X-ウイングやミレニアム・ファルコン号などメカ類が多かったですね。一番ハマったのはペプシコーラのボトルキャップで、コンプリートするくらい集めていました。ボトルキャップはいまも残っているので、土台のキャップ部分を外してたまに作品に使ったりもしています」。
「大人になってR2-D2のシンプルな形のよさに気づいたんです」
ミニチュア写真家という表現者となった現在、特に感じる「スター・ウォーズ」の魅力としてキャラクターの“フォルム”を挙げた。「どのキャラクターもフォルムがわかりやすいところがすばらしいと思います。BB-8にしても丸に半円を乗せただけで、とても覚えやすい。一度見たら子どもでも絵に描けそうな感じをねらってデザインされているのがスゴいんですよね」と、シリーズが世界中に広がった要因のひとつとして、わかりやすさや親しみやすさではないかと考察する。「子どものころは、なぜR2-D2が空き缶みたいな形なのか疑問でした。もっとかわいくすればいいのに…と思っていましたが、大人になってシンプルな形のよさに気づいたんです。これなら浸透しやすいし、もっと簡略化してもどのキャラかわかるのでアイコンにしやすいんです」。
そんなデザインや意匠の伝統は「マンダロリアン」でも活きている。「Tの字をモチーフにしたようなヘルメットなど象徴的なデザインをたくさん取り入れていますよね。絵で描きやすいシンプルなデザインのほかにも、ハードにしすぎない様式的な戦い方や親しみやすくて覚えやすいテーマ曲もそう。いろいろな作戦を立てるけど、ここ一番でヘマをするユーモアをはさむ“お約束”も入っています(笑)。『スター・ウォーズ』の様々な魅力が、『マンダロリアン』でもちゃんと押さえられているんです」。
「フェネック・シャンドを演じていたミン・ナさんがたくさん“いいね”してくれました」
いまやInstagramで370万人を超えるフォロワーを持つ田中。そこには意外なフォロワーもいるという。「『マンダロリアン』や『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』で殺し屋のフェネック・シャンドを演じていたミン・ナさんです。いつからフォローしてくれていたのかは定かではありませんが、『ボバ・フェット』が配信され始めたころにたくさん“いいね”してくれて、そのタイミングでフォローしてくれていたことを初めて知りました。フェネックでなにか作ってくれというサインかな?と思ったんですが、残念ながらいまのところ、僕の作品にはまだ登場させられていないです(笑)」と明かす。発想力や表現力はもちろん、ピスタチオに乗ったグローグーの人形は3Dプリンタで自作するなどクオリティにも高いこだわりを持つだけに、公式とのコラボも遠くないのではないだろうか。
「『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』へとつながる流れが見たい」
現在は、毎週水曜に最新話が配信されるシーズン3をなによりも楽しんでいるという田中が、今後の「マンダロリアン」に期待しているのはシークエル(EP7~9)とのリンクだという。「現在描かれている世界から『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』へとつながる流れが見たいですね。ファースト・オーダーがどうのように大きくなっていったのか、なぜカイロ・レンのような存在が生まれたのか、シークエル・トリロジーで描かれていない部分はたくさんありますから」。
そういう意味で、シーズン2でのルーク・スカイウォーカーのサプライズ登場は感激だったと振り返る。「ルークが出てきたことで期待が高まりましたし、うっすらクローン絡みの話も出てきています。かつて『クローン・ウォーズ』がプリクエル(EP1~3)の物語を補完していたように、『マンダロリアン』にも期待しています。ぜひBB-8あたりに登場してほしいですね」。
取材・文/神武団四郎
ミニチュア写真家・見立て作家。1981年熊本生まれ。2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。国内外で開催中の展覧会、「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」の来場者数が累計200万人を突破(2022年9月現在)。2020年ドバイ国際博覧会 日本館展示クリエーターとして参画。Instagramのフォロワーは370万人を超える(2023年3月現在)。著書に「MINIATURE LIFE」、「Small Wonders」、「MINIATURE TRIP AROUND THE WORLD」、絵本「くみたて」、「おすしが ふくを かいにきた」など。
公式サイト「MINIATURE CALENDAR」
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