ワーナーの象徴はなぜ給水塔?創立100周年を迎えたワーナー・ブラザースにまつわる豆知識
4月4日にスタジオ創立100周年という節目のタイミングを迎えたワーナー ・ブラザース。その長い歴史のなかで数々の名作を生みだしてきたことは周知の通りだが、会社については知らないことも多々。ここでは知っているようで意外と知らない豆知識をまとめてみた。
ワーナー・ブラザースの本当の始まりは1905年?
ハリー、アルバート、サム、ジャックの4兄弟によって設立されたワーナー・ブラザース。兄弟はポーランドから北米カナダへの移民であり、出生名字はワーナーではなくWonsal。カナダに移住してから名前と共に英語風のワーナーへと改名した(末っ子のジャックはカナダに移住してから生まれた)。
兄弟の三男サムは映画に可能性を見いだすと、家族を説得しエドウィン・S・ポーターの『大列車強盗』(1903)のコピーとプロジェクターを購入。カーニバルが開催される町の空き店舗で、映画の上映をするようになったという。
そして1905年からは劇場を経営するようになり、そのためこの年をワーナー・ブラザースの始まりと位置付けることもできる。その後は映画技術の特許を持っていたエジソンによる搾取といった業界での浮き沈みを味わい、ほかの同業者と同じくニューヨークからハリウッドへと移転。ワーナー・ブラザースをスタートさせた。
映画のサウンドシステムの開発にも尽力
ハリウッド黎明期には、小さなスタジオに過ぎなかったが、世界最初の長編トーキーと言われる『ジャズ・シンガー』(27)や『紐育の灯』(28)などトーキー映画に活路を見いだし、大手スタジオへと成長していった。そのベースとなっているのが、AT&Tの製造部門ウェスタン・エレクトリック社と共同で発表した「VITAPHONE(ヴァイタフォン)」というサウンドシステムだ。
このシステムはフィルムカメラと同期したディスクに音声を録音し、また再生もできるというもの。比較的安価なシステムのため、劇場にも取り入れやすいと脚光を浴びたが、フィルムに音声トラックを焼き付けるムービートーンの出現により廃れることに。
なおトーキーの開発に最も熱心だったのが、ワーナー・ブラザース始まりのキーマンともいえる三男サム。しかし、その熱意が裏目に出たのか、『ジャズ・シンガー』公開前日に過労によってこの世を去ってしまった。
ワーナーを象徴する給水塔は昔のハリウッドではマストの設備だった
映画のオープニング映像にも登場するワーナーの給水タワー。これはスタジオ内に1927年に設立されたもので、その高さは実に133フィート(約41メーター)に及び、いまは使われていないがかつては10万ガロン(約38万リットル)の水を貯水していたという。
このタワーがスタジオ内の消防署の隣にあった(1933年のロングビーチ地震をきっかけに移動)ことが示しているように、昔のハリウッドスタジオでは多くの照明が焚かれ、燃えやすいフィルムを使用していたため、火災のリスクが高く、このような給水塔は一般的な設備だった。
ちなみに、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮のアニメ「アニマニアックス」は、1930年代にこのタワーに閉じ込められた3兄妹ヤッコ、ワッコ、ドットが、1990年代にタワーから脱出し世界中で騒動を巻き起こすという設定で、このことからも給水タワーがワーナーの象徴となっていることがわかる。
ファンファーレはあの名作の主題歌をアレンジしている
ワーナー作品のオープニングで印象的なのが、ロゴが映しだされる際に流れる美しいメロディのファンファーレ。壮大なオーケストラのサウンドが一気に鳴り響くこの楽曲は、短いがインパクト抜群で観客の心を高揚させてくれる。
実はこれ、ワーナー屈指の名作『カサブランカ』(42)の劇中でドゥーリー・ウィルソン演じるサムが歌っている「As Time Goes By」のアレンジバージョン。1999年からファンファーレとして使用されている。
なおこの楽曲へと変更される前は、『カサブランカ』でも音楽を担当したワーナー音楽部門で最も有名な作曲家マックス・スタイナーによるファンファーレが長らく使用された。この楽曲はラッパのサウンドなど「As Time Goes By」よりも勇敢な印象を受けるものだ。
「ルーニー・テューンズ」は音楽の宣伝のために誕生した
アニメーションのジャンルでも数々のヒットを飛ばしてきたワーナーの代表作「ルーニー・テューンズ」。バッグス・バニーやダフィー・ダック、トゥイーティーにポーキー・ピッグといった有名キャラクターで知られるこのシリーズは、もともとレコード会社などを買収したワーナーの音楽を宣伝するために作られた短編アニメで、映画の前座として上映されていた。
そのため初期のタイトルには「MUSICAL CARTOON」の言葉が入れられており、そのテイストは音楽中心のミュージカル。漫画、アニメを意味するToonを用いた「Looney Toons」と勘違いされることが多いが、楽曲を意味するTuneを用いた「Looney Tunes」が正しい名称。また姉妹シリーズには「メリー・メロディーズ」というものがある。
今回紹介した知識はワーナー・ブラザースの長い歴史のほんの一部。記念すべき節目を経て、さらなる未来を切り拓いていくであろうワーナーの今後にも期待したい。
文/サンクレイオ翼