北野武監督、構想30年の最新作『首』今秋公開が決定!出来に自信、「死を前にした、男同士の関係がうまく描ければ」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
北野武監督、構想30年の最新作『首』今秋公開が決定!出来に自信、「死を前にした、男同士の関係がうまく描ければ」

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北野武監督、構想30年の最新作『首』今秋公開が決定!出来に自信、「死を前にした、男同士の関係がうまく描ければ」

北野武監督の最新作にして構想に30年を費やした映画『』が、2023年秋に全国公開されることが決定。4月15日に東京都内で完成報告会見が行われ、北野監督をはじめ、西島秀俊加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋、KADOKAWA代表取締役社長の夏野剛が出席した。

『その男、凶暴につき』(89)や『HANA-BI』(98)、『座頭市』(03)、『アウトレイジ』3部作(10〜17)など衝撃的な作品を次々と発表し、世界中の映画ファンを魅了してきた北野監督の最新作となる本作。

【写真を見る】北野武監督の最新作『首』のビジュアルがお披露目!
【写真を見る】北野武監督の最新作『首』のビジュアルがお披露目![c]2023KADOKAWA [c]T.N GON Co.,Ltd

北野監督が初期の代表作の1本『ソナチネ』(93)と同時に構想し、30年もの長期にわたって温めていた作品となり、“本能寺の変”を一大スケールで描く。信長の跡目をめぐるさまざまな欲望と策略が入り乱れ、本能寺の変を戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の運命と共につづるなかでは、北野監督自らが本能寺の変を策略する羽柴秀吉を演じる。また信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島、狂乱の天下人である信長を加瀬、軍師の黒田官兵衛を浅野、秀吉の弟の羽柴秀長を大森が演じ、北野組初参戦となった獅童は、秀吉に憧れる百姓の難波茂助に扮する。撮影は、2021年4月から9月に行われた。

「成功したと思っている」と自信
「成功したと思っている」と自信

豪華なキャスト陣と共にステージに上がった北野監督は、「時代劇はよく観るのは、NHKの大河とかなんですけれど、どれも人間の業や欲、裏切りがあまり描かれていない。自分としてはおもしろくない」と北野節をお見舞いしながら、「自分が撮ればこうなるという発想でやろうと思った。結局だいぶ苦労した」と告白。


「どうにかできあがった。今度の映画ができたのは、すばらしい役者さん、スタッフのおかげ」と感謝を伝えた。戦国時代をまた新たな視点で描く物語となるが、いろいろな小説や歴史書などを読むなかで、北野監督は「(本能寺の変の)『裏で秀吉がかなり動いていたな』という考えが、この映画の構想になった。いずれこれを映画化してやろうと思っていた」、さらに「死を前にした、男同士の関係がうまく描ければと思っていた」と明かした。

西島秀俊「とても幸せな毎日だった」としみじみ
西島秀俊「とても幸せな毎日だった」としみじみ

この日の登壇者のなかで、中村獅童以外は全員が北野組に参加経験がある。西島は「『Dolls(ドールズ)』以来」だと口火を切った西島は、「自分が成長した姿を見せようなんてことは、絶対に考えないように。無欲に」と笑顔を浮かべ、「監督の頭のなかにある作品を現実の世界に出すために、自分の力を出し尽くそうと毎日臨んでいた。とても幸せな毎日だった」としみじみと語る。「『アウトレイジ』シリーズでも、かなり自分から遠い役を演じて大変だった」と振り返った加瀬は、「今回も難しいだろうなと思って参加しましたが、案の定大変な目に遭いました」と苦笑い。獅童は「若いころから北野監督の作品が大好き。いつか出演させていただきたいというのは、長年の夢でした。南朋さんに会うたびに『監督の映画に出たいんだけど、どうしたらいいんだ』と話していた」と念願かなっての参戦。「いままで演じたことのないような役。監督によって新しい中村獅童を引き出していただいた。感謝の気持ちでいっぱいです」と喜びをあふれさせた。

軍師、黒田官兵衛を演じる浅野忠信
軍師、黒田官兵衛を演じる浅野忠信

『座頭市』でも北野監督とタッグを組んでいた浅野は、「時代劇でまた呼んでもらえたことが、本当にうれしい」と感激しきり。「官兵衛はすごく頭のいい人なので、何度も何度も台本を読んだことを覚えています」と振り返った。「『Dolls(ドールズ)』や『アキレスと亀』『アウトレイジ』でもお世話になっている」という大森は「何年かに1回呼んでいただいて、北野組に帰ってくることでモチベーションを保っているようなところもある。今回は(北野監督の)常に横にいる役でもあったので、すごく濃厚で楽しい時間を過ごしました」と北野監督への愛情をにじませていた。

それぞれが北野監督作品への出演に対する喜びを口にしていたが、北野監督もキャスト陣に最敬礼。「獅童さんは、芝居が好きな人だなと思っていた。いずれ使うことにはなるだろうとは思っていた。西島くんは、『Dolls(ドールズ)』で最初に会った。何年経っても、いまだにロシアでは『Dolls(ドールズ)』が有名。加瀬くんは、みんなのイメージではない役をやらせたら力を出す人だなと。浅野くんは、映画一筋の人。今度は浅野くんでバカバカしい映画を。大森くんは、とても器用」と称えながら、「おかげさまで、北野組は役者さんにあまり断られることがない。声をかけるといろいろとスケジュールを調整してくれる。たいしてギャラが出ないのに。ありがたい」と周囲を笑わせていた。

西島秀俊、加瀬亮もうれしそうな笑顔を見せた
西島秀俊、加瀬亮もうれしそうな笑顔を見せた

キャスト陣からは、どのキャラクターもヒーローとして描かれるのではなく、残酷なシーンを交えながら戦国時代の生々しさが活写されていることや、スピード感と集中力のある現場だったと語られるひと幕もあったが、とりわけ印象に残っていることとして、西島は「監督が『ワンシーン、追加をしたい』とおっしゃって、大きなセットを組んで撮影をした。新しいシーンが追加されてうれしくてワクワクしながら行ったら、ワンカットで終わった(笑)。こんなセットを使って、引き(の画で)で撮るんだ」と驚いたという。北野監督は「大島渚さんに散々、『アップを撮るのは、下手な監督だ』と言われた。黒澤(明)さんや大島さんと話したことが、印象に残っている。『大事なシーンは引くべきだ』とよく言われた。『これだ!と寄って、印象付けるのは、下品だ』と。それが癖になっている」と貴重な裏話を披露。加瀬や獅童が北野監督の作品には「品がある」と唯一無二である理由を話していたが、その秘密の一端が浮き彫りになった。

また夏野社長は「製作費、15億円をかけた大作です。北野監督が『いつか映画化したい』と長年構想し、ご自身で原作小説と脚本を書き上げられた。そのような思い入れのある作品で、北野監督とご一緒できることが大変うれしい。スケール感と、悲劇性、喜劇性をあわせ持った、いままでの時代物とはまったく毛色の違う稀有な作品。北野監督の才能とオリジナリティがあふれた作品」と熱弁し、「日本国内にとどまらず、世界に向けたヒットも見据えた大作映画として取り組んでいく」と力強くコメント。

北野監督は、あらゆる関係者の褒め言葉も「俺は芸人だから、褒めているのが、嘘か本当かがよくわかる。そのなかでもこれは大多数が本当に褒めているなという感じがわかる」といい、「成功したんだと思っています。大ヒットまで図々しいことは言いませんが、ヒットしていただいて、あと何本か撮れるような状態になればいいなと思っています」と自信をのぞかせると共に、さらなる意欲を語っていた。本作は、第76回カンヌ国際映画祭の「カンヌ・プレミア」部門に出品されることも決定した。

取材・文/成田おり枝

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