安藤政信、25年の歩み。指針となった北野武監督の言葉「武さんが教えてくれたことを、ずっと考え続けてきた」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
安藤政信、25年の歩み。指針となった北野武監督の言葉「武さんが教えてくれたことを、ずっと考え続けてきた」

インタビュー

安藤政信、25年の歩み。指針となった北野武監督の言葉「武さんが教えてくれたことを、ずっと考え続けてきた」

北野武監督の『キッズ・リターン』(96)でスクリーンデビューを果たしてから25年が経ち、唯一無二の俳優として、数々の映画やドラマで圧倒的な存在感を発揮している安藤政信。短編映画オムニバスプロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」では、初めての監督業にチャレンジ。短編映画『さくら、』を作り上げ、また新たな一歩を踏みだした。「きちんと人と向き合って、リスペクトしながらものづくりをしたい」と語る安藤が、作品にも人にも真摯な歩みを続けてこられたのは、キャリアのスタートに出会った北野監督のおかげだという。「武さんが教えてくれたことを、ずっと考え続けてきた。すべては最初から武さんが教えてくれていた」という安藤が、初監督作に込めた想いを語った。

「(山田)孝之が考え、動こうとしている時に僕に頼んでくれたのならば、僕はそれをまっとうしたいと思う」

『さくら、』ほか、全9作品の短編映画を上映する『MIRRORLIAR FILMS Season1』は公開中
『さくら、』ほか、全9作品の短編映画を上映する『MIRRORLIAR FILMS Season1』は公開中[c] 2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

「MIRRORLIAR FILMS」は、伊藤主税(and pictures)、阿部進之介、山田孝之らが発起人となり、クリエイターの発掘、育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト。“変化”をテーマに、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36名が監督した短編映画をオムニバス形式で4シーズンにわけて製作、公開。そのシーズン1のひとつとして、安藤の監督した『さくら、』が登場する。

【写真を見る】スクリーンデビューから25年、ますます魅力を増していく安藤政信の撮りおろし
【写真を見る】スクリーンデビューから25年、ますます魅力を増していく安藤政信の撮りおろし撮影/宮﨑健太郎

山田から声がかかり監督業に乗りだしたが、写真家としても活躍するうえに、「いろいろな監督とご一緒してきて、たくさんの愛情をもらってきた。なんでこの監督はこんなに周囲に愛されるんだろうと思うような人もたくさんいて、憧れもあった」という安藤だけに、「もともと映画監督をやってみたいという気持ちは持っていた」という。

山田が初プロデュースを手掛けた『デイアンドナイト』(19)にも役者として呼ばれるなど、山田の安藤への信頼は厚い。安藤は「孝之には本当に感謝しています」と口火を切り、「『デイアンドナイト』で初めてプロデュース業という新しい挑戦をするという時にも、孝之は僕に声をかけてくれた。『デイアンドナイト』の宣伝活動をしている時に、孝之から『映画を撮りませんか?』という話があったんです」と述懐。「孝之が考え、動こうとしている時に僕に頼んでくれたのならば、僕はそれをまっとうしたいと思う。さらに引き受けたのならば、これで終わりにするのではなく、今後の出会いにつながるようなものにもしたいと思った」と語る。


監督業に挑むにあたっては、「緊張と不安しかなかった」とも。「みんなの感性や人間性、スキル、それらすべてをもらって一本の映画にするのが監督としての仕事。みんなの気持ちをもらっているわけだから、15分という短編映画の限られた時間のなかで、絶対にいいものを見せたいと思いました。そういった責任は強く感じました」と覚悟したという。

「撮影の5日間は、とにかく楽しもうと思った」

『さくら、』で安藤は、山田を主演に迎え短編映画を撮りあげた。主人公(山田)は、友人A(安藤)の恋人(森川葵)と秘密の逢瀬を重ねていたが、ある日突然、友人Aが亡くなる。順調に思われていた彼らの友情が、次第に歪んでいくのだ。生から死への“変化”、死をきっかけとした人間関係の“変化”を描くこととなったが、安藤は「出会いと別れ、人間が本能的に求めてしまうことを、激しい感情と共に描きたい」と思っていたそうで、脚本家の木舩理紗子とセッションを繰り返したという。

山田孝之と森川葵の激しい感情のぶつかり合いを目撃できる『さくら、』
山田孝之と森川葵の激しい感情のぶつかり合いを目撃できる『さくら、』[c] 2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

今年4月、5日間をかけて金沢で撮影を敢行した。撮影当日の朝を迎えた心境を聞いてみると、安藤は「とにかく楽しもうと思った」とにっこり。「その日を迎えるまでが、めちゃくちゃ大変だったんです!脚本を作りあげるまでもそうだし、ロケ地や衣装についても、たくさんセッションをしてきた。思うように伝わらないことや、ぶつかり合うことだってあったし、急な変更も生じたりと、いろいろありました」となにが起きるかわからないのが映画制作の過程。

だからこそ「撮影の5日間を楽しまなかったら、これまでやってきたことがすべてムダになってしまう。そんなことをするわけにはいかない」と意を決し、「それに監督の僕が腐ってしまったら終わりだから。当日の朝は、なんだかすごくシンプルな考えになっていたような気がします。声をかけてくれた孝之のためにも、楽しもうと思った」と話す。

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