ARMYライターがレビューする「SUGA: Road to D-DAY」。鑑賞後に込み上げるSUGAへの感謝
坂本龍一とも対面。世界的アーティストとの貴重な交流シーン
SUGAはその後、「Boy With Luv」でコラボしたホールジーの元へ。彼女の手でホールジーとお揃いのヘアスタイルにしてもらい、その姿を確認して爆笑する姿が大変微笑ましい。SUGAは「僕たち(BTS)を嫌いな人がいることも知っています。でも、そういった評判や評価を抜きにして認めてくれる」と、ホールジーへの厚い信頼を言葉にした。さらにBTSファンを公言しているアンダーソン・パークの元を訪れ、フィーチャリングの約束を交わした。
筆者が個人的にとてもうれしかったのが、「In the SOOP」BTS ver.の映像が流れたことだ。「In the SOOP」とは、メンバーたちが森の中でリラックスして自由時間を過ごすリアルバラエティ番組。BTSのほか、Seventeen ver.も過去に放送されている。当時SUGAは、キャンピングカーにひとりでこもり作曲活動を行う時間が多かった。その時に制作していた楽曲の正体を、まさか3年越しに答え合わせできるなんて…!キャンピングカーの中でJIMINに「AMYGDALA」を聴かせて、曲に込めた想いについて熱く語る姿は必見だ。
ちなみに「In the SOOP」ではメンバー同士で番組のテーマ曲を制作することになるのだが、SUGAが嬉しそうにキャンピングカーから音楽機材を持ち出し、メンバーの集まる部屋へ走ってやってくるシーンは、BTS愛と音楽愛が伝わる名シーンのひとつだ。まだ見たことない方はそちらもぜひ、観ていただきたい。
SUGAの音楽旅は東京へ。アーティストとして大きく影響を受けた坂本龍一氏との対談シーンにはとても心を打たれた。緊張しつつも、終始嬉しそうに坂本氏と音楽について話すSUGAを見ていると、こちらもつい笑顔になる。SUGAのピアノ演奏を優しい眼差しで見つめ、また、「あなたのために」とSUGAに向けてピアノを弾く坂本氏に、思わず涙がこぼれた。坂本氏の音楽にインスパイアされて作り、坂本氏とThe Roseのキム・ウソンがフィーチャリンングで参加した「Snooze」は、後輩に伝えたい内容が込められているという。優しいピアノが奏でるメロディとは裏腹に、後輩へ向けたメッセージは決して綺麗事ではなく、アイドルとしてつらい経験を乗り越えてきた彼だからこそ書ける内容で、私たちの胸にも深く突き刺さる。
「Haegeum」に込めた想いにもグッときた。「情報社会からの解放」「人目を気にせず好きに生きなきゃ」と話すように、「Haegeum」の歌詞は現代の情報社会を生きる私たちに非常に刺さる内容だ。「アイドルは犯罪行為や物議を醸すような行為をしていなくても、些細なことで怒られたりする。反発はしないけど納得できませんでした。それで、MVにタバコを吸う場面があります。禁止を解除したかった」というSUGAの想いを知ってから改めてMVを見ると、タバコを吸っているシーンの感じ方もまったく違ってくる。
「ファンが待っていると思うから音楽を続ける」
「僕の数万の思考を整理して歌詞にしています」と話すように、アルバム「D-DAY」は歌詞も曲のジャンルも多彩で、改めてSUGAの表現の幅広さに脱帽する。SUGAだけではなくBTSメンバー全員に言えることだが、彼らはいつも自身の思考や経験を、正直にまっすぐに、とても素直な言葉にして私たちに届けてくれる。だからこそ、どの楽曲も私たちの心を掴んで離さないのではないだろうか。
本編では、「仕事としてしか音楽を扱えないことが最近つらくなってきました」と、自身の苦悩を語る場面も。「それでも僕やBTSのファンが待っていると思うから音楽を続ける」という彼の言葉に、またしても魅了される。スティーブ・アオキが「SUGAはBTSとソロの2つの顔があり、いつも期待以上のことをやってくれます。だから彼には最高を期待するのです」と語っていた。いつでも私たちの期待以上の、そして最高な曲を届けてくれるSUGAに最大の敬意と感謝の気持ちを込めて、今日もアルバム「D-DAY」を聴こうと思う。
文/紺野 真利子