『レット・イット・ビー ~怖いものは、やはり怖い~』青木涼&山岸芽生が、ベテラン俳優・並樹史朗から受けた刺激とエール
「一人じゃない。スタッフ、共演者の皆さんとの一体感を味わえる現場でした」(山岸)
――並樹さんは、本シリーズに初参加となり、圭治の恩師である武藤教授役を演じられました。脚本を読まれた印象を教えてください。
並樹「難しい映画なのかな?と思ったんですが、まず最後まで通して2回ほど脚本を読ませていただいて、一人の純真な、素敵な青年の生き様を通して、魂の救済やその原質を映像化するお話なんだなと理解しました。僕が演じた武藤教授は高齢なわりには、未完成な人間なのかなという印象です。大人子どもというか、自分の世界だけを見ていたい人というイメージですね」
――青木さんと山岸さんは、ベテラン俳優の並樹さんとのご共演はいかがでしたか?
青木「大先輩ですので、並樹さんとご一緒させていただく初日はとても緊張していました。でも実際にお話しさせていただくと、並樹さんはものすごくチャーミングな方なんですよ。たぶん僕が緊張していることに気づいてくださっていて、並樹さんからたくさん話しかけてくださいました。並樹さんがいらっしゃると、現場にいつも笑いが生まれるし、盛り上がるんです。ある日、並樹さんからお菓子のビスコをいただいて、数あるお菓子からビスコをチョイスする並樹さんも、とてもステキだなと思いました」
並樹「ビスコのプレーン味だね(笑)!」
青木「そうです(笑)!圭治と武藤教授は師弟関係でもある間柄ですが、その役柄の関係を超えて、並樹さんにたくさん支えていただきました」
並樹「ある期間、一つの組に入って、同じ苦労を共にする同僚になるわけですから、仲良くなりたいなと思っていました」
山岸「私も、ビスコをいただきました(笑)。撮影全体を通して盛り上げてくださって、本当にありがたかったです!」
――いまのお三方の様子からも、撮影現場の雰囲気が和やかだったことが伝わります。
青木「各部署のスタッフ、キャストの方々、皆さんが、この映画の伝えたいメッセージを表現するために、真剣に、そして熱心にアイデアを持ち込んでいるような現場でした。みんなが一体となった撮影現場で、僕自身も“一人じゃない”と実感できる時間になりました。また本作は、目に見えない存在について描かれていますが、今回の撮影を通してそういった目には見えない存在を感じることもありました。人生においてはいろいろな悩みや苦しみを経験すると思いますが、その苦しみを和らげてくれるような存在や、地上をさまよっている霊的存在など、あらゆるものが同居した環境で生きているんだなと。そういった意味でも、“一人じゃないんだな”と感じました」
山岸「本当にスタッフ、共演者の皆さんとの一体感を味わえる現場だったなと思います。共演者の方々のなかでは、私は3月に亡くなられた津山登志子さんとご一緒させていただく時間が多かったんです。津山さんがたくさん話しかけてくださって、私の緊張をほぐしてくださいました。控え室で、発声や滑舌トレーニングのために『あめんぼの歌』をやっていた時には、津山さんが『私もやったことがあるわ』と一緒にやってくださったんです!ものすごくうれしかったです。津山さんは今回、独特な怖さを醸しだす役柄を演じていらっしゃいますが、奥津(貴之)監督と『どうしたら不気味さを出せるか』と話し合いながら挑まれていたので、そういった姿を拝見したり、直接演技で対峙させていただくことができて、本当に学びのある機会になりました。私は決して一人ではなく、皆さんのおかげであの場に立つことができたんだなと感じています。津山さんのご冥福をお祈りいたします」
並樹「僕も映画は、これまで30本くらいやらせていただいていますが、その経験からしてもいつもの撮影ではない、なにか特別な雰囲気を感じていました。『これはなんだろう?』と考えてみると、スタッフ、キャストの間にも『伝えたい』という信念があるからなのかなと感じています。僕は、カメラマンの新島(克則)さんともいい対話ができたなと思っていて。即興で思いついた芝居をやってみると、いろいろなことをやるたびに、彼がいつも笑ってくれるんですね。熱気に満ちた撮影現場で、やりがいもありました。そのエネルギーに対して返せるだけの演技の力があるのかと思ったりもしましたが、精一杯やらせていただきました」