『スパイダーマン:スパイダーバース』の功績を再確認!“マルチバース”を先取りした革新性
MCU作品や『エブエブ』で話題沸騰!“マルチバース”が新たな扉を開く
そしてもっとも重要なキーワードは「マルチバース」だ。つい最近までコミック愛好家と量子物理学者ぐらいしか認知していなかったこの概念を、一般にまで広めたのが『スパイダーマン:スパイダーバース』といっても過言ではない。無数の次元=世界が並行して存在していることで、その壁を超えて共存、共演が可能となり、より壮大な世界観を実現することができる。いまやカルチャー全体に影響を与えるほどの概念となっている。
近年のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品が“マルチバース”を最大のテーマにしていることもあり、同じくMCUの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)では、トビー・マグワイアやアンドリュー・ガーフィールドら過去の「スパイダーマン」映画の主人公と、ウィレム・デフォーら悪役が一堂に会する映画ファン垂涎の豪華なシチュエーションが実現。マルチバースの楽しさと可能性が、同作を歴史的な大ヒットへと導いた。
また、第95回アカデミー賞で作品賞をはじめ主要7部門を席巻する大旋風を巻き起こした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)も“マルチバース”映画の新たな代名詞。ミシェル・ヨー演じるごく普通の主婦が、確定申告に訪れた税務署で突然マルチバースに放り込まれ、あらゆる次元を行き来しながらそれぞれの次元にいる自分が持つ力を獲得しながら奮闘していく。奇想天外なストーリーで2022年を代表する映画となり、“マルチバース”の概念をさらに拡大させた。
最新作ではスパイダーマン同士の戦いが勃発!?
映像表現だけでなく、内容面やコンセプトまで画期的だった『スパイダーマン:スパイダーバース』。もちろん『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でも、それらのキーワードを引き継ぎながら、さらにスケールアップして“新たな扉”を開いてくれることだろう。
最新作の舞台はマルチバースを自由に行き来できるようになった世界。マイルス・モラレスは久しぶりに再会したグウェンに導かれ、ある特別なユニバースへと足を踏み入れる。そこに集結していたのは、ミゲル・オハラ(スパイダーマン2099)を筆頭に、様々なユニバースから選び抜かれたスパイダーマンたちのエリートチームだった。そこでマイルスは、愛する人と世界を同時に救うことができないという、スパイダーマンたちが背負ってきた“哀しき定め”を知ってしまう。
スパイダーマンの運命に抗うというマイルスの決意は、“スパイダーマンvsマルチバースすべてのスパイダーマン”という誰も見たことがなかった壮大な戦いを引き起こすことになる。アニメーション表現にもさらなる磨きがかけられた本作に、いったいどんな結末が待ち受けているのか。公開が待ちきれない!
文/久保田 和馬