生田斗真、『渇水』主演即決の決め手は“ただならぬオーラ”を放っている脚本!門脇麦と16ミリフィルム撮影の魅力語る
生田が目撃した、女優・門脇麦のオンとオフ
苦労したのは生田演じる水道局員の主人公、岩切俊作の同僚、木田拓次を演じた磯村勇斗と門脇演じる母親が置き去りにした姉妹でアイスを食べるシーンだと振り返る。「磯村くんが食べているアイスに当たりが出るという場面なのですが、縁側で長回しで撮影していて、なかなか一発でうまくいくものではないですね」とニヤニヤ。「磯村くんは食べ切らないといけなかったので、真夏の暑い時期にもかかわらず、震える磯村勇斗を見ることができました。何本もアイスをガリガリ食べて、頭が痛くなりました」と振り返った。
「撮影中にハッとした瞬間はあったか」という質問に「麦ちゃんの登場シーンにはハっとしました」と笑顔。「マニキュアを塗るシーンはなんとも言えない説得力がありました。そこに佇む門脇麦、本物がいるという気がしました。艶かしいキレイさがありました」と話したが、芝居以外での門脇の印象は「誰よりも早く現場を去る女優さんです」と話し、「いままで出会った女優さんのなかで、一番帰るのが早くて(笑)。気づいたらメイクを落とし、私服に着替えて『お疲れ様でした!』と走っていきます。なぜそんなに急ぐのかを聞いたら『1秒でも早く帰りたいんです!』とおっしゃっていました」と明かすと、門脇は早く帰るコツは「段取りをちゃんとつけること」と即答し、「駐車場が遠ければマネージャーさんに頼んで近くまで車を持ってきてもらいます。あとは走りながら脱げるものは脱いでいくのもコツです」と得意げに語り、笑いを誘っていた。
幼い姉妹を家に残して姿を消す母親役を演じた門脇が撮影を振り返り、「高橋監督は姉妹に付きっきりで演出しているので、私にはあまりなにも言ってくれなくて」としょんぼりすると、生田、白石プロデューサーは大笑いし、高橋監督は気まずそうに下を向く。姉妹を演じた役者には台本を渡していなかったため、その場で細かな演出をつける必要があったこと、そしてなにより高橋監督がキャスト陣を信頼し切っていることが大きな理由だった。「いい俳優さんたちにめぐり会えたので、こんな風に演じて欲しいということを現場で感じることがありませんでした」と説明し、「生田さん、門脇さん、お2人の芝居が好きだったというのもあります」と付け加えていた。
本作は16ミリフィルムで撮影されたため、フィルム映画の魅力を問われる場面も。「1ロール8分しか撮影できないフィルム撮影にはフィルムチェンジの時間があります。僕はその待ってる時間がすごく好きで『映画を撮ってるなあ』っていう感じがします」とうっとりとした表情を浮かべ「フィルムでしか刻めない味や香りを体験してほしいと思います」と呼びかけた。門脇は「フィルムというだけでテンションが上がります!」と満面の笑みを見せ、「自分がずっと観てきた60年代、70年代の作品の俳優さんや監督たちもこうやって映画を撮ってきたんだとか、こんなふうにフィルムチェンジの時間を過ごしていたのかと想像するだけですごくうれしくて。スタッフのみなさんもうれしそうなので、こちらもうれしくなります」とフィルム映画への愛を熱く語っていた。
フィルムでの撮影は水の表現や太陽の光には「メリットでした」と微笑んだ高橋監督。「デジタルではクリアすぎるところもあるので、粒子が荒れてちょっとざらついていたりするのが、今回の映画では非常に有効的でした」と胸を張る。「光が当たっていないところは映らないのがフィルムの特徴です。そこに強弱をつけたり、スポットを当てたいところに光を当てるのをずっと(フィルム映画で)学んできました。夜のシーンで岩切や子どもたちにちゃんとフォーカスが当たるというのはメリットでした」と満足といった様子で語った。
最後の挨拶で生田は「心を抉られるようなシーンもたくさんあります。映画を観る前と観た後では世界が少しだけ違って見えるかもしれません。フィルム映画のすばらしさ、長年かけて完成した映画を楽しんでください」と呼びかけイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ
※高橋正弥監督の「高」は「はしご高」が正式表記