マイケル・B・ジョーダンが明かす『クリード 過去の逆襲』に込めた日本アニメへのリスペクト「僕のなかにはアニメならではの要素が染み付いている」
「ロッキー」シリーズのDNAを受け継いだ「クリード」シリーズ最新作『クリード 過去の逆襲』が公開中だ。ロッキーのライバルであり親友でもあるアポロの遺児、アドニス・クリードを主人公にしたシリーズ3作目となる本作は、主演を務めるマイケル・B・ジョーダンが監督を兼任。自他ともに認める日本のアニメファンであるジョーダンは、初監督作でドラマチックな展開やダイナミックな画作りなどアニメ愛を盛り込んだ。初来日したジョーダンに、映画に込めた想いやアニメの魅力を聞いた。
「家族との関係や葛藤、そして幼なじみとの対立を描くことで、ヒーローの新しい側面を垣間見せたい」
最後の試合をKOで飾り華々しく引退したアドニス(ジョーダン)。家族と満ち足りた日々を送っていた彼の前に、少年時代に同じグループホームで過ごしたデイム(ジョナサン・メジャース)が現れる。18年の刑を終え出所したばかりだというデイムは、かつてアマチュアボクシング地区大会優勝を果たした実力者。アドニスの口利きで第2のボクシング人生をスタートさせるが、次第に2人の関係は険悪になっていく。実はデイムが収監された事件には、アドニスも深く関わっていたのだ。
本作は、ボタンのかけ違いからかつて兄弟のように過ごした2人の男が激突する物語。ストーリー作りから参加したジョーダンは「1本のオリジナル作品であると同時に、3部作の最後を飾る内容にもしたかった」と語る。「1作目はアドニスとロッキーの物語で、アドニスが、自分が生まれたのは間違いではなかったことを証明する物語。2作目では父アポロをリングで死なせたドラゴ親子との物語だった」と振り返り、3作目はアドニス本人に絞るべきだと思ったと明かす。
そしてたどり着いたのがアドニスの原点の物語。シリーズ1作目でクリード家に引き取られる前のアドニスは、唯一の家族だった母を亡くしケンカに明け暮れる不良少年とだけ紹介されていた。「いままで見ることのできなかった、アドニスの素顔にスポットを当てたんです。家族との関係や葛藤、そして幼なじみとの対立を描くことで、ヒーローの新しい側面を垣間見せたかったんです」。
「自分のビジョンが形になるプロセスは監督という仕事の醍醐味」
過去2作で主演として参加して人気スターとなったジョーダンは、本作で監督とプロデューサーも兼任。これが彼にとって監督デビュー作となる。自身で監督をしたきっかけについて、『クリード チャンプを継ぐ男』(15)や『ブラックパンサー』(18)など多くの作品で組んできたライアン・クーグラー監督の「君だって監督をできるさ」という何気ない言葉だったと振り返る。実際に監督をした感想を聞くと「自分のビジョンが形になるという体験は喜びでした」と感慨深げ。「夜中にアイデアを思いつき、ベッドから抜けだしてメモを取ったこともありました。それを撮影現場で再現できるんです。そのプロセスは監督という仕事の醍醐味です。共演者たちと、これまで以上に突っ込んだやり取りができたことも楽しみの一つでした」。
影響を受けた監督をたずねると、スティーヴン・スピルバーグ、クリストファー・ノーラン、ジェームズ・キャメロンらビッグネームの名がズラリ。「新しいものを創造しジャンルの幅を押し広げたり、限界を突破するすばらしいビジョンを持った人たちを尊敬しています。僕も彼らのように映画界に貢献したいと思っていますから。もちろんクーグラー監督もその1人です」とジョーダン。さらに、ブラッドリー・クーパーやデンゼル・ワシントンら役者兼監督たちの名前もあげた。「デンゼルとは彼の監督作『きみに伝えたいこと』で一緒に仕事をしましたが、学ぶことが多い現場でした」。撮影はパンデミックの影響で制限された面もあったというが、それによってよりクリエイティビティを刺激されたという。