マイケル・B・ジョーダンが明かす『クリード 過去の逆襲』に込めた日本アニメへのリスペクト「僕のなかにはアニメならではの要素が染み付いている」
「試合シーンもアニメのように、キャラクターの感情をデフォルメしながら表現する場として描いた」
日本のアニメ好きとして知られるジョーダンは、8歳頃からずっとアニメを見続けてきたという筋金入りのファン。海外メディアでも「NARUTO-ナルト-」や「ドラゴンボールZ」、「BLEACH」などアニメの魅力をたびたび語ってきた。そんなジョーダンの初監督作もアニメの影響を受けているという。「アイデアや概念、エモーショナルなテーマ、リアルでパワフルな表現など、僕のなかにはアニメならではの要素が染み付いているんです。アドニスとデイムの確執は僕のパーソナルな体験などを参考にしたものですが、ストーリーを開発するなかで2人の関係が『NARUTO-ナルト-』のナルトとサスケに驚くほど似ていると気づいたりして。アイデアの点と点を、アニメという糸が結びつけたようなものですね」と明かした。
ファイトシーンも、クローズアップや超スローモーションを交え試合中の選手たちの内面を描くなど、「ロッキー」「クリード」を含むこれまでのボクシング映画にはないビジュアルが盛り込まれた。「試合シーンもただ戦うだけでなくだけでなく、アニメのようにキャラクターの感情をデフォルメしながら表現する場として描きました」とジョーダン。自分の軽はずみな行動から、親友を罪人にしてしまったトラウマを表現するため、リングに鉄格子が出現するなどアニメ的な演出も映画をドラマチックに盛り上げた。
幼い頃に支え合って過ごしたアドニスとデイムが敵対する展開も、バトル系アニメに不可欠な要素の一つ。「ライバルの存在は『NARUTO-ナルト-』に限らずアニメにとっては大切で、ヒーローが成長していく過程のなかで、繰り返しライバルたちとの軋轢が描かれています。闘いを通し互いに限界を突破して、次の段階に進んでいく。そのためにライバルは不可欠なんです。そこには憎しみだけでなく常に愛も存在していて、言葉に出さなくても互いに『もっと上まで行ってみろ!』と叱咤し合っているわけです。そんなアニメのフィーリングをこの映画にも持ち込みたかったんです」と熱く語った。
「ガンダムへの想いから、今回はガンプラとポスターは必ず入れたいと思っていた」
そんなジョーダンが大好きなアニメの一つが「ガンダム」。彼がアニメのメカの魅力に取りつかれたきっかけとなった作品が「新機動戦記ガンダムW」だという。「毎週日曜日にテレビで放映されていて、最初にハマったアニメの一つです。当時はネットなど情報を得る手段はなかったので、とにかく次の週を待ちわびながら過ごしました。だから一番好きなガンダム映画は『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別篇』ですね」。
そんなジョーダンのガンダム愛は映画のなかに見てとれる。冒頭、少年時代のアドニスの部屋が映し出されるシーンがあるが、壁には「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」のガンダムアストレイ レッドフレームのポスターが貼られ、ガンプラが並んでいるのがちらりと見える。「『ガンダム』への想いから、今回はガンプラとポスターは必ず入れたいと思っていました」。
ジョーダンのアニメや「クリード」への愛は、思いがけない形で結実。ジョーダンが製作総指揮とナレーションをつとめる日米合作アニメが、森山洋監督のもとトムス・エンタテインメントで制作された。地球からの移民が暮らす近未来の火星を舞台に、クリードの血を引く者たちが競い合うSF格闘アニメだ。「日本の文化から受けた影響と大切に思っています。大好きな日本の文化に貢献したいという想いから、今回アクションを起こすことにしました。リスペクトと尊敬の念を込めました。日本のファンの方々にも楽しんでほしいですね」。
『ロッキー』(76)からスタートした「ロッキー」サーガは、今年で47年を迎え9本の映画を生みだした。アメリカではシリーズ最大のヒットを記録し、監督として順風満帆のスタートを切ったジョーダンだが、日本人だからこそ分かる彼のアニメと「クリード」への熱い想いを劇場で感じ取ってほしい。
取材・文/神武団四郎