カンヌ脚本賞の坂元裕二、『怪物』初日舞台挨拶でトロフィーをお披露目！是枝裕和監督は「とても幸せな映画になった」と感慨

是枝裕和監督と脚本家の坂元裕二が初タッグを組み、音楽を坂本龍一が担当した映画『怪物』の初日舞台挨拶が6月2日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、角田晃広、中村獅童、脚本の坂元裕二、是枝裕和監督が登壇した。

第76回カンヌ国際映画祭で坂元が脚本賞受賞の栄誉に輝き、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した本作。よくある子ども同士のケンカを巡って、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、無邪気な子どもたちの食い違う主張が次第に社会やメディアを巻き込んで、大ごとへと発展していく様を描く。登壇者がステージに姿を現すと、大雨のなか会場に駆けつけた観客から熱い拍手が上がっていた。

カンヌ滞在の様子を振り返った是枝監督は、「最高の滞在でした」とキッパリ。「口コミが広がって、街中でも声をかけてくれることが増えた。呼び止められて、『あそこはこういうふうに観た。それでいいのか』など質問も出た。広がっていっているな、届いているなという感じが強かった」と実感することも多かった様子。もっとも印象深かったのは、「カンヌ・プレミア」部門に出品されていた『首』の北野武監督と対面できたことだという。是枝監督は「感動した。武さんの上映を観て、ご挨拶して、ツーショット写真も撮っていただいた。そこに立っている自分が、学生に戻ったみたいな立ち方をしていた。不思議ですね」と北野監督へのリスペクトをあふれさせていた。

「30年前に遊びで、カンヌ国際映画祭に行ったことがある」という坂元は、「そのころは遠巻きにレッドカーペットを眺めて、ステキだなと思っていました。監督にカンヌに連れて行ってもらえて、実際にそこを歩くことができた。30年来の忘れた夢を叶えることができて、感無量でした」と是枝監督に感謝しきり。「自分が想像していた以上の歓声で迎えていただいた。カーペットを歩いている時も上映後も、常にお客さんの反応がすごくて、恐縮しながらも胸がいっぱいになりました」と夢の舞台に立った感動を明かしていた。

安藤は「本当にすばらしい瞬間にいさせていただいた。ものすごいことなんだなと実感した。すばらしい経験をさせていただいて、大興奮でした」と授賞式を熱っぽく回想。永山は「たくさんの世界中の方々から『コレエダ！』『サクラ！』という(声がかかる)なか、『コレ、エイタ！』と聞こえてしまって」と自分の名前が呼ばれたのかと勘違いしてしまったそうで、「振り向いたら、全然こっちを見ていなかった。恥ずかしい想いをしました」と語り、会場も爆笑。黒川は「カンヌの街を歩いたら、いろいろな方が『コングラチュレーション』『アイ・ラブ・ユア・フィルム』と言ってくださった。すごくうれしかった」、柊木も「レッドカーペットを歩いている時に、『ヒナタ！』と呼んでくださってうれしかった。ヒナタの『ヒ』の発音が難しいらしくて、申し訳ないなと思って。『サニー』に名前を変えようかなと思いました」とお茶目に語り、これには周囲も頬を緩ませていた。

カンヌの受賞について、「『でしょうね』と思いました。脚本を読ませていただいた時から、すごい映画だなと思った。案の定でした！」とニヤリとしたのが角田だ。さらに役者、角田晃広について、是枝監督が絶賛する場面もあった。是枝監督が「お笑いをされている方のなかで、すごくお芝居の上手な方が時々いる。角田さんはその一人」と分析し、「もちろんセリフの間合いの取り方もすばらしいんですが、画面のなかにいるポジション取りがすごく上手。すごく的確なところにちゃんと動くし、タイミングよくフレームに入ってくる。天性のものだと思います。すばらしかったです」と手放しで褒めると、角田は「本当ですか…？もったいないお言葉」と恐縮しきりだった。

最後に「本日はこの雨のなか、ありがとうございました」と切り出した坂元は、「皆さんに観ていただける日をずっと願い続けて、届けられる日を想い続けてきました。感謝の想いでいっぱいです。心を込めてつくりました。よろしくお願いします」とメッセージ。是枝監督も「大雨の初日。こんなにたくさんのお客さんに来ていただいて、とても幸せな映画になったなと思います。スタッフ、キャストの力を結集した作品です。届くといいなと思います」と願いを込め、大きな拍手を浴びていた。

取材・文/成田おり枝