アラン・メンケンら『リトル・マーメイド』スタッフが明かす、新曲制作秘話やハリー・ベイリーの才能まで

コラム

アラン・メンケンら『リトル・マーメイド』スタッフが明かす、新曲制作秘話やハリー・ベイリーの才能まで

ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「人魚姫」を原作に、ディズニーがアニメーション映画化した『リトル・マーメイド』(89)は、公開から30年以上経ったいまでも愛され続けている名作の1本だ。アカデミー賞歌曲賞を受賞した「アンダー・ザ・シー」は作曲家アラン・メンケンの名を世界に広め、彼はディズニーアニメーションの黄金期を築く立役者となった。その名作中の名作が実写化されるとあって、現在公開中の『リトル・マーメイド』は制作が発表されて以来ずっと話題に事欠かなかった。新曲の制作秘話から、ミュージカル映画作りの難しさなど、ロブ・マーシャル監督とアラン・メンケン、プロデューサーのジョン・デルーカが今作に込めた想いを語ってくれた。

名作アニメーションを実写映画化した『リトル・マーメイド』
名作アニメーションを実写映画化した『リトル・マーメイド』[c] 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「ハリー・ベイリーが歌った時、隣にいるロブが涙をボロボロと流していたんです」(ジョン・デルーカ)

アカデミー賞受賞作の『シカゴ』(02)、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』(63)をミュージカル化した『NINE』(09)の映画版や人気ミュージカルの映画化『イントゥ・ザ・ウッズ』(14)など、ミュージカル映画の旗手として知られるマーシャル監督だが、この不朽の名作アニメーションの実写化に臨むにあたり、相当な心構えが必要だったと告白する。


ロブ・マーシャル監督は、映画化に着手するにあたり、原点であるアンデルセンの物語に向き合ったという
ロブ・マーシャル監督は、映画化に着手するにあたり、原点であるアンデルセンの物語に向き合ったという[c] 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「ジョン(・デルーカ)と私がこの作品に取り掛かった時、最初にしたことは、アンデルセンが著した物語に立ち返り、物語の起源を理解することでした。『人魚姫』は、1830年代の時分において非常に現代的な物語であり、どこにも居場所がないと感じている少女が自分探しの旅に出て、別の世界へ行こうとする物語です。それにより、実写作品ならではの深みや感情を実現することができたと思います」と、マーシャル監督は自負する。そして、「人魚は涙を流すことができないため、より感情豊かになり、そしてより多くの苦しみを感じてしまうというアイデアを取り入れた」という。だが、アリエル役のオーディションの最中に、“事件”が起きた。

ハリー・ベイリーがオーディションにやってきて一曲歌った時、隣にいるロブ(・マーシャル)を見たら、涙をボロボロと流していたんです(笑)」とデルーカが言うと、マーシャル監督は「実はハリーが最初に会った候補者でした。彼女は目を閉じて、『パート・オブ・ユア・ワールド』を歌い始めました。私は自分の耳を疑いました。とてもエモーショナルで美しく、思わず涙がこぼれたのは、ハリーがこの曲ととても深いところで結びついているからだ、と理解しました。それから様々な属性を持つ候補者100人以上に会いましたが、常にハリーのことを思い出していました。そうして、彼女はアリエル役を掴んだんです」と思いの丈を述べた。同じくオーディションに立ち会っていたメンケンは、「ハリーは本当に才能に恵まれていて、とても愛らしい。感情が前面に出ているというか、彼女の顔も声も、まさに“ハリー・ベイリー”を体現していて、すばらしいアリエルになるだろうと直感したのです。彼女の歌声と演技から、私たちがかつてオリジナルの『リトル・マーメイド』に込めた“無垢さ”を思い出させてくれました」と絶賛する。

 人間の世界へ憧れる無垢な人魚姫、アリエルを体現したハリー・ベイリー
人間の世界へ憧れる無垢な人魚姫、アリエルを体現したハリー・ベイリー[c] 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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