戸田恵子に読者の疑問をぶつけてきた!35年演じ続けているアンパンマンが唯一無二である理由、役作り秘話までたっぷり回答 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
戸田恵子に読者の疑問をぶつけてきた!35年演じ続けているアンパンマンが唯一無二である理由、役作り秘話までたっぷり回答

インタビュー

戸田恵子に読者の疑問をぶつけてきた!35年演じ続けているアンパンマンが唯一無二である理由、役作り秘話までたっぷり回答

アンパンマン以外でお気に入りのキャラクターはいますか?(30代・女性)

「筆頭は、カバおくんです。カバおくんはアンパンマンのことが大好きなので、私もカバおくんがかわいくて仕方がない(笑)。カバおくんの健気さ、天真爛漫な姿には、いつも癒されています。でも本当にたくさんのキャラクターがいるので、選ぶのはとても難しいですね。基本的に先生の描くキャラクターは、ばいきんまんしかり、“完全な悪者はいない”というところが魅力で、アンパンチで飛ばされたりしますが、決して死なないというところも特徴になっています。そして食品があれば菌もあって、お砂糖もあればお塩もある。パンがあれば、おむすびもある。対称となる存在が出てくるんですね。そういったことを通して、自分のことだけを考えるのではなく、“共存していく”、“決めつけない”ということも大きなテーマとして描かれています。本当に豊かなキャラクターが描かれているなと思います」

個性豊かなキャラクターがたくさん登場するのも、人気の秘訣
個性豊かなキャラクターがたくさん登場するのも、人気の秘訣[c]やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV [c]やなせたかし/アンパンマン製作委員会2023

以前ある番組で「アンパンマン」でコロッケキッド役で出演されている田中真弓さんが、戸田恵子さんのことを「同年代で声帯を正しく使った発声に嫉妬した」と語っていました。戸田さんが発声で気をつけていることや、戸田恵子さんが嫉妬した方を教えてください(20代・男性)

【写真を見る】役作り秘話を告白!アンパンマンのような喜怒哀楽の表情を見せた戸田恵子を撮りおろし
【写真を見る】役作り秘話を告白!アンパンマンのような喜怒哀楽の表情を見せた戸田恵子を撮りおろし撮影/野崎航正 ヘアメイク/相場広美〈マービィ〉 スタイリスト/江島モモ


「アンパンマンに関しては“無理をせずに演じる”ことを大事にしているので、私がごく自然に演じていることに対して、真弓さんがそのようにおっしゃったのかもしれないですね。例えば中尾隆聖さん演じるばいきんまんのように、あえて声を絞って作っていくキャラクターもありますよね。私自身、そのようにしてキャラクターを演じることもありますが、アンパンマンはそうではなく、最初に自然に演じてみたものから、そのままここまでやってきています。

アンパンマン役をいただいた当初、このヒーローをどのように演じたらいいんだろうと考えました。アンパンマンは温和な優しいキャラクターで、やなせ先生は『アンパンマンは、世界一カッコ悪いヒーローだと思ってください』とおっしゃっていました。顔をちぎって、それをみんなに食べてもらうことで、自分の心が温かくなる。顔をちぎっているので、自分の体力としてはどんどん衰えていくわけですよね。先生曰く、『どんどんダメになっていく、カッコ悪いヒーローなんだ』と。その先生のお言葉を聞いて、私は『スタイリッシュなアンパンマンを求められているのではない。むしろ日常の優しさを大切にしていこう』と思いました。『アンパーンチ!』と戦う場面が目立つかもしれないけれど、相手との接し方、一枚の葉っぱを持って雨宿りをする姿、暮らしのなかで『困っている人がいないか』と飛んでいる姿など、アンパンマンの優しさを感じながら演じたいなと。そうやって“やなせイズム”のようなものを汲み取って演じてみたところ、先生や監督からも『ノー』とは言われませんでした。

私は、オーディションを受けていないんですね。なかなかアンパンマン役が決まらなかったところ、私にお声がかかって。事務所から『戸田さんの声を聴いて、やなせ先生と監督がアンパンマンをお願いしたいそうです』と電話があり、『私ですか?』と耳を疑うような驚きがありました。こういった幼児対象のキャラクターを演じるのも初めてでしたし、こんなにも長く演じさせていただける役と出会えたなんて、本当にすばらしいご縁をいただいたなと思っています」

長年アンパンマンを演じられていらっしゃいますが、一番お気に入りのテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」のエピソード、劇場版について教えてほしいです!(30代・女性)

「お気に入りの劇場版に関しては、最新作『それいけ!アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』が一番だとお話しておきたいところです(笑)。テレビシリーズで言えば、やはり第1話はとても印象的です。第1話では、アンパンマンが生まれてきて、ジャムおじさんを助けます。そしてアンパンマンは、ジャムおじさんに「胸の中がとてもホカホカするよ」と伝えるんです。いただいた台本を家で読んでいたら、私はそこでものすごい涙が出てきてしまって。それは本当に不思議な体験で、あと1日、もう1時間でも早く読んでいたら泣かなかったかもしれないんですが、私にとって琴線に触れるタイミングだったんだと思います。そのセリフに心を洗われて『こういった作品をやっていくんだ』と感じた瞬間がとても印象に残っていて。『この役を与えてもらったんだな』という気もしましたし、そこから始まった本シリーズが、いまでは私にとって宝物になりました」

ロボリィは、アンパンマンたちとの触れ合いを通して思いやりを知っていく
ロボリィは、アンパンマンたちとの触れ合いを通して思いやりを知っていく[c]やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV [c]やなせたかし/アンパンマン製作委員会2023

世代を超えて愛されているアンパンマン。アンパンマンが届けるメッセージとは、どのようなものだと思っていますか?(40代・女性)

「最新作は、まさに『胸がホカホカするってどういうことだろう』ということを掘り下げていく内容です。原点回帰とも言えますが、本シリーズでは常に『温かさを届けよう』、『人が喜ぶことをやっていこう』ということが、テーマになっています。

私は“偉大なるマンネリ”だと言っていますが、揺るがずにそれを通しているところが本シリーズのすごいところだと感じています。やなせ先生は、『自分たちにできるベストを尽くそう』『それぞれにできることがある。できることが見つかった時には、“そこそこ”ではなく、マックスの力でそこに向かっていこう』とよくおっしゃっていました。東日本大震災が起きた時にも、『自分はもう年寄りだから瓦礫を運ぶことは出来ないけれど、僕にできることもある』とお話ししていました。そういった”やなせイズム”が、いまでも作品やチームを支えてくれています」

戸田さんが「アンパンマン」の世界に入るなら、どんな食べ物のキャラクターになりたいですか? (30代・女性)

「自分が好きな食べ物のキャラクターになったとしても、それを自分では食べられないところが悩みの種になりますね(笑)。本シリーズの数ある食べ物のキャラクターのなかでも、アンパンマンだけは“食べる”という行為をしないキャラクターです。みんなが食べているのをニコニコと見守っているのがアンパンマンで、だからこそアンパンマンとしては『いただきます』や『おいしい』というセリフは言ったことがありません。完全に与える側で、そういった点からも、やなせ先生が唯一無二のキャラクターを作ってくださったんだなと感じています」

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