映画祭ってどう楽しむもの?映画パーソナリティ・伊藤さとりの「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」巡りに密着してみた

コラム

映画祭ってどう楽しむもの?映画パーソナリティ・伊藤さとりの「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」巡りに密着してみた

国内コンペティション短編部門作品で、豊富なラインナップと映画祭の特徴を実感

いざ、映画鑑賞タイム!
いざ、映画鑑賞タイム!

まず伊藤が鑑賞したのは、15分以上60分未満の作品を対象とした国内コンペティション短編部門から、ヒト型AIを通じて記憶と自己同一性に関する問いを投げかけるSF作品『恵子さんと私』、ある朝目覚めると別人の姿になっていた男の行く末を描くコメディ『野ざらされる人生へ』、波乱に満ちたホワイトデーの1日をみずみずしいタッチで描いたCGアニメーション『A nu / ア・ニュ ありのままに』、宝くじを当てて大金を手に入れたものの虚無感を募らせていくホームレスの男の苦悩を追った社会派ドラマ『ミミック』の4本が集まった「短編①」。それぞれの監督とキャストが登壇する、Q&Aセッションも行われた。

今年のオープニングセレモニーでは、実行委員会会長の大野元裕(埼玉県知事)が「デジタルシネマにフォーカスして開始した目的、意図は、比較的に編集がしやすく、また相対的に安価につくることができるデジタルシネマで映画制作を行うことで、特に若いクリエイターの方々に発表の機会を提供できると考えたからです」と本映画祭発足時の意気込みを振り返っていたが、「短編①」を鑑賞した伊藤は「まさに、その想いが形になっている作品群だと思いました」としみじみ。

「短編①」の監督&キャスト陣。Q&Aセッションでは、観客からあらゆる質問を受けた
「短編①」の監督&キャスト陣。Q&Aセッションでは、観客からあらゆる質問を受けた

「『野ざらされる人生へ』の永里健太朗監督は、全編iPhoneで撮影・編集をされたとおっしゃっていましたし、『A nu / ア・ニュ ありのままに』の古賀啓靖監督は、ほぼ一人で作品をつくりあげたとお話していました。そういった制作背景も、デジタルに着目した映画祭ならではのエピソードだなと感じました」とQ&Aセッションでの登壇者の発言を踏まえつつ、「貧困問題を扱った『ミミック』をはじめ、社会問題を題材にした作品が多かったのも印象的。また世代を問わず、コンペに応募できるという点もとてもいいなと思いました。『恵子さんと私』の山本裕里子監督は、50代とのこと。よく『映画界には若手監督の育成が必要』という声を耳にします。ただ“若手”と言っても、私は映画づくりを始めるのに、年齢なんて気にしなくていいと思っていて。AI問題を切り口に母と娘の関係性を描いた本作は、きっといろいろな経験をされたいまの山本監督だからこそ撮ることができた作品ですよね。幅広い世代が映画をつくることで、多様な作品が生まれるんだなと。今回拝見した短編のラインナップからも本映画祭の特徴を感じることができましたし、それぞれの監督も可能性を感じる方々ばかり。これからが楽しみです」と期待を寄せる。

国際コンペティション部門作品『助産師たち』に感激!監督に質問をぶつけてみた

『助産師たち』のQ&Aセッションでは、観客から、演出方法や撮影方法に関する質問が相次いだ
『助産師たち』のQ&Aセッションでは、観客から、演出方法や撮影方法に関する質問が相次いだ

続いて、国際コンペティション部門作品で、フランスの産婦人科で働く新人助産師に焦点を当てた群像劇『助産師たち』の上映会に参加。

実際の出産シーンを交えながら、圧倒的なリアリティと共に助産師たちの葛藤を描いた本作を観て、「自分が出産した時を思い出した。実は、私の義理の両親が産婦人科医と助産師なんです」と身近なテーマでもあるという伊藤は大いに胸を打たれた様子。あふれんばかりの感激を胸に、レア・フェネール監督が出席したQ&Aセッショでは、助産師を取り巻くストレスやオーバーワークといった問題をどのように捉えているか、さらに「出産シーンは、本当の出産を映しだしていると思います。撮影許諾を含め、どのように撮ったのか?」と質問を投げかけた。フェネール監督は「『出産シーンを撮らせてください』と尋ねると、4組に1組くらいの産婦さんとご家族の方が許可してくれました。どうして受け入れてくれたのかと考えると、『助産師に敬意を捧げたい』という気持ちがあったからなのではないかと感じています。撮らせてくださったご家族にも満足してもらえる映画にすることは、私にとっても大きな挑戦でした」と真摯に回答。「この作品は、ドキュメンタリーのリアリティとフィクションのちょうど境界線にあります」と本作の持つ力強さについて語っていた。

【写真を見る】実際の出産シーンを使った『助産師たち』、ドキュメンタリーのようなリアリティを味わえる
【写真を見る】実際の出産シーンを使った『助産師たち』、ドキュメンタリーのようなリアリティを味わえる[c]Geko Films

さらにQ&Aセッション後には、フェネール監督がインタビューにも応じてくれた。「厳しい労働条件のなかで、若い助産師たちがどのようにその状況を乗り越えていくかを描きたかった」というフェネール監督。劇中で描かれる女性の労働環境には「日本でも同じことが言える」と伊藤が打ち明けると、フェネール監督は「私は、女性がいかにすばらしい仕事をしているかということも伝えたいと思っています。私は女性監督だから、女性の問題を扱うんです」とキッパリ。「『本作をテレビシリーズとして制作したらどうだろうか』という提案も持ち上がっています。いろいろと助産師の世界についてリサーチをしましたが、本作で扱うことができたのは氷山の一角だという意識もあって。テレビシリーズだったら、今回すくい上げることができなかったエピソードにもクローズアップできるかなという想いもあります」と今後の展望にも触れた。


伊藤さとりがレア・フェネール監督を直撃!
伊藤さとりがレア・フェネール監督を直撃!

本映画祭で来日が叶い、フェネール監督は「とてもうれしい」と感激しきり。「観客の皆さんの反応を見ただけでも、ものすごく感動しています。先ほどのQ&Aセッションでは、移民の女性の出産を描いた場面について質問が上がりましたが、ほかの国では一度もその質問をされたことはありませんでした。日本の方々は、フランスの移民問題について『知りたい』と興味を持っているのかもしれないと感じました。そうやっていろいろな問題、社会的な声を知ってもらえるということも、映画の力だなと思っています」と熱を込めると、伊藤もパワフルに突き進むフェネール監督に「撮りたいものが明確で、女性だからこそ描けるものに取り組んでいる。刺激を受けます」と笑顔。会話のやり取りが止まらなくなるほど、インタビューは盛り上がった。


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■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023
日程:【スクリーン上映】7月15日(土)~7月23日(日)、【オンライン配信】7月22日(土)~7月26日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:https://www.skipcity-dcf.jp/
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