白濱亜嵐が、最恐の新・ホラーアイコン“さな”を目撃!『ミンナのウタ』撮影現場に潜入
撮影は続いて、鏡のなかの信じられない出来事を目撃し、声も出ないほど驚いた3人が目の前の現実世界とを何度も見比べながら脅えるくだりへと突入。
カメラが真正面からとらえた鏡を覗き込む3人に、ここでも清水監督が「なるべく動かず、なるべく瞬きなしで。(現場で流す歌の)ワンフレーズ目の終わりから口ずさみ始めて、そこから鏡越しに見る世界の、信じられない“地獄絵図”に目が釘付けになっていく感じです」と声がかかる。
と、速やかに入った本番では30年前の“さな”と両親のやりとりの音声が流れてきた。そう、白濱と早見、マキタの3人はその音声でタイミングを合わせ、鏡の中と目の前の階段上の扉がない“さな”の部屋を見比べながら、なす術もなく、ただただ脅えるのだ。マキタから「鏡のなかと2階を何度もキョロキョロしていいですか?」と確認があり、「いいですよ。凛さんはどうしましょう、足踏みをしている感じだとヘンかな」と清水監督が応えるなど、やりとりが繰り返されながら、一連の動作がカメラに収められていく。
けれど、なにもないところで怖がったり、脅えたりする芝居はそんなに簡単なことではない。「観るのとやるのとでは全然違いますね。ホラー映画は大好きで、いっぱい観てきたのに、怖がるお芝居は本当に難しい」。セットから出てきた白濱から、思わず本音が漏れる。すると、「恐怖シーンはリアクションのほうが大事だったりするんですよ」と清水監督。「ある有名なJホラー作品のラストで、主人公の男性が甲高い声で『ウワ~!』って叫ぶ場面があるんです。それを観た時に、そこまでの緊張感がすべて崩れ、ドン引きして“早く死んでくれ!”と思ったことがあったので(笑)、男性リアクションの時にはそうならない叫び方、怖がり方を僕は心掛けているんです」。
いよいよ、ここからシークエンスのクライマックスへと移っていく。現場に流れる“さな”の歌の調子が乱れ、しゃっくりが止まらなくなり、次第に苦しそうな声になっていく。ところが、異変に気づかない両親は「せ~の!」と勢いをつけて力いっぱいに“なにか”を引っ張り続ける。鏡のなかで行われる光景を見ていた凛がたまらず、「ダメ…そんなの…やめて!」と叫びながら“さな”の部屋目がけて階段を駆け上がり、白濱もあとを追う。ところが、彼の前でさっきまでなかったドアがバンッと閉まってしまい、残された2人は引き攣った顔のまま呆然と立ち尽くすことになるのだ。
準備が進むなか、清水監督から「ドアがもっと勢いよく閉まるようにして!」とオーダーが入ったことから、スタッフは風圧でセットが揺れてしまう問題をクリアするために試行錯誤を重ねていく。結果、本番の仕上がりには「OK!ドアの閉まり方、上手いですね」と清水監督もニッコリ。そののちに続く、“さな”をめぐる最恐のクライマックスに向けて弾みをつける形になった。
その詳細や“さな”の描写は映画本編でご覧いただきたい。ただ、清水監督が語ったメッセージを読めば、『ミンナのウタ』がただ無闇に怖がらせるホラー映画とは違い、現代を生きる若い世代に寄り添う物語であることが分かるはずだ。
「“さな”を善悪のはっきりした存在にしたくなかったんです。彼女は決して周囲に受け入れられないし、この社会が決めた善悪のなかで暮らしていくには、サイコパスとして捉えられてしまうでしょう。他人を傷つけて謝罪の念はありながらも、自分の心の赴くままに突っ走ってしまう。そんな、純粋なままで生き難いであろう、危うい性分と年ごろは13歳から15歳ころではないかと思い、“さな”を中学生の設定にしたんです。“さな”みたいな行動はもちろんとれないけれど、この子の気持ちもちょっと分かるかもって感じてもらえたらうれしいです。少なくとも僕はそういう演出をしています」。
さあ、あなたはGENERATIONSも巻き込んだ“さな”の恐怖と哀しみを受けとめることができるだろうか。映画館を出るころには、きっと“さな”が口ずさむ甘美なメロディをリフレインしているに違いない。
取材・文/イソガイ マサト