「この手があったか!」清水崇監督を唸らせた“王道ホラー”『ブギーマン』の本気の怖さ
“ホラーの帝王”スティーヴン・キングの短編小説をベースに、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のプロデューサー陣が製作を務めたサスペンス・ホラー『ブギーマン』(8月18日公開)。欧米で古くから根付く昔話に出てくる、特定の姿形を持たない恐怖の存在“ブギーマン”を題材にした本作は、ロックダウン中に撮影されたホラー映画『ズーム/見えない参加者』(20)で注目された俊英ロブ・サヴェッジが初のメジャー映画として監督。まさに“王道”といえる直球勝負のホラーとして、批評家から高い評価を受けた。
母親の突然の死から立ち直れずにいる女子高生の姉セイディ(ソフィー・サッチャー)と9歳の妹ソーヤー(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)。セラピストの父親ウィル(クリス・メッシーナ)もまた、妻を失った喪失感から心に深い傷を抱え、娘たちと向き合えずにいた。ある日、ウィルのもとにレスター(デヴィッド・ダストマルチャン)と名乗る男が訪ねてくる。彼はウィルに恐ろしくも奇妙な体験を語り始めるが、その直後、レスターはウィルの家で驚きの行動に出る。以来、ハーパー家には得体の知れない“なにか”が暗闇に潜み、家族の命を狙い始めるのだった。
本作の公開を記念して、MOVIE WALKER PRESSでは各界のホラーマニアが集う座談会を実施。集まってくれたのは、いずれ劣らぬ業界屈指の4人のマニアたちだ。「呪怨」シリーズや「恐怖の村」シリーズなどヒット作を多数生みだし、最新作『ミンナのウタ』が現在公開中の清水崇監督。ホラー好きが高じて、本業の傍らコラム執筆やイベント出演などでホラー愛を叫び続けている声優の野水伊織。国内外のホラー映画に精通し、独自の視点でコアなホラーファンから支持を集める映画評論家の氏家譲寿(ナマニク)。そして、ホラー映画に特に熱い情熱を注ぐ、映画雑誌「DVD&動画配信でーた」編集長の西川亮が進行を兼ねて参加し、率直な感想はもちろん、演出の注目ポイントやサヴェッジ監督との意外なエピソードを語り合ってもらった。
「本当に王道!『観てよかった』と満足できる作品」(野水)
西川「まずはじめに、皆さんご覧になっていかがでしたか?」
清水「『なんてシンプルでストレートなんだろう!』と思いました。僕は観たあとで知ったのですが、キングの原作は(英語の原文で)7、8ページくらい。それを2時間の映画にまで広げているのですが、肉付けはしつつも余計な要素を加えていない。ここまで直球なものは最近なかったし、すごいと感じました」
野水「本当に王道ですね。『観てよかった』と満足できる作品でした」
ナマニク「『めちゃくちゃ悔しい!』が僕の感想です」
清水「作り手である僕が悔しがるなら分かるけれど、なんでナマニクさんがそんなに悔しがるの(笑)」
ナマニク「僕のようなホラー好きって、新作が出てくると斜に構えて観るじゃないですか(笑)。なのに、最初から最後まで怖がらせられたことに悔しさを感じました」