ホラーマニアも震撼した『ブギーマン』…スティーヴン・キングが描いた、底知れぬ恐怖
“ホラーの帝王”スティーヴン・キングの短編小説をベースに、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のプロデューサー陣が製作を務めたサスペンス・ホラー『ブギーマン』(公開中)。一足早く公開された北米で批評家からも好評を得てスマッシュヒットとなった本作は、まさに“王道”と言える直球勝負のホラー映画だ。
母親の突然の死から立ち直れずいる女子高生の姉セイディ(ソフィー・サッチャー)と9歳の妹ソーヤー(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)。セラピストの父親ウィル(クリス・メッシーナ)もまた、妻を失った喪失感から心に深い傷を抱え、娘たちと向き合えずにいた。ある日、ウィルのもとにレスター(デヴィッド・ダストマルチャン)と名乗る男が訪ねてくる。彼はウィルに恐ろしくも奇妙な体験を語り始めるが、その直後、レスターはウィルの家で驚きの行動に出る。以来、ハーパー家には得体の知れない“なにか”が暗闇に潜み、家族の命を狙い始めるのだった。
本作の公開を記念して、MOVIE WALKER PRESSでは各界のホラーマニアが集う座談会を実施。集まってくれたのは、いずれ劣らぬ業界屈指の4人のマニアたちだ。「呪怨」シリーズや「恐怖の村」シリーズなどヒット作を多数生みだし、最新作『ミンナのウタ』が現在公開中の清水崇監督。ホラー好きが高じて、本業の傍らコラム執筆やイベント出演などでホラー愛を叫び続けている声優の野水伊織。国内外のホラー映画に精通し、独自の視点でコアなホラーファンから支持を集める映画評論家の氏家譲寿(ナマニク)。そして、ホラー映画に特に熱い情熱を注ぐ、映画雑誌「DVD&動画配信でーた」編集長の西川亮が進行を兼ねて参加し、物語やキャラクターの魅力から好きなキング作品について、ホラー好きの面々が“怖い”と思うことについて語り合ってもらった。
「行動に正解、不正解はないけれど、応援したくなりました」(野水)
西川「本作は王道ホラーでありつつも、姉妹愛や親子の断絶などを描く、人間ドラマ的な側面もあるという印象を受けましたが、特に印象に残ったキャラクターはいますか?」
ナマニク「僕はお姉ちゃん(セイディ)の“ぼっち”っぷりがたまらなく好きで。お母さんを亡くして辛いのは分かるけれど、気遣ってくれる友達をも拒絶してしまう不器用さが印象的でした」
野水「私の高校時代はまさにお姉ちゃんのような感じだったので『あー、分かる』と思って観ていました。行動に正解、不正解はないけれど、応援したくなりました」
西川「共感まではいかないけれど、お父さん(ウィル)の気持ちはすごく分かると思いました。妻が死んで、ふさぎ込んでいる子どもたちにどう振舞っていいのか分からない。まごまごしている間に、どんどん関係が悪化していく…みたいなことって、日常でもありますよね。すごくリアルだと思いました」
ナマニク「お父さんもお姉ちゃんも、自分でどうにかしようと一生懸命やりすぎているんですよね」
清水「僕は圧倒的に妹(ソーヤー)です。演技がすごく上手かったですね」
西川「姉セイディ役のソフィー・サッチャーは『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』で改造ギャングドラッシュを演じ、妹ソーヤー役のヴィヴィアン・ライラ・ブレアは『オビ=ワン・ケノービ』で幼少期のレイア姫を演じている、いわば『スター・ウォーズ』姉妹です。演じた2人は本当に上手でしたね」