吉永小百合主演『こんにちは、母さん』山田洋次監督が明かすオファー理由と撮影秘話
山田洋次監督最新作『こんにちは、母さん』が9月1日(金)より公開される。本作より、山田監督が明かした吉永小百合のオファー理由と撮影秘話が到着した。
山田監督にとって90本目となる記念すべき本作の主演に迎えたのは、共に映画界を牽引し続けてきた吉永。共演には、数々の映画、ドラマに出演し、NHK大河ドラマでの好演が記憶に新しい大泉洋のほか、永野芽郁、寺尾聰、宮藤官九郎、田中泯、YOU、枝元萌ら豪華俳優陣が集結。『母べえ』(08)、『母と暮せば』(15)に続く「母」3部作として、日本を代表する名女優、吉永の集大成ともいえる作品が誕生した。
本作は、監督が20年もの間構成を温め続け、脚本作りにも約1年半の歳月を費やすほど、並々ならぬ想いで挑んだ渾身作。描かれるのは、東京の下町でいまこの令和を生きる、“等身大の家族”の姿。大企業の人事部長として神経をすり減らす毎日を送る神崎昭夫(大泉洋)。職場でのトラブルに加え家庭での問題にも頭を悩ませるなか、久しぶりに母、福江(吉永)が暮らす東京下町の実家を訪ねると、そこには艶やかなファッションに身を包み、イキイキと暮らす母の姿が。おまけに母の恋愛事情まで耳にし、久々の実家にも居場所がなく戸惑う昭夫だったが、お節介が過ぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う“母”と新たに出会い、次第に見失っていたことに気づかされていく。
そんな“恋する母”である福江役を担うのが、今回が123本目の映画出演となる吉永。本作では『母べえ』、『母と暮せば』などの過去に山田監督作品で演じてきた母親像とは一味違う役どころに挑戦しており、監督も「今作は“恋をするお母さん”という役どころですから、これまで小百合さんに僕の映画で演じてもらったお母さんとは違うと思います」と証言している。
映画化が検討されていた当時、舞台で福江役を演じた加藤治子を主演に迎える話もあがっていたというが、スケジュールの問題もあり叶わず、そこで白羽の矢が立ったのが吉永だったという。自身の世代にとって“ミューズ”のような存在の吉永に、当初はおばあちゃん役を頼んでもいいものか迷いがあったと明かす監督。次第に「小百合さんは美人だし、可愛らしい方ですが、そういうおばあちゃんがいてもちっともおかしくないなと。美人で可愛いおばあちゃんが恋に悩む。そんなところも小百合さんにピッタリな役」と感じ、決め手となったそう。しかし今までそのような役を吉永が演じていたことがなかったため、オファーを受けてくれるか不安もあったというが、吉永は監督からのラブコールに快く承諾し、本作への出演をはたした。
監督の期待に応えるように、劇中では悩みが尽きない昭夫や将来への不安を抱く孫娘、舞(永野)を時には力強く、時には優しく温かく見守る一方、息子が知らない“恋する母”の一面を吉永は巧みに演じ分けている。そんな吉永へ監督は、撮影中「女性の多くは“自分を若く見せたい”という気持ちがあると思いますが、小百合さんはそういう努力をしなくても十分お綺麗なので、“若く見せたい”という部分は外して考えましょうと言いました」と伝えたと明かす。
さらにもう一つお願いしたというのが、仕草や動作の芝居だったという。監督は「小百合さんは日頃から体を鍛えられていることもあり、つい動きが速くなってしまうことがありました。例えば立ち上がる場面でも“机に手をついて上がってみましょう”と。細かい動作を取り入れることで女性の年齢が表現できる。小百合さんの場合は、年を取っているように見せるのが大変でした」と貴重な撮影秘話を明かしている。
これまでの作品では見せてこなかった、吉永小百合の新たな表情や魅力も凝縮された本作。そんな貴重な姿を、ぜひスクリーンで見届けてほしい!
文/サンクレイオ翼