『尾かしら付き。』小西詠斗&大平采佳&木村昴が告白「コンプレックスは武器になる」
「自分のことを認めてくれる人に出会えたことに幸せを感じればいい」(木村)
――人と違うことに戸惑い、傷つきながらも、自分を受け入れてくれる那智との出会いを通して、快成は前に進んでいきます。お三方にとって、コンプレックスを受け入れられた瞬間があったら、教えてください。
小西「僕は身長が低いんですが、学生のころはもっと小さくて、そのことでバカにされてしまうこともありました。でも役者のお仕事を始めて、舞台や映像などいろいろな作品に関わらせていただくと、背が小さいことでハマり役となるようなキャラクターと出会うこともできました。いまでは逆に『これは武器になるな』と思うことも増えたので、本当によかったなと思っています。快成と那智がコンプレックスを二人で宝物にできたように、僕もコンプレックスを宝物にできるように、これからも頑張っていきたいなと思っています。また劇中、『みんなに認めてもらおうなんて、贅沢なことは言わない』というセリフがあったんですが、その言葉にはものすごくハッとさせられました。すべてのことに言い換えることができるように感じていますし、これからも思い出したい言葉だなと思っています」
大平「私は深く考え込んでしまったり、ちょっとしたことを気にしてしまったりすることがあります。身近な人からは『それって、相手の気持ちをじっくりと考えられるということじゃない?』と言ってもらえたりすることもあるし、『私は思っていることをすぐに口に出してしまうのがコンプレックスだ』という人もいて。例えばSNSなどを見ていても、自分のコンプレックスについて書き込んでいる方もいますよね。それに対して『私も同じコンプレックスがあります』という人もいれば、『すごくうらやましい』と返している人もいたりと。それぞれの感じ方や見方によっても、コンプレックスってまったく違ってくるものなんだなと感じています。いろいろな悩みを持った人と関わって、『同じ悩みがあるね』『こういう考え方もあるよね』と話すことで、勇気をもらえることもたくさんあるんじゃないかなと思っています」
木村「僕は子役時代、大河ドラマのオーディションを受けたりもしていましたが、時代劇に合わない顔立ちなのか、まったく役に恵まれなくて。ハーフだと大河ドラマには縁がないのかなと思うこともありましたが、続けていくうちにハーフであることも武器だと思える場面が増えてきて。自分のなかには2つの国のルーツがありますので、語学に関する番組をやらせていただいたり、海外の方が挑戦者として出場する番組で、通訳を兼ねてお話をさせていただいたりすることもあります。なんといまでは大河ドラマにも出演させていただける機会に恵まれて、自分の道を信じて、諦めずに続けてきてよかったなとうれしく思っています。自分がコンプレックスに感じていることって、時代やタイミング、考え方によっても変わっていくもの。『これは欠点なんだ』と諦めずに、自分を磨いたり、どうしたら輝けるのかと向き合っていったりすることも大事なポイントなのかなと感じています」
――快成と那智のやり取りに、勇気や元気をもらえる人も多いと思います。
木村「本当にそうですよね。先ほど小西くんも言っていましたが、『みんなに認めてもらおうなんて、贅沢なことは言わない』というセリフも印象的です。僕は完璧主義者なところがあって、SNSなどでネガティブな意見を見かけたりすると落ち込んでしまうこともあって。『このやり方はダメなのかな』『あそこでこうやって話したのはよくなかったかな』と悩んだりしてしまうんです。すると知人が、『カレーやハンバーグでも苦手な人がいる。全員に好かれようとなんてするもんじゃない』と言ってくれたことがあって。『そうか、全員に好かれようとするからキツいんだな』と思うことができました。快成にとっての那智のように、たった一人でも、自分のことを認めてくれる人に出会えたことに幸せを感じればいい。本作を観て、改めてそう感じました」
小西「僕もお仕事に向き合ううえでも、考えさせられる部分が多かったです。たった一人でも『よかった』と言ってくれる人がいる限り、やり続けたいなと思っています」
大平「私は今回が映画デビューで、すべてが初めての経験でした。新しい発見もたくさんありましたし、映画を作るということに対しても、たくさんのことを学ぶことができました。『尾かしら付き。』での貴重な経験が今後の仕事へつながっていけるように、これからも演技をしていきたいなと思っています」
取材・文/成田おり枝