クローネンバーグ監督作品に華を添えるレア・セドゥ&クリステン・スチュワート。2人が明かした鬼才のたゆまぬ創造性

インタビュー

クローネンバーグ監督作品に華を添えるレア・セドゥ&クリステン・スチュワート。2人が明かした鬼才のたゆまぬ創造性

裸のランチ』(91)や『クラッシュ』(96)、『危険なメソッド』(11)など、作品を発表するたびに世界中を騒然とさせてきたカナダ出身の鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の9年ぶりの長編にして、“人類の進化についての黙想”をテーマに掲げた最新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(公開中)。本作で初めてクローネンバーグ監督とタッグを組んだのが、これまで世界の名だたる監督たちと組んできた2人の女優、レア・セドゥクリステン・スチュワートだ。

物語の舞台は、人類が人工的な環境に適応するよう進化を続け、痛みが消えるなど生物学的構造の変容を遂げた近未来。“加速進化症候群”のアーティスト、ソール(ヴィゴ・モーテンセン)が体内に生みだした新たな臓器に、パートナーのカプリース(セドゥ)がタトゥーを施し摘出するというショーが人気を博すなか、政府は人類の誤った進化と暴走を監視するために「臓器登録所」を設立する。そのころ、政府から強い関心を向けられたソールのもとには、生前にプラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。

「本当に楽しくてギアが一気に上がるような感覚がありました」(スチュワート)

ソールのパートナー、カプリース役を演じたレア・セドゥ
ソールのパートナー、カプリース役を演じたレア・セドゥ[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)などクローネンバーグ監督作品の常連でもあるヴィゴ・モーテンセンが演じるソールと組み、アートパフォーマンスを披露するカプリース役を演じたセドゥ。「物語が進むほどカプリースの強い意志が見受けられるようになります。そしてある瞬間から、彼女自身もアーティストとなる。自身の力で存在感を示そうとする姿はとても魅力的だと思いました」と、自身の演じた役柄について説明。

一方でスチュワートが演じたのは、政府側の立場にあるティムリン役。「アングラなアート界とその過激化、制御できない進化とそれを支持する人々に政府は大きな脅威を感じ、あらゆる面で支配されたくないと感じています。そんななかで彼女はその呪縛にとらわれ、常にいい子で仕事を全うし正しいことをしたいと考えています」と語る。

ソールと出会い、その才能に魅せられていくティムリンを演じるクリステン・スチュワート
ソールと出会い、その才能に魅せられていくティムリンを演じるクリステン・スチュワート[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

そんなティムリンは劇中、ソールのショーを観ることがきっかけとなりその考え方に変化が生じていく。「それは一瞬のシーンですが、抑圧されていた彼女はある日突然刺激的な人と出会い、まるで覚醒したかのように偉大で美しくセクシーで創造的な存在に近付きたいと願うようになります。ですが彼女にはそのどれもが欠けている。もしソールのそばにいたら自分も彼のようになれるかもと思う彼女を演じることは、本当に楽しくてギアが一気に上がるような感覚がありました」と、役柄にのめり込みながら撮影に臨んでいたことを明かした。

近年活躍著しいクリステン・スチュワート。クローネンバーグ監督のこだわりの強さに感銘を受ける
近年活躍著しいクリステン・スチュワート。クローネンバーグ監督のこだわりの強さに感銘を受ける[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

本作の撮影は、世界を代表する古代都市のひとつであるギリシャのアテネで行われた。長い年月をかけて何百万人もの人々が生きてきた歴史を感じられる古い大都市を探していたというクローネンバーグ監督。作品世界により説得力を与え、かつ自身の思い描く芸術を具現化するのに最も適したロケーションを求めるクローネンバーグ監督の姿勢に、スチュワートは強く感銘を受けたという。


ヴィゴ・モーテンセンとクローネンバーグ監督はこれが4度目のタッグ
ヴィゴ・モーテンセンとクローネンバーグ監督はこれが4度目のタッグ[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

「ギリシャでの撮影はとてもタフなものでした。汗は止まらず、まるで空調機が壊れた20年前みたいな世界でしたが、そこで足掻いているかのような人間らしさが感じられて楽しい環境でした。なによりも、こんなに壮大で多様なアイデアを軸に古代都市のなかで未来的な映画を撮っていると、自分はどこから来たのだろうかと考えてしまいます。未来が舞台の映画は、その世界の時間軸に取り残されてしまいがちです。ですが本作では映画を冷静に捉えられ、現実との繋がりを感じることができました」。


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