3DCG版「クレヨンしんちゃん」はどのように作られた?完成まで7年の道のりを大公開
1992年にテレビアニメの放送がスタートし、昨年30周年を迎えた国民的アニメ「クレヨンしんちゃん」。その劇場版最新作にして、シリーズ初の3DCGアニメーション作品となる『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~』(公開中)はどのようにして作られたのだろうか。2005年以来、長年にわたってシリーズに携わってきたシンエイ動画の吉田有希プロデューサーと、本作のアニメーション制作を務めた「白組」の畑中亮ラインプロデューサーの証言、そして貴重なデザインや資料をもとに紐解いていこう。
「漫画アクション」で1990年に連載がスタートした臼井儀人の同名マンガを原作にしたテレビアニメ「クレヨンしんちゃん」。1993年からは劇場版シリーズもスタートし、コロナ禍前の2019年までは毎年ゴールデンウィーク興行を代表する作品として上映され、これまで30本の映画作品が公開。世代を超えて人気を獲得してきた。
今回、3DCGアニメーションという新たな挑戦をするにあたり監督、脚本を務めたのは『モテキ』(11)や『バクマン。』(15)などのヒット作を生みだしてきた大根仁監督。吉田プロデューサーは「直感的に大根監督は『しんちゃんに合う』と思っていました。せっかく3DCGという、いままでとは違う表現方法にチャレンジするので、ふだんご一緒できない方にお願いしたいと思い、欲張りました」と起用した理由を明かしている。
完成まで7年!プロジェクトのカギは“しんちゃんらしさ”に
シンエイ動画と白組は、「クレヨンしんちゃん」と同じく国民的アニメとして長年親しまれている「ドラえもん」を3DCG化し、興行収入83.8億円の大ヒットを記録するなど社会現象を巻き起こした『STAND BY ME ドラえもん』(14)でもタッグを組んだ。
「その頃から『クレヨンしんちゃん』も3DCGで観たいという声をたくさんいただくようになりました。そこで白組さんと培った信頼関係もあったので、また一緒に挑戦してみましょうかという話になりました」と、吉田は本作のプロジェクトの始まるきっかけを振り返る。
そうしてスタートした「クレヨンしんちゃん」の3DCG化プロジェクト。完成に至るまでに費やされた時間は、構想段階から含めると実に7年。シンエイ動画と白組は緊密なタッグを組み、独特のほっぺやフォルム、さらに動きといった「これぞ、しんちゃん!」と思えるアニメーションを作りだすため、様々な要素を模索し、原作漫画の描写も手掛かりにするなど試行錯誤を重ねていったという。
「まずはキャラクターがちゃんと“しんちゃん”として、皆さんに受け入れていただくことが一番大切にしていた点です」と、畑中は語る。やはりこのプロジェクトの成功のカギを握るのは、しんのすけやみさえといったおなじみのキャラクターたち。「造形はもちろんのこと、動いていてもちゃんと“しんちゃん”らしいというところまでできて、はじめてキャラクターになるということを意識しながら進めていきました」。
その段階としては、まず思い切っていわゆる“3DCGらしさ”全開で描かれた初期モデルを制作。そこから検討や調整を重ねていきながら、原作に寄せた白黒のペンタッチの中期モデルを通してさらなるトライ&エラーを重ねる。そして「クレヨンしんちゃん」らしい大胆な動きを与えながらデザインを固めていく。
「時間をかけてやっていただき、2Dでも3Dでもない、自分たちでも“2.85D”と呼んでいましたが、落とし所を見つけるまでがとても大変でした」と、吉田もその苦労を振り返る。