映画『SAND LAND』の躍動感あふれるアニメーションに注目!「ポプテピピック」『ニンジャバットマン』を手掛けてきた神風動画のこれまで
『ニンジャバットマン』「スター・ウォーズ:ビジョンズ」など斬新なアニメーション作品を発表!
映画『SAND LAND』以前にも神風動画は劇場アニメを手掛けており、その一つが『ニンジャバットマン』(18)だ。DCコミックのヒーロー、バットマンが戦国時代にタイムスリップする奇想天外な設定ながら、スピーディなバトル展開や縦横無尽なカメラワークで観る者を圧倒し、最上級の没入感を与えてくれた。
さらに、「スター・ウォーズ」の世界観をベースに、日本を代表する7つのアニメーションスタジオが短編ストーリーを制作した、ディズニープラスで配信のアンソロジーシリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ」にも参加。神風動画は全9話からなるシリーズのうち、シスの剣士率いる野党集団に襲われる村を浪人の剣豪が救うストーリーを描いた、エピソード1「The Duel」を担当。水墨画のようなモノクロ映像のなかでブラスターの光が飛び交い、ライトセーバーによる剣戟も繰り広げられるなど、『七人の侍』(54)や『用心棒』(61)といったジョージ・ルーカスも敬愛する黒澤明作品へのオマージュを感じさせた。
映画『SAND LAND』に見られる高揚感あふれるアニメーション!
このように斬新な映像表現で観る者を魅了してきた神風動画。今回の映画『SAND LAND』もまた、高揚感あふれる音楽と共にキャラクターが躍動する戦闘シーンが見どころとなっている。劇伴を担当する菅野祐悟は、「ストーンオーシャン」後期オープニングテーマ「Heaven’s falling down」の楽曲提供をはじめ、歴代「ジョジョ」シリーズのサントラを手掛けていることからも神風動画との相性は抜群。また、神風動画は鳥山とも縁があり、「ドラゴンクエスト 少年ヤンガスと不思議のダンジョン」や「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」といった鳥山がキャラクターデザインを手掛けたゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズでOP映像やPVを手掛けており、この点でも鳥山作品への心得があった。
映画『SAND LAND』は、「スター・ウォーズ」シリーズに登場する砂漠の星タトゥイーンを彷彿とさせる世界が舞台で、絵のタッチは「バットマン」など海外コミックのようなポップさが感じられ、ちょっとお下劣なギャグやウィットに富んだ会話も挿入されてくる。クール、ギャグ、コミック、SFなどこれらの要素は、振り返れば神風動画がこれまでに携わってきた作品とも共通する部分が多い。設立以来約25年にわたって培われてきたテクニックとセンスを、十二分に発揮できる場が本作だったと言えるだろう。
“妥協は死”が社訓の神風動画。その異端のセンスを王道に全振りした結果、圧倒的エンタテインメント作品が誕生した。
文/榑林史章