濱口竜介監督、ヴェネチア国際映画祭での銀獅子賞は「思ってもみなかった」 “3大映画祭”制覇の快挙は黒澤明以来
濱口監督と大美賀均の受賞コメント
――受賞の一言をお願いします。
濱口監督「本当にすばらしい賞をいただいて信じられない気持ちです。企画を始めた当初は、海のものとも山のものともつかないような企画ではあったので、ここまでたどり着けたことも素敵だと思いますし、それは本当に関わってくださった皆さん、特に発案者でもある石橋英子さんの力はとても大きいと思います。そして、キャストスタッフの皆さんの力があったおかげで、ようやくこういう結果に結実するようなそういう映画ができました」
大美賀「先ほど濱口監督がお話されていますが、すごく小さなチームから始まりました。濱口監督、撮影の北川喜雄さんと自分と3人でシナハン(=ロケハンの前の脚本を書くために現地を回ること)に回っていたんですが、そこからスタッフが徐々に増えていき、撮り終わったころには、本当にこんなにちゃんと撮るなんて思ってもみなかったです。そのころの想像よりはるかにすごいところまで連れてきていただいてありがとうございます。またスタッフさんはじめ、キャストの皆さん、現地で協力してくれた方々に本当に感謝しています」
――授賞式の壇上のスピーチでおっしゃっていましたが、受賞の時の「景色」というのはどういったものだったのでしょう?
濱口監督「隣に大美賀さんがいて、目の前に撮影の北川さんがいて、あとほかにもチームのメンバーがいてくれて、光って見えるというか、このチームでやってこれたことを本当に良かったなということを思い、胸がいっぱいになった感じがしました」
――今回のコンペティションの中でアジアの作品として唯一だったと思うのですが、それについては?
濱口監督「それは選考する側の問題なので、ちょっとわからないです。コンペでほかの作品も観たかったですが観られなかったですし、全体的にどういうふうに自分たちの作品が位置付けられているかわかりませんけれども、きっとほかにもいいアジア映画があったと思います。たった1本であったというバランスについて、選んでいただいたこと自体はとてもありがたいことですけれども、そのバランスは本当なのかっていうことは多少思うところではあります」
――ベルリン国際映画祭での『偶然と想像』に続いて2回目の準優勝のような感じですが、ちょっと金(最高賞)、とりたかったなというのはありますか。
濱口監督「そういう思いは、本当に少しもないです(笑)。そもそもはこうやってコンペに選ばれるとも思ってなかったですし、こうやって賞をいただくことも思ってもみなかったので。そういう気持ちもそもそもないですね。それが正直なところです。自分達にとっては一番いいものをいただいたという感じです」
文/編集部