『BAD LANDS バッド・ランズ』メイキング写真を入手!原作者・黒川博行の出演シーンは?
第151回直木賞受賞作「破門」や、「後妻業」などで人間を突き動かす欲望を描いてきた作家、黒川博行による重厚な傑作小説「勁草」(けいそう)を、『検察側の罪人』(18)や『関ヶ原』(17)などの原田眞人監督が、安藤サクラや山田涼介(Hey! Say! JUMP)を迎えて映画化した『BAD LANDS バッド・ランズ』(9月29日公開)。本作では、原作者の黒川氏がカメオ出演しているが、このたび本作のメイキング写真2点をMOVIE WALKER PRESSが入手。「辛抱強く待った」という原田監督の映画化への熱い想いも明かされた。
『百円の恋』(14)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞ほか数々の賞を受賞し、『万引き家族』(18)で自身2度目となる日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した安藤は、本作で特殊詐欺を生業とする主人公、橋岡煉梨(ネリ)役を怪演。安藤は原田組に初参加となった。そしてネリの弟、矢代穣(ジョー)役には、『燃えよ剣』(20)以来、2度目の原田組参加となった山田。さらに、宇崎竜童、生瀬勝久、吉原光夫、江口のりこ、天童よしみ、大場泰正、淵上泰史、サリngROCKら一癖も二癖もあるキャスト陣の怪演ぶりも、安藤と山田の姉弟役が魅せる化学反応をより強烈なものとする。
入手したのは、原作者である黒川が出演するメイキング写真だ。自身の作品が映像化される際にはカメオ出演をすることが定番となっている黒川だが、本作でもとあるシーンに登場する。薄暗い部屋のなか、卓を囲って賭博をする一同のなかに、黒川の姿が。あぐらを組んで、真剣な表情で手元を見つめるその姿は、緊張感のあるシーンに見事に溶け込んでいる。「(原田監督が)どんな風に映像化してくれるのか、楽しみでしかたなかった」と語っていた黒川だが、原田監督が描きたかった世界観を、自身の手でも形にした。
始まりは、「勁草」が刊行された2015年。直木賞作家が、驚愕の犯罪手口と悪辣な実態を描くクライムサスペンス問題作として話題となり、単行本、文庫本、電子書籍をあわせた現在までの総販売部数は11万部を突破している。発売直後、特殊詐欺グループの内実がリアルに描かれた世界観に惹き込まれた原田が、映画『金融腐蝕列島 呪縛』(99)、『RETURN』(13)などで当時タッグを組んでいた鍋島壽夫プロデューサーに、映画化の話を持ち掛けた。犯罪は社会を映す鏡だが、なぜ日本ではこんなにも特殊詐欺の被害が横行しているのかと、フィルム・ノワール的な要素も含めて作品に興味を抱いたのだという。しかし原田監督の想いに反して、すぐに実現に至ることはなかった。
それから数年間、「勁草」実写化の構想を練りながら、原田監督は『関ヶ原』、『検察側の罪人』、『燃えよ剣』など数多くの作品を世に送りだし続けた。そして、2021年、『ヘルドッグス』(22)製作チームの手助けもあり、遂に自身の手で映画化できる運びとなったのだ。「辛抱強く6年待った」と語る原田監督に対し、黒川は「監督の名前を聞いて、一も二もなく映画化に同意した」と、のちに相思相愛だったことも判明。本作は、黒川にとっても原田監督との待望の初タッグ作品となった。
監督の熱意が周囲に伝わり、映画化が実現した本作。原作出版から8年という歳月を経て、ようやく劇場公開される“関西弁フィルム・ノワール” 『BAD LANDS バッド・ランズ』をぜひその目に焼き付けてほしい。
文/山崎伸子