ルッキズム、性的搾取の風刺に留まらない韓国ドラマ「マスクガール」、俳優陣の怪演も光る!
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」に始まって、今夏は王道ラブコメの「キング・ザ・ランド」が世界的なヒットを記録するなど、2023年も話題作に事欠かないNetflix配信の韓国ドラマ。そして、新たに盛り上がりを見せているのが「マスクガール」だ。8月18日から配信が始まった同作は、配信2週目(8月21日~27日)にしてNetflixのグローバルトップ10のテレビ(非英語)部門で1位を獲得。韓国、日本などアジア圏だけでなく、世界中で人気を集めている。
※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
ジェットコースターのようなスピードで主人公モミの人生が突き進む!
主人公のキム・モミは子供の頃から人前で踊り、拍手喝采を浴びるのが大好きでアイドルを夢見ていた。だが、容姿にコンプレックスのある彼女は平凡な会社員に。職場では女性蔑視をする男性社員たちに顔をいじられ、鬱屈した毎日を送っていたが、家に帰ると夜な夜なセクシーな衣装を身にまとい、顔を仮面で隠して、インターネットでライブ配信をする“マスクガール”に豹変。そして、熱狂的なファンもいるほどの人気配信者だった。そんなある夜、予期せぬ事件が起きたことから物語は動き始める…。
原作は近年の韓国ドラマの多くがそうであるように、同名のウェブトゥーン(ウェブ漫画)。外見至上主義に対する風刺を効かせた毒っ気の強いブラックコメディとサスペンスフルな内容で破格の人気を得た。それを、日本の小説を原作にした映画『藁にもすがる獣たち』(20)で知られるキム・ヨンフン監督が実写ドラマ化。原作をほぼ踏襲しつつ、ルッキズムのほかにも女性蔑視や性的搾取、イジメや貧困、カルト集団など様々な社会問題を盛り込んで一人の女性の壮絶な生涯を描いたエンタテインメント作だ。
全7話というコンパクトな尺だが、ブラックコメディっぽいノリで始まったと思いきや、グロテスクな描写の連続でサスペンスに転じ、ホラー、そしてすさまじい復讐劇に突入する。まさにジェットコースターのようなスピードでモミの人生が突き進んでいくだけに、怖いもの見たさでついつい目が離せなくなる。しかも、1話が「キム・モミ」、2話が「チュ・オナム」、3話が「キム・キョンジャ」…と、毎話、物語の軸になる人物が変わり、その人物の視点で物語が描かれる。テンポよく進んでいくうえに、幾重にもちりばめられた伏線が怒涛の展開を見せながら最終話までにしっかりと回収。ヨンフン監督は『藁にも~』でも予測不能な展開で韓国ノワールを描いたが、本作でも見事にその手腕を発揮。最後まで見て、まさか入口と出口がここまで違うドラマだったとは!? という気持ちになること必至だ。