『ミステリと言う勿れ』の“聖地”はここだ!広島の名所から「犬神家の一族」の撮影に使われた屋敷まで
菅田将暉が天然パーマがトレードマークの大学生の久能整を演じ、2022年に好評を博したテレビドラマの劇場版『ミステリと言う勿れ』(公開中)。9月15日に公開を迎え、初日から10日間で観客動員149万人、興行収入20億円を突破する大ヒットを記録している本作を、ロケ地にフォーカスしながら深掘りしていこう。
“広島編”に広島ロケは欠かせない!
本作で描かれるのは、田村由美の手掛けた原作コミックの第2巻から第4巻にかけて収録されている“広島編”。原作の流れでは、テレビドラマ版の第2話と第3話で映像化されたバスジャック事件の後のエピソードとして描かれているのだが、ロケや尺などの都合もありテレビドラマ版での映像化は実現できず。本作でようやく映像化されるにあたり、正月から春までの間に起きた出来事として時系列が変更された。
そんな“広島編”の撮影は、もちろん広島でのロケを敢行。劇中では広島県立美術館や広島電鉄、平和記念公園、東広島駅、そして宮島などが確認できる。特に広島電鉄のシーンは、路面電車を貸し切り実際に走らせてもらいながら実施され、しかも現役最古の1942年製の車輌が使用されたとか。
また美術館のシーンは実際に雪が降るなかで撮影が行われ、「追加撮影もしましたが、その日もまた雪になってしまって。うまく繋げられたという意味ではラッキーでした(笑)」と、メガホンをとった松山博昭監督は振り返る。さらに宮島でのシーンでは、大鳥居の修繕工事が撮影に入る直前に完了し、最も美しい赤色の状態の大鳥居を撮影することができたという。まさに広島の神様が味方してくれたロケ撮影だったようだ。
豪華キャストが一堂に会す!日本各地でも撮影が敢行
物語の主要な舞台となる狩集家の屋敷のシーンは、様々な場所でのロケとセット撮影を組み合わせて作られていった。広間や玄関、廊下、整が泊まる部屋は、岡山県倉敷市にある国指定重要文化財の「旧野崎邸」が使用されている。
劇中で整は、過去にこの場所で殺し合いがあったことを聞かされて思わず「『犬神家の一族』…」と口にするのだが、奇しくも「旧野崎邸」は2004年のフジテレビ版や2023年のNHK・BSプレミアム版の「犬神家の一族」の撮影に使用された場所。それを知ったうえで本作を観ると、より一層“犬神家感"が強まって見えることだろう。
ほかにも、群馬県甘楽郡の楽山園や横浜市中区の三溪園などの庭園や一角でも撮影が実施されている。印象的な4つの蔵の外観は、千葉県我孫子市にある歴史的建造物の旧井上家住宅を基にし、内部はスタジオセットが組まれている。階段と台所を見渡す居間もスタジオセットで撮影されたもので、整と狩集家の面々が話をするシーンは、都内の喫茶店で撮影。全国各地の様々な場所を組み合わせることで、この“広島編”の世界観が確立されていった。
「映画ではありましたが、あくまで『ミステリと言う勿れ』。基本的には整の言葉に影響を受ける人たちの物語にしたいと思っていたので、ドラマ版とは変えずに演出をしました」と振り返る松山監督。豪華なキャスト陣に対しては、「達者な役者さんばかりに集まっていただいたので、皆さんのお芝居を切り取るだけでも映画として成功するというのはありました」と、絶大な信頼を置いていたことを明かす。
菅田や伊藤沙莉、尾上松也、永山瑛太といったテレビドラマ版から続投するキャストに加え、原菜乃華や柴咲コウ、松下洸平、町田啓太、萩原利久、さらに鈴木保奈美に滝藤賢一、松坂慶子、角野卓造、段田安則といった実力派キャストが一堂に会した本作。細部までこだわり抜いて作りだされた原作の世界観と、登場人物たちの絶妙なアンサンブルをスクリーンでたっぷりと味わってみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬