濃密なノワール「最悪の悪」チ・チャンウク×ウィ・ハジュン×イム・セミが語る、エモーショナルなアクションとチームワーク
これぞ韓国ノワールの王道。そんなファンの喜びの声が聞こえてくるような濃密なドラマ「最悪の悪」が、ディズニープラスの「スター」で独占配信がスタートした。
舞台は1995年の韓国。田舎町の刑事ジュンモ(チ・チャンウク)は、妻で保安課のエース警官ウィジョン(イム・セミ)と違い、なかなか昇進できず憂鬱な日々を送っていた。そんな時、麻薬密売組織を解体するための合同捜査に引き入れられることになる。彼の任務は、ソウルを牛耳る犯罪組織・江南連合への潜入捜査。ボスのギチョル(ウィ・ハジュン)に取り入って仲間となったジュンモだったが、ギチョルとウィジョンの秘められた過去を知り、思いもよらない運命に巻き込まれていく。
今回、MOVIE WALKER PRESSでは「最悪の悪」を盛り立てた主要キャストのチ・チャンウク、ウィ・ハジュン、イム・セミにインタビューを敢行。来日した3人に作品の肝となるアクションシーンへのアプローチや、複雑なドラマをどう表現したかについて話を聞いた。
「潜入捜査官として整然としていたジュンモがだんだん崩れていく様子をドラマチックに見せたかった」(チ・チャンウク)
――アクションの演出を手掛けたクォン・ジフン武術監督が「ジュンモは前半は警察官らしい整然とした身のこなしで、後半部では本能的なアクションになっていく」と話していました。チ・チャンウクさんが自分の身体をどうアクションに使えばよいか分かっている俳優だったので、ジュンモの感情が上手く動きに乗り理想的なアクションになったそうですね。
チ・チャンウク「どう身体を使うのかというのは、役者にとっては非常に重要な部分だと思います。自分がどのように動いた時に、シーンにはどのように作用するのか、かなり敏感に考えるのですが、特にアクションシーンではより神経を使います。パク・ジュンモという人物が、作品の中でキャラクターが感情によってどのような選択をし、どう行動をするのかというのは脚本に書かれていたので、それをもとに、監督とキャラクターを肉付けしてリアルを追求する作業をしました。監督は、潜入捜査官として整然としていた彼の姿がだんだん崩れていく様子をドラマチックに見せたかったんです。後半に進むにつれ、ジュンモが自分自身の平静を保とうとしながらも疲弊していく姿がとてもおもしろいと思います」
――ウィ・ハジュンさん演じるギチョルも、序盤から緊張感のあるアクションを見せていますね。クォン・ジフン武術監督も、ウィ・ハジュンさんのスピード感あるアクションをかなり評価されていました。
ウィ・ハジュン「アクション監督からは嬉しい言葉をいただいたみたいですが、カメラが自分を追うのが思ったより速かったからで、私としてはスピーディに動けるタイプの俳優ではないと思っています。『最悪の悪』の撮影では動作にスピード感を出すよりも、感情や表情の部分にも気を配ったアクションを心がけることを学びましたね。チョン・ギチョルという人物像を作っていくには、とにかく過去の傷が深い人間であることと、前だけを見て江南連合のリーダーというポジションまで昇りつめた、誰よりも冷静で理性的でなければならない、そんな人物を表現するためにまなざしや表情をとにかく重視しました。ウィジョンに接する時、ジュンモに接する時、組織員の前でのボスとして接する時などで変化する態度や言葉遣いにも力を入れました」
――イム・セミさん演じるウィジョンは、初めてジュンモ、ギチョルと3人で出くわすシーンの表情が印象的でした。2人の男性の間で揺れ動く心情になりきるのはなかなか大変なのではないでしょうか。
イム・セミ「本当にかなり難しくて、ウィジョンの揺れる思いをどのくらい表現しなければならないかすごく悩み、監督ともたくさん話し合いをしました。あのシーンではウィジョンは一瞬息が止まったようになりますが、撮影現場でも実際に私たちも息が詰まりました。この揺れ動く気持ちをどうしたらいいのか?混乱の中にあるものをすべて見せる必要があるのか?そもそも見せられるのか――そんなふうに悩みました。ウィジョンは、ジュンモと一緒にいる時と、ギチョルと一緒にいる時とは態度が違いますし、それぞれに対し気にかける様子が違うので、オーバーな表情にならないように、撮影現場でたくさん悩みながら演技していました」
「初めてセットに入った瞬間から、役とシンクロできるような環境が整っていた」(ウィ・ハジュン)
――「最悪の悪」は、ノワールのムードを盛り上げるライティングや、1990年代当時を再現したプロダクションデザインも見事ですよね。
チ・チャンウク「どれだけすばらしい衣装を着て、どれだけすばらしい空間にいるかという、俳優が立つ舞台がどんな場所であるかということは、ある意味では俳優の演技力よりも重要だと思います。『最悪の悪』は、ムードが重要です。1990年代という時代を具現化する、キャラクターを生かす美術や小道具のディテール、衣装、俳優の感情をよく表現するメイクなどが私たちをよりよく見せてくれました。このドラマで、私は俳優ができる限界について非常に考えました。だからこそ、こうしてメンバーに助けてもらえるということがどれだけ幸せなことなのかということを改めて感じたんです。拍手喝采を送りたいような素晴らしいチームでした」
ウィ・ハジュン「ギチョルというキャラクターを捉えるのにだいぶ苦労しましたが、初めてセットに入った瞬間から、役とシンクロできるような環境が整っていて、演じるために良い影響をもらえました。シーンとしてもとてもよいものが撮れて、本当にすばらしかったです」
イム・セミ「お2人がおっしゃるように、最高のチームと共に仕事が出来たと思います。 ただ役者が1人いれば演技が出来るとか、作品が完成するなんて決して言えません。美術、撮影、照明、小道具、色彩、そしてストーリーがあってこそ、役者が演技をして、ストーリーに感動したり、理解したり、ついていくことができると思うんです。『最悪の悪』チームは本当に頼りになりました。ファイルの中の事件簿といった本当に細かい部分に至るまで慎重に選んでくれて、私たち俳優がより集中できるようにしてくれました。 彼らがいるからこそ私たちがいたと思います。この作品を一緒に作っていこう!というリズム感を得ることが出来ました」