神谷明&伊倉一恵が36年にわたる想いを語る!「いままでの『シティーハンター』とは全然違う作品」
1985年「週刊少年ジャンプ」にて連載が開始され、全世界で発行部数5000万部を記録した北条司の「シティーハンター」。その劇場版アニメ最新作『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が9月8日より公開され、既に50万人以上の観客を動員している。観客動員数100万人、興行収入15億円を超えるヒットを記録した『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』(19)の続編となる本作で描かれるのは、裏社会ナンバーワンの実力を持つ始末屋(スイーパー) “シティーハンター”冴羽リョウと、彼の育ての親である海原神の宿命の対決。劇場版最終章の幕開けを控えてファンの期待が高まっているなか、1987年に放送されたTVアニメ「シティーハンター」から36年にわたって冴羽リョウと槇村香の声を演じている神谷明と伊倉一恵を直撃し、本作への想いや見どころなどをたっぷり語ってもらった。
「新作制作の連絡をいただき、飛び上がるほど嬉しかったです」(神谷)
――前作『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』で久しぶりの新作が制作され、その大ヒットを受けて『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が作られたわけですが、さらなる新作の制作決定にはどのような感想を持たれましたか?
神谷「前作の手応えが良かったものですから、当初は『次もあるぞ』という気持ちでいたんです。でも、その後コロナ禍に入ってしまい、『次の新作は無理かな』という状況になってしまいました。そんな心配をしていた矢先に『新しいのをやります』とご連絡をいただいたので、『キタ、キタ、キタ!』って気持ちになりましたね。僕は本当に飛び上がるほど嬉しかったです。伊倉さんはどうだった?」
伊倉「私も同じですね。『またやれるんだな』って喜びました。前作で100tハンマーを振り回す香を20年以上ぶりに演じることができてものすごく嬉しかったんですが、その嬉しさのまま、今回も引き続き香を演じられるのはさらに嬉しいことでした」
――今作のアフレコを終えてみた印象はいかがでしたか?
神谷「今回は、リョウの過去に踏み込んでいく話なんですが、無理のない形で記憶が蘇っていくというふうに描かれているのが印象的でしたね。そして、その背後にはリョウの育ての親である海原神という男がいるんですが、そいつが美味しいところを持っていくんです。それが敵なのにカッコイイんですよ。声を堀内賢雄さんがやっているんですが、あんまりカッコイイから『この野郎!』って思いましたね(笑)。堀内さんが本当に上手いんですよ。海原という役の魅力を引き立たせているし、それがストーリーの中でも違う意味で生きてくるので、構成も上手くできているなと思いましたね」
伊倉「海原は本当に憎たらしいキャラクターでしたね(笑)。香と海原は接点がなかったのですが、今回初めて会うシーンがあるんです。リョウにとって香に会わせたくない人物なので、その時のリョウの動きは注目です」
神谷「今回のキャストに関しては、レギュラーメンバー以外の皆さん、関智一さん、木村昴さん、そして沢城みゆきさんもすばらしかった。皆いい味を出してくれたおかげで、いままでの『シティーハンター』にはなかったテイストが楽しめる作品になったかなって思いますね」
伊倉「もちろん、今回も『シティーハンター』にはもれなくエンディング曲の『Get Wild』がついてくるわけですが、今回はそれを聞いている時の気持ちがいままでとは全然違うんです。『こんな気持ちになって“Get Wild”を聞くことになるとは』と、私は新鮮な思いがありました」
――いままでだと、事件を解決して「やりきった」という気持ちでしたよね。
神谷「そうそう。ホッとしているところにあのイントロが入ってきて」
伊倉「いわゆる『いい仕事し終わった』のを感じる、ネットでも話題になった『Get Wild“退勤”』がいつもの感じですが、今回はそうじゃないんですよ。そこは印象的です」
いままでとは違う!「こんなドラマの先にこんな『Get Wild』があるのかという感じです」(伊倉)
――そういう意味では、いままでの「シティーハンター」とはひと味違うんですね。
神谷「今回はストーリーがしっかりと作られていて、これまでのシリーズとは違った感動がありました。さらに、映像と音楽もすばらしくて。この三拍子が揃っているなら、僕たちもそれに負けない演技をしなくちゃいけないと奮い立ったのを覚えています。だから与えられた範囲で、精一杯演技をさせていただきました」
――『シティーハンター』は、依頼人がJR新宿駅の伝言板に「XYZ」と書き込んで物語がスタートするルーティンから始まりますが、海原という大きな存在が関わってくるからこそ、その後の展開がいつもとは雰囲気が違いそうですね。
神谷「同じルーティンで始まりつつも、ドンドン違う方向に引きずり込まれていく感じ。テンポが良くて、映画はあっという間に終わってしまいます。でも、一度見ただけでは情報量が多すぎて、僕は3回は観ないと作品を味わい尽くせないと思いました」
伊倉「そうですね。私も見逃しちゃっているところがたくさんあると思いました」
神谷「ストーリーだって知っているはずなのに、完成した映像を観たら『凄い作品だな』って驚く。さっき、伊倉ちゃんが『いつもと“Get Wild”の印象が違う』って言っていたけど、本当にその通り。こんな味の『Get Wild』があるのかって思うので、そこはぜひ味わってほしいですね」
伊倉「こんなドラマの先にこんな『Get Wild』があるのかという感じで。本当に前半はいつもの調子で『シティーハンター』が始まるんですが、そこからどんどん展開が濃くなっていくという印象はあります。アンジー役の沢城みゆきちゃんの演技がすばらしくて。物語の流れに合わせて、お芝居が変わっていくキャラクターで、すごく難しそうだったから、『こんな大変な役は誰がやるんだろう?』って思っていたんですが」
神谷「『これ、できる人っているのかな?』って感じだったよね。ゲストで演じられそうな女優さんや声優さんがすぐに思いつかないくらい難しい。我々がそう思うくらいだから、役としてとてもハードルが高いわけだからね」
伊倉「全部の絵が入っていて、監督が細かく説明しながら収録するならばやれる人もいるかもしれないけど、実際にはそういかない。アニメのアフレコは、私たちがいろいろと想像を膨らませながら、声を入れていく仕事だから。そういう意味では、みゆきちゃんは音響監督に的確な質問をして、緻密に役を作り上げていて、『さすが沢城みゆきだ』って思いました。それくらい仕事ができる方だというのはもともと知っていたので、アンジー役が沢城みゆきちゃんに決まったと聞いた時は安心しました。特に私たちは依頼人の役である彼女と劇中で絡むことも多いので、みゆきちゃんにアンジー役をやってもらえるなら成功は間違いなしって思いました」