山崎貴監督が『ザ・クリエイター/創造者』に唸った!「ゴジラ」の“先輩”監督の手腕も称賛「ジェームズ・キャメロンに近いものを感じる」
「“ギャレゴジ”に見たかったことを結構やられてしまった」
本作は映画用に作られたオリジナル・ストーリー。脚本は『ローグ・ワン』のクリス・ワイツとギャレスが共同で執筆した。多くの監督作で脚本も手掛けてきた山崎監督は、オリジナル脚本の執筆を「荒野を歩く作業」と例える。「道標がないなかで書いていくのですごく大変です。原作があれば、迷った時には原作に戻ることができますが、オリジナルは常にこれでいいのだろうか?ってなる」と振り返る。
『ローグ・ワン』を観た時にその語り口に唸ったという山崎監督は、「ジェームズ・キャメロンに通じるものをギャレスに感じる」という。「キャメロンもVFX出身だけどストーリーテラーとしてすごく優秀ですから。どちらも話の転がし方がすごくうまいし、多芸な人だと思います」と言い、今作についてはちょうどよい規模感をねらったと感じたそう。「自主映画のような作品からキャリアを始めて、階段を上ることなくいきなり頂上(笑)。『ゴジラ』『スター・ウォーズ』と2本の超大作のあとなので、大きすぎず小さすぎないバランスを探したんでしょう。それでもVFXはILMだし造形はWETAワークショップと一流プロダクションが参加したので、ビジュアルは完全に超大作ですよ」。
ギャレスが怪獣王ゴジラに挑んだ『GODZILLA ゴジラ』は、日本を含め世界中の怪獣ファンから高い評価を獲得した。それから約10年経った今年、山崎監督の『ゴジラ-1.0』が公開を迎える。山崎監督が“ギャレゴジ”と呼ぶギャレスが生みだしたゴジラは、“山崎ゴジラ”に少なからず影響を与えたようだ。「(ギャレスが)CGというテクノロジーを使って、ゴジラらしいゴジラをハリウッドで作ったことはすごくショックでした。見たかったことを結構やられてしまった、という感じです」と当時を振り返り、そのことで『ゴジラ-1.0』では日本らしい独自性を出そうとより強く思ったという。つまり、ギャレゴジがなかったら、山崎ゴジラは少し違う形になったということだ。「ゴジラの動きひとつ取っても動物的で、感情も露わにしています。あそこまでは考えていませんでしたが、僕が目指していた方向性に近かったのでギャレスの存在は大きいですね」。
最後に『ザ・クリエイター/創造者』で最も印象に残ったことはなにかを聞くと、「新しい時代の家族の物語だということ」と山崎監督は即答した。「現代的な要素が複雑に絡み合いながら戦争の悲劇が描かれていますが、少し引いて考えると、ひたすら家族の物語だとわかります。さりげないセリフひとつひとつが伏線になっていて、回収されていくごとに効いてきてラストの感動につながっていく。すごく好きなタイプの映画です」。
取材・文/神武団四郎